ー第一章 女王ー
マシュマロ大陸にあるロール国。そこはお菓子を愛する平和な?国であった。そんな国に一人の女王がいた。
「女王!何、人の仕事増やしてんですか!?早く書類と向き合ってください!」バルコニーで女王を止めてい
るのは執事のグレイスだ。女王が信頼している家臣の一人だ。優秀なので女王の補佐もしている。
と、言っても女王が仕事を毎度サボっているので殆ど寝ずにその仕事を引き受けている。
だが、その苦労人の言葉も聞かずに街へ行こうとしているのはアリーア・ロール。彼女が先程から
言っている女王なのだが…。「良いじゃない。んじゃ、あとよろしく!」そう笑顔で言い、バルコニーから
飛び降りた。慌てて下を見ると二人の騎士が受け止めていた。少し安堵した。
「サーナイト、ルイ、追いかけて…」見ると、もう既にいなくなっていた。グレイスは肩を震わせ…
大声で叫んだ。「あんの…アホ女王ー!!」その声は城内に響き渡った。
市場では沢山の人で賑わっていた。その中に一人、正体隠す気ゼロの女王がいた。いつもの事だから
誰も気にしないが。「よーし、抹茶ロール食べに行くぞ!」意気込んで歩き出そうとしたその時…
「女王!」誰かに呼ばれ振り返る。そこには珍しい黒い馬に乗った先程のサーナイトと、ルイがいた。
「ゲッ…」サーナイトは笑う。「さ、城へ戻りましょうか?」「(後で怒られるのは嫌なんだから)」
サーナイトの思いも知らず、アリーアは怯えていた。何故なら…「(め、めめめ目が笑ってない!わざとな
の!?)」泣きそうになっている。「あの頃に戻っちゃだめよ!」サーナイトは少し目を開く。
「戻るわけないでしょうが。だって…」目線を周りに向ける。日に照らされて輝く人々、元気な声、
そして自分を救ってくれた女王。こんな呆れるくらい優しい国にいて自分は初めて知ったのだから。
笑うこと、悲しむことを。「(あんたは俺の生きる意味だから。)」だから、戻らない。
「って言うか、私はまだ満喫したいからグレイスによろしくね!」再び歩き出そうとしたその瞬間、
サーナイトに襟首を掴まれた。「おい、待てコラ」「いつそんな言葉を覚えたの…?」サーナイトは
「全てはあの執事に」すぐに頭に浮かんだ。「(グレイスね)」彼しかいない。
「だってあんた女王らしくないから」「はぁ!?私、王族だからね!」必死に訴えている。
「…王族の血はあるけど、あんた根っこからアホだから」横からルイが言う。まあ、殆どの国民が彼女を
アホと認識しているからには仕方ない。「私、昔はしっかりしてたわよ!」「過去は過去。今は今。
だから、昔の女王は関係ない」正論だった。「ルイ、よくやった!」そう言われ、ほんの少しルイは顔を
赤らめた。「照れてる?」アリーアにからかわれ頬を膨らませていた。




