オバケが怖い-続-
墨玲と向かったのは徒歩圏内にある何の曰くも無いと思われる無人の神社だった。
「ここだよー」
「人が居ないね……」
「そりゃ居たら肝試しなんかしたら怒られるからね」
「まぁそりゃそうだけどさ……。なんか怖いよ……」
「やっぱり裕美はビビリだなぁ。じゃあ怖くない様にお参りでもしておく?」
「関係あるのか分からないけど……一応、しとく」
私と墨玲はお賽銭箱の前に立って五円玉を投げ入れ目を閉じる。祈るのは、怖い事が起きない様にしてください、だ。そして拍手を二回する。ガラガラやる鈴? は無いので、墨玲と共に神社を後にする。お祈り届くといいなぁ。
「そういえば墨玲は何をお願いしたの?」
「えー秘密。裕美はどうなの?」
「じゃあ私も秘密ー」
お互い笑い合う。その時、一陣の強い風が神社の方から吹いてきた。何か悪寒を感じた気がしたけれどあまり深く考えない様にしておいた。今からビビっていたのでは先が思いやられる。
それから墨玲とちょっと買い物をして、墨玲はちょっと寄るところがあるからと言って私達は別れた。仕方が無いので寮に戻る。夏休みなのに実家に戻らないのはちょっと複雑な事情がある。まぁ端的に言えば私と両親が不仲なのである。不仲というのはちょっと違うか。過保護というか何というか……。まぁあまり関係がよくないのは事実である。それは仕方ない。だから親元を離れて夏休みにも実家に戻らないのである。流石にお盆とかは少しだけ戻るが。ご先祖様を大事にしないと怖い目に遭うかもしれないからだ。とりあえず要点だけは押さえる感じで過ごしている。
「あっついなぁ……」
私は部屋についている冷房のスイッチを入れる。酷暑である今年は特別に冷房の無制限使用の許可が下りている。それだけは救いだ。しばらく冷房を強めて部屋の熱気を冷ます。寮は今は人が少ないのか一人一部屋という豪勢さだ。まぁそれは二年生からではあるが。私の居るフロアと下のフロアには二年生しか居ない。それより上は三年生のフロアだ。一年生の時はルームメイトが居た。なんと墨玲である。それから彼女とは何かと仲良くして貰っている。まぁ彼女の性格は前から変わっていないが。
墨玲本人から聞いたわけではないのだが、どうやら霊感とやらを持っている……らしい。この部屋の空気が重いと言い出したのも墨玲だし。
夕暮れから夜へと時間は移る。夏休みの宿題はもう終わっている。一応これでも優等生として振る舞っているので。まぁその分、出る杭は打たれると言われる様にビビリである事をいじられるわけなのだが。
一応受験に向けて勉強をし始めている同級生も居る。負けじと受験勉強を始める。一応文系なので今のうちに得意分野で弱いところを補強する必要がある。苦手な理系はその後だ。
「――ん?」
ふと勉強に夢中になっていると、どこからか視線を感じる。気のせいかと思いまた机に向かう。しかし、どうしても気になってしまう。早くもプレッシャーを感じているのかな? と思い部屋をキョロキョロと見回す。しかし部屋には誰も居ない。
「まさかね……」
オバケという可能性が一瞬頭をよぎった。今日は神社にも寄ったし……そんなモノは憑いてないと思いたい。
そうだ墨玲が帰ってきていたらちょっと見て貰おう。霊感とやらがあればきっと分かるハズだ。