4 八津教諭の話
「佐藤さん、ここを開けてください」
ダメダメ、いや田目教諭がアパートの扉の隙間から父親に話しかけている
だがドアのチェーンがかかているのをいいことに父親は出てこない
いや玄関のドアを閉じようとしている
いい加減にしてくれないかな
どっちとも
そろそろ怒ってもいいよな?
現状を説明しょう
校長の前で(教頭が)説明をした後のことだ
校長はすかさず警察と児相(児童相談所)に電話をかけた
さすが腐っても校長だ
仕事が早い
いや腐ってないか
歳はとっているけど
でもだからといって結果がついてくるものではない
警察は関係部署に連絡しておきます
児相は今から48時間以内に動きます
との返事だった
どいつもこいつもふざけていやがる
完全に人ごとのお役所仕事だ
子供の人生をなんだと思っていやがる
速攻で動けよ
そう言いたい
丁度いい
メンツに無理矢理引き摺りこまれていたんだ
だから好き勝手ヤらしてもらおう
後始末はまかせた(笑)
虐待の疑いのある生徒の閻魔帳(家庭調査書)を奪いとる
住所を確認した後、徒歩で生徒の家に向った
え?
そこは車だろ?
残念、電車通勤だ
大体、生徒達は歩いて登下校しているんだ
生徒宅がそんなに遠いわけがない
おまけに生徒達は遠回りして安全な大通り(の歩道)を歩くんだ
直線で動けばそんなに時間はかからない
その証拠に歩いて10分ちょっとで着いた
最初は八津教諭一人で行くつもりだった
でもダメダメ、いや田目教諭と教頭がくっ付いてきた
なにこの縛りゲー
足手まといがもれなくついてきた
せめてオレの半分でも働くと言うのなら着いてくるのを嫌がらないんだけどな・・・
え?
校長と学年主任?
学校で書類書きをしているよ
虐待が発覚した経緯
その後の対処法
関係各所への連絡の記録
最後に関係者全員のサインとハンコ
書類作成は大変だ
お役所仕事、ここに極まり、だな
まあ小学校は、本当にお役所(文科省)なんだけどさ
田目教諭は今回の虐待に気がついた英雄でもある
だから先攻を譲った
無理矢理ついてきたことへのイヤガラセではない
先攻は譲ってやる!
ってやつだ
だって何もしなかったら、何のためについてきたんだよ、とケリを入れたくなる
出番くらいは作ってあげよう
一人で勝手に行動すると苦情がくるからな
・・・開始1分で後悔した
ここまで使えないとは!
生徒を保護するどころか、玄関の扉にチェーンを掛けられて入口すら突破できないとは・・・
田目じゃなくって、ダメダメじゃん!