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晴香の気持ち

シリアス回に突入。

私は小さい頃から欲しいと思ったものはなんでも手に入れてきた。洋服やオモチャも流行りものを与えてもらい、習い事でさえも良い成績を残す。それで両親に褒められた。全てが思い通りに上手くいき、手に入れられなかったものなど、存在しなかった。


高校に上がる前、自分の容姿が他人よりも秀でている事を自覚していた為、より奇抜に。そして、可愛さに磨きをかけようと髪の毛を明るく染め、軽く毛先を巻いた。たったそれだけで、周囲の目が180度変わる。両親には明るめの髪を指摘されたが、もともと良い子ちゃんだったのですぐに矛が収まった。


高校生になり、一条雪矢という顔がイケてる男の子と出会う。内心、顔はタイプだなって思ったのが最初の印象。つるむようになってからは、男女の垣根なく面白い男の子だと認識が変わった。


それから間もなく、また新たな男の子と出会う―――三隅秋人。すごく不思議な男の子だった。誰が見てもイケメンだと言う一条と一番仲が良いのが三隅だったからだ。確かに、人懐っこいタヌキを連想させる、目元が可愛らしい普通の男の子。だから、一条が肩入れする意味がわからなかった。


でも、彼と話す一条は、すごく自然体だった。どこか一条は一線を画した言動を取る。なのに、三隅の前では隠す事なく、全てをさらけ出しているという感覚を覚えた。不思議な男の子とだけ思い、気にも止めなかったが、一条と喋る時、自然と目が誰かを探している感覚に陥った。


今日はいないんだ―――肩透かしを喰らった気分で、足元の小石を軽く小突く。一条が何か喋ってるけど、あまり耳に入らない。そんな時、「ごめん、委員会で遅くなった」今一番聞きたかった声が耳についた。勢いよく、顔を上げる。待ちわびていた人が目の前に現れたせいか、表情筋が緩む。


ハッとなり、思いきり顔を逸らした。「雪矢と話してた所、邪魔してごめんね」と言われたけど、そのまま無視してしまった。気にした様子だったけど、一条との会話を始める彼。その間、ニヤける口元を正すのに苦労したのは言うまでもない。


あっという間に2年生になり、なんと3人とも同じクラスになった。嬉しさで毎日ハッピーだったけど、とある放課後一条にこんな話をされた。


「そういえば、二葉って好きなやついないのか?」


「な! い、いるわけないじゃん!」


「お前がドモるなんて怪しいな……ほんとはいるんだろ?」


「うるさいなー。いないって」


「ほんとかー? まあ、お前モテるしすぐに彼氏出来そうだよな……あ、秋人なんてどうだ? あいつすごく良い奴だし、顔も悪くないだろ?」


「な、なんでそこで三隅が出てくるわけ?! あり得ないでしょ」


そう、あり得ない。なんでも手にしてきた私が取り柄がこれといってなく、モブっぽい男の子を好きになるわけがない。私が好きなのはイケメンで誰にでも優しい人だよ。うん、あんな目元だけタヌキっぽい人好きなわけがない。可愛いけど。


「そっかー。お似合いだと思ったんだけどな」


「はあ? どこが?」


「ああ見えて、秋人って俺より男らしいんだぜ?」


「はあ!? あんたより? んなわけないじゃん。あの三隅だよ?」


「チッチッチッ。10年来の付き合いの俺が言うんだぜ? 間違いねーよ」


「だとしても、あり得ないから」


ほんとあり得ない。私はあんな平凡を体現したような人を好きにならない。じゃないと、私のイメージが悪くなる。……ズキッと胸が傷んだ。小首を傾げて、胸に手を当て確認する。なんともない。やっぱり、気のせいだったみたい。


「まあ、いっか。二葉と秋人が付き合ったら最高だったけど、二葉にその気がないんじゃなー。秋人には可哀想だが、そう伝えといてやるか」


ガシッと肩を掴む。


「ちょっと待って。別に伝えなくてもいいんじゃない?」


「いやいや、秋人だって花の高校生。恋人だって欲しいだろうよ。でも、見込みのある奴が駄目だったって事は次に進まなくちゃいけないだろ?」


「言ってる事はわかるけど……」


手に力が入る。


「秋人なら、どんな子がいいかな? あいつ、好み言わないからなー……よし! ここは俺が一肌脱いで秋人の為に合コンをセッティングしてやろう!」


プツンと何かが切れる音がした。握り締めていた手はほどける事なく、一条の肩を掴んだままだ。


「―――待って。嫌だとは言ってないでしょ」


「うんー? でもあり得ないんだろ? 一緒じゃね?」


握り締めていた手を思い切り放す。だけど、一条は驚いた様子もなく、私を見定めている。全て見透かしていたのだろう。


「一緒じゃない。そんなに言うなら私が相手になる」


「ん? 秋人に告白するってことか?」


「うん。そうだよ」


「そうか。なら、さっさと告らないとな」


「うん、そうだね―――って何やってるのよ?」


「ん? 見りゃわかるだろ? 便箋だよ。内容もいつ出すかも二葉に任せるけど、手紙にしとけよ。秋人、喜ぶから。じゃーな」


便箋を置いて、去っていく一条の背中に疑問を投げつける。「最初からこうなるように仕向けてたってわけ?」……「さーな?」 ヒラヒラと手を振って本当にいなくなった。


手紙を出してからはあっという間だった。私は三隅に惚れてない、一条に誘導されただけと必死に心に言い聞かせ、三隅の彼女を演じる。時々、自分の感情なのか演技なのかわからない部分が多数あったけど、続けられた。恐らく、三隅の反応が初々しくて可愛いかったからだと思う。


そうすると……段々三隅に嘘をついているのが辛くなってきた。本当の事を話す前に、一条に相談しようと、放課後の教室―――誰もいなくなってから合流し、三隅との関係性について喋った。これが徐々にヒートアップして、ついに言ってしまった。


「―――三隅なんて好きじゃないし、一条が告白させたんでしょ!」


と。これが後にあんな事態を引き起こす事になるなんて思わなかった。何よりも、三隅に聞かれていたなんて知る由もなかった。

必要な事といえど……重い。空気が重いです。『晴香の気持ち』を皆さんに知ってもらった方が、晴香の為にもなると思い、急遽、話を作りました。晴香も雪矢も嫌いにならないであげてくださいね。

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