2 田目教諭の話
<スパーン!>
丸めたノートで頭を勢いよく叩かれました
「痛っ!」
たとえノートであっても痛いモノは痛いです
声をあげた私は悪くない、はず?
でも
「ああ”っ」
先輩に睨まれました
・・・どう見てもインテリヤクザに絡まれているとしか思えないです
ここは小学校ですよね?
どこかの非合法組織の秘密基地とか、料理バトルですべてが決まるトップ機関ではなくて
はじめまして
田目 良雄です
小学校の教諭をやっています
大学を出て二年目の新人です
一年目は定年直前の教諭のクラスの副担任でした
最近のクラス運営は昔と違って多種多様のことをやらなければなりません
そこで経験を積む意味を込めて副担任となりました
あ、副担任なんて簡単だと思いました?
でも実際は大変なんですよ
相手は子供ですからね
集中力なんて全くないと言っても過言ではありません
いや真面目に授業を受ける気がサラサラないと言えば判ります?
一体どんなふうに育てればこんなクソガk、ゲフンゲフン、お子様に育つのかと思いました
おまけに親に電話すると
「学校で教えてくれなければ困る」
と言われる始末です
まったく意味が判りません
学校は勉強と集団生活に必要なスキルを身につける所ですよね?
最低限の一般常識は家庭で教えるのが普通ですよね?
思わず教育学の教科書を読みなおしました
私の常識が間違っているかも、とか思いましたから
最近は親も子供もおかしなのが多すぎます
いや大学の教育学の授業で知ってましたけど
現実は理論を越えてました
思わず教師になったのを後悔しました
こんなんだって判っていたら絶対に教師にはなりませんでした
だって一生、こんなクz、ゴホン、おかしな人達と付き合うのかと思うと自分の人生が無意味に思えますから
会社員になってアフターファイブに合コンして人生を謳歌したかったです
後悔しつつも、1年かけて一通りのことを学びました
おかげさまで、二年目には晴れて小学2年生のクラスの担任になれました
ようやくだ 私もこれで 一人前
喜んだのもつかの間、すぐにトラブルが起きました
体育の時に生徒の身体にアザを見つけたのです
背中が結構酷かった
自分の子供に対してこの仕打ち
まったく意味がわかりません
どうすればよいのか判らないため放課後に先輩の八津教諭に相談しました
え?
そこは学年主任だろう?、ですか
誰だって信頼できる人間に相談したいですよね
屁理屈を言うだけで役に立たない学年主任
かたや、校長や同僚からの信頼が厚い(らしい)先輩
どちらに相談するかは一目瞭然です
もっとも先輩とは挨拶をするだけで、あまり交流はないんですけどね
あ、歓迎会で少し雑談したかも?、ですね
先輩は最初は職員室にいるかと思ったけど居ませんでした
「どこにいるのだろう?」と探したら教室でテストの採点をしてました
・・・現場主義?
事件は職員室で起きているんじゃないんだ、教室で起きているんだ
とかの熱血だったらどうしましょう?
私、熱血とか体育会系はあんまり得意ではないんです
どっちかというと不得意です
あのノリにはついていけません
ドキドキしながら
「虐待されている生徒が居るようなんですけど・・・」
と体育の時間のことを話したら
手元にあったノートをクルクルまとめて頭を叩かれました
こんな理不尽、人生初でした
これがパワハラというものなのでしょうか?
そう言うとさらに叩かれました
「子供の虐待に気がついた時点ですぐに動けよ!」
だそうです
「(子供は)家に帰る時点で絶望に叩き込まれているんだぞ!」
そう言われて自分の甘さに愕然としました
子供が絶望を胸にランドセルを背負いながら家路に向かう
想像しただけで涙が出てきました
「泣きたいのは子供だろっ!」
そういって蹴られました
とても痛かったです
でもなんでこの人がみんなから信頼されているかが判ったような気がしました