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班決め

のんびり書いてます!

林間学校―――それは、学生のうちは避けては通れないイベント。学校や地域によっては呼び方も変わるだろう。野外活動、遠足、合宿などなど。


うちの学校では夏休みに突入する前に高校2年生だけが林間学校に赴く。夏休み前という事もあり、気分はもはや夏休み気分―――と言いたい所だが、そうはいかない。うちの学校の林間学校は1泊2日の登山付きなのだ。


毎年、死屍累々の2年生集団が林間学校後に戻ってくる様はまるでホラーだ。そんなわけで、班決めというものをしなくてはならない。普段だったら喜んで参加するものだが、今回は気分が乗らない。


「おい。どうするよ? 班決めるって事はバスも一緒だもんな。慎重に選らばねーと」


それもそのはず。雪矢が目をキラキラさせながら、班は誰と組むか聞いてくるのだ。こんなに少年のように瞳をキラキラさせた雪矢なんて小学校低学年以来だ。雪矢が純粋な時って結構短いんだな……と、失礼な事を考える。


それよりも、問題なのが―――。


「ねえ、三隅同じ班になろうよ? 飯盒炊飯で美味しいご飯作ってあげるから」


「そうだな! 二葉と二葉の仲良い奴らと俺と三隅とあと松田でいいんじゃね?」


「俺?」


急に白羽の矢がたったものだから、呆けた声を上げる松田。


「駄目か? もしかしてもう決めたりしてんのか?」


「そんな事ねーよ。いいよ、俺は。宜しくな、一条、三隅」


松田は1年の頃から同じクラスで爽やか野球少年だ。坊主頭がいかにも部活に青春を捧げてますっていう象徴となり、やけに眩しい。対してこちらは帰宅部だから、より後ろめたい。ごめんなさい、帰りにゲーセン寄って馬鹿みたいに騒いで。心の中で陳謝する。


「いや……俺は……」


どう断ろうか考えあぐねていると、裾を引っ張られる感覚に思わず、左を見る。そこには、二葉さんが眉をハの字にして俺の様子を探っている。あの日以来、まともに話が出来なくて、かれこれ3週間―――7月に突入し、林間学校の班決めをする季節になってしまった。今は自由時間で、この間に班とバスの座席順を決める事になっている。


思わず、目を逸らす。元からそうだったが、あれ以来まともに二葉さんの顔を見る事が出来なくなった。さっきのご飯云々も俺にアピールする事で雪矢へのポイント稼ぎに繋げるためだろう。そう疑ってしまう自分が嫌で―――結局、あまり話さないという結論に達した。


あれから一向に俺が喋らないから、交換したトークアプリを二葉さんはフル活用して俺に今日あった出来事などを送ってくるようになった。そんな時間があるなら、雪矢とトークしておけばいいのに―――。


嫌味な事しか考えられなくなって、反吐が出そうだ。問い詰める勇気もないからこうやって余計モヤモヤすることになったというのに。人のせいにしてしまう自分がちっぽけで惨めになる。


「―――三隅も同じ班になるよね? 他の所に行かないよね? 」


「俺は―――」


「何々? 晴香、三隅と仲良いの? どういう関係?」


俺の声は簡単に書き消された。絞り出すような声だったから耳に入りもしなかったかもしれない。二葉さんの友達の相沢さんが身を乗り出して、二葉さんに質問してきた。どういう関係も何も……あれ? どういう関係なんだろう。別れてはいない……と思う。ただ、気まずい関係になっている。俺の一方的な態度のせいで。そうなると、俺と二葉さんてどういう関係なんだろうか?


二葉さんもあたふたした様子で、手を振りながら懸命に言い訳する。


「どういう関係って……ほら、あれだよ。お友達? そう! お友達! 一条との繋がりで接点できて」


「あーなるほどー。なんだ、付き合ってんのかと思った。にしては、釣り合ってないなーって思ってさ。あ、ごめんね! 三隅!」


相沢さんの何気ない一言にズキッと胸が痛む。でも、これは当然なんだ。そう思われるのが本来合ってる。俺はモブだから雪矢みたいに二葉さんと釣り合いが持てない。何も間違ってない。それに、二葉さん自身否定したじゃないか。『友達』だって。


「ううん。大丈夫。俺と二葉さんが付き合うわけないから。釣り合ってないし、ただの友達だよ」


「あー、やっぱりそうなんだ。けど、ほんとごめんね! デリカシー欠けてたわ」


「大丈夫だよ」と答え、話を切り上げる。チラッと二葉さんに目線を送ると、何故か二葉さんが唇を固く噛んでいた。血が出るよ、と声をかけられたら良いのだろうけど、あまりに近いとまた在らぬ誤解を招く。大人しくしておこうと、「班決め、適当に宜しく」とだけ雪矢に伝え、自席に戻り、机に肩肘を付きながら窓から空を見る。7月に入っても止むことなく降り続ける雨は今日も校庭を濡らしていた。


結局、班は雪矢と二葉さんと一緒になり、何故かバスの座席も二葉さんと隣同士の二人座席になっていた。

不穏な空気が流れてますね。物語を考えて書いていますが、辛いですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このまま嫌な感じで新ヒロインとラブラブカップルになる展開も(((*≧艸≦)ププッ
[一言] 前回の「晴香の気持ち」を読んだ時は 前々回で素晴らしい秋人への負の感情移入ができた 直後での種明かしで 正直「早すぎるのでは?」と思ったもんですが こうして、ネチネチとすれ違い様を俯瞰できる…
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