蟲が怖い-結-
「一体、どうすればいいんですか!?」
「追い出す、と言うのは語弊がありました。貴方自身が強くなる事です」
「つ、強くなる?」
「そうです。肉体的にではなく霊的に、です」
「やっぱ修行とか必要なんですか?」
「……貴方は虫の幽霊を追い出すのに手段を問いませんか?」
「問いません。何でもします!」
「その覚悟。認めましょう。ではソファーに横になってください」
「わ、分かりました」
「目を閉じ口を開けてください。そして私の入れるモノを食べてください」
何を喰わされるんだ……。でもそれが虫のオバケを追い出す事につながる事になるのならやってやろうじゃないか。
口の中に何かが入ってくる。唐揚げの様なパリパリとした食感だ。しかし皮? の部分を破ると中身は何かの液体だった。苦い。一体何を喰わされているんだ……。
「もう目を開けても大丈夫ですよ」
目を開ける。もう飲み込んでしまって何を喰わされたのか分からなかった。
「一体、何を……」
「それは知らない方が身のためでしょう」
「は、はぁ」
何やら丸め込まれた気がするが虫のオバケがいなくなるのなら問題無い。しかし……ちょっと吐き気が……。
「すいません、ちょっと吐き気が……」
「あ、ダメですよ吐いちゃ」
「で、ですよね……。一体何を食べさせたんですか?」
「本当に後悔しませんか?」
「じゃ、じゃあソフトにぼかして教えてください」
「まぁ虫ですね」
「げ……。虫ですか……」
途端吐き気が倍増する。しかし小部屋の主は淡々と続ける。
「蠱毒、というモノはご存知ですか?」
「いえ、知らないです……オエッ」
「瓶の中に毒虫を無数に入れて共食いをさせて最後に残った一匹を使った呪術ですが、貴方が食べたのはその最後の一匹を食べやすくしたモノです」
「そ、それで食べるとどうなるんですか……」
「毒虫のヒエラルキーの頂点に立った事になります。これで大抵の虫は貴方を恐れます。それで部屋から出て行くでしょう」
「な、なるほど……」
諸々の説明を受けた後に追い出される様に外に出される。仕方なく吐き気を抑えるために胃薬を殺虫剤を買った薬局にまた寄って買って帰宅する。早速胃薬を水で流し込む。
「とは言ったが……実際に効果はあるんだろうか?」
と、言った瞬間。ガサガサガサ! と、大量の虫が這う音が聞こえた。
「ひっ!」
効いてないじゃないか! と思いつつもよくよく音の方向を聞いてみると部屋から出て行こうとしている様だ。ビクビクしながら窓を開けてやると一斉に羽音とか這う音を立てて逃げていった。
「や、やった! 追い出したぞ!」
大歓喜! これで俺にやっと平穏が訪れる。が、この時俺は忘れていた。この能力を得る時についてきたペナルティーを……。
一週間後。俺の体の中を蠱毒の蟲が体内を這い回る夢にうなされている。これがペナルティー。虫のオバケを追い出したのはいいが、この夢はキツい。いつか慣れると信じて俺は今日も悪夢にうなされる。