裏切り
のんびり書いてます!
どんなに相手の事が好きでも想いが通じるとは限らない。相手の事を好ましく思えば思う程、駄目だった時に傷付くのは自分だ。そうなりたくなければ、努力して好きになってもらえばいい。でも、そんな土俵にも登れない場合はどうしたらいいのだろう。
「秋人ー。今日ゲーセン行かね?」
「ゲーセン? いいけど……あんまりお金ないんだよね、今月」
「軽くシューティングゲームするくらいなら大丈夫だろ?」
「うーん。それなら……大丈夫かな」
「よし! 決まりだな! 終わったら即効行こーぜ」
「わかった」
ゲーセンか……なんか久しぶりだな。そっか。二葉さんと付き合う前は結構通ってたんだ。だけど、最近は雪矢が遠慮して寄り付かなくなって、遠退いてたんだっけ。
ゲームも好きだが、ゲーセンでしか味わえないあの高揚感と雰囲気が脳裏に浮かび、浮き足が立つ。放課後の予定にテンションが上がり始めた時、チャイムが鳴る。午後の授業が始まる前の予鈴が鳴り響き、雪矢も「じゃあな」と声を掛け、席へと戻っていった。
授業が開始され、板書をノートに写している時ふと思い出した。二葉さんと今日会話らしい会話してないな、と。いつも二葉さんから俺の元に来て、俺をからかって雪矢とじゃれつくのが一通りなのに、今日はそれが一度もない。
それに、あの決意から早くも2週間経ってしまった。あと少しで二葉さんと付き合い出して1ヶ月になってしまう。早ければ早いほど、傷が浅くて済むのに今だに行動に移せていない。甲斐性なしにも程がある……自覚はあれど、やはり重い腰は上がらなかった。傷付きたくない―――心がそう叫んだから。
「秋人ー、帰ろーぜ」
「うん、帰ろう」
HRが終わって雪矢に帰りの催促を受ける。返事をして、そちらに足を向けようとした時、黒板側の扉が開き、担任が顔を出す。辺りを見回し目的の人を見つけたらしく、声が飛んで来る。
「ああ、三隅まだ残ってたか。良かった。急遽図書委員の会議が入ってな。多目的室に集合だそうだ。行ってくれるか?」
「はい。わかりました」
担任からの申し入れを断る理由がない。雪矢に目配せをして「すまない」と伝える。雪矢も察して携帯を掲げ、指を指す。「了解」と軽く手を挙げ、教室を後にした。
鞄を持って多目的室に向かいつつ、携帯のトークルームを開く。雪矢からのメッセージが入っていた。内容を確認すると、そこにはこう書かれていた。
『委員会いつになるかわかんねーから、今日は先に帰るわ。また、明日にでもゲーセン行こうぜ』
『わかった。ごめん。明日、また行こう』
と、だけ返しアプリを終了させる。基本、うちの学校は委員会活動自体は緩いが、月一の会議などはかなり時間がかかる。鞄を持って行かないと最終下校時刻なんてざらに越える。
16:00から始まった会議はそこから2時間かかり、今日も最終下校時刻を意図も容易く越えた。さて、帰るかと席を立ち、多目的室を後にして昇降口まで向かう。そこで、ふと思い出した。
今日、英語の宿題出ていなかったっけ? 鞄に入れた記憶がないぞ。鞄をガサゴソと漁る。基本、置き勉をしている為鞄に教科書類を突っ込む習慣がないのだ。案の定、提出プリントを机の中に忘れてきたらしい。
急いで踵を返し、教室に向かう。これが運命の分かれ道だったのだろう。プリントを忘れていなければ、あんな事知らなくても済んだのに―――。
教室まであと少し、という所で廊下に僅かだが話し声が響く。内容はあまりわからないが、男女が話しているということは声質で判断出来た。
入口の取っ手に手を掛けた時、聞き覚えのある声が耳を撫でた。しかも2人分の声はどちらも覚えがある。この時、また選択肢を間違えた。恐らく、躊躇わずに踏み込めばこの後の会話を知らなくても済んだのに。
「それにしても、秋人とお前が付き合うとはなー。何が起こるかわかんねーもんだな」
「はあ? 誰のせいでこうなったと思ってんのよ。そもそも三隅の事は好きじゃないし。一条が告白させたんでしょ!」
「確かにけしかけたけど、告ったのは二葉だろ?」
「―――はあ?! あんたね―――」
気付かれないように、その場を離れる。まだ雪矢と二葉さんが言い争っている声が聞こえる。離れれば離れる程その声は小さくなっていった。それでも足を止める事はなかった。歩く速度が次第に早歩きに。そして、そこから力の限り走った。
いつの間にか家に着いていた。どうやって家に帰ったのか覚えてない。ただ、走りだした瞬間までは記憶が残ってる。その後を覚えていないだけだ。
自室の扉を開いた瞬間、抑えきれない感情が沸き上がる。持っていた通学鞄をおもいっきり壁に向かって投げつける。ものすごい音が木霊する。肩で息をしていたが、徐々に落ち着き始めた。そうすると、急に冷静になる。
乾いた笑いと言い様もない嗚咽が洩れる。もはや泣いているのか笑っているのかさえ、俺自身わからなかった。
ただ一つ言えるのは、二葉さんは俺の事なんて始めから好きじゃなかった。ただ、それだけ。
書いていくうちに、展開変えようと画策し始めてしまいました。私の中で考えていたシナリオを少し変更して後半お届け致しました。出来上がりには満足しています。自己満ですが。




