前作までの基本設定・主な登場人物・あらすじ
この作品は、拙作『ラストオーダーは、うらめしや』及び『ファーストバイトは、甘噛みで』の続編になります。
これまでの基本設定・主な登場人物・あらすじを、以下にご紹介します。ネタバレを含みますので、前作・前々作をまだ読まれていない方は、どうかそちらを先にお読みいただきますよう、お願いいたします。尚、今作は、前の二作からある程度独立した作品として読めるよう努めますが、一部登場人物は引き続き登場します。
【前二作の基本設定】
舞台は現代の日本。ただし、それと重なるように『魔界』が存在し、亡霊・妖怪・魔物などが住んでいる。通常は『位相』が異なるため、これらの存在は目に見えないが、霊感がある人間や、何らかの因縁がある人間には見えることがある。ただし、魔界の存在がこちらの世界で『実体化』すれば、誰にでも見えるようになる。
魔界の存在からのトラブルを解決するため、古くから陰陽師が活躍していたが、彼らは官僚でもあるため、一般庶民には敷居が高い。そこでいつしか、漂泊の芸能の民である傀儡師が、その役割を担うようになった。
尚、現代の傀儡師は、呪文の節約のため、数式を使用している。
【前二作の主な登場人物】
・半井風太……傀儡師。本業は売れない腹話術師で、芸名はピーター半井。髪型はアフロヘアー。
・ほむら丸……男の子のパペットに宿る式神。本体はオオカミの姿をした、青白い炎。
・みずち姫……女の子のパペットに宿る式神。本体は真っ黒な大蛇。
・広崎慈典……風太の友人。ホテルマン。少し霊感がある。
・相原晴美……広崎の後輩。サバサバした性格。何故か霊が見える。
・玄田泰聡……相原の同期のドアマン。ボーッとしていて、まったく空気が読めない。
・畑中珠摩……コンシェルジェ。広崎のホテルがお祓いを依頼している陰陽師、斎条弥重郎道節の姪。
【『ラストオーダー〜』のあらすじ】
売れない腹話術師の風太は、友人の広崎に、自分の勤めるホテルの社員会が主催する余興への出演を持ち掛けられ、ある地方都市を訪れた。
その夜、ホテルのコーヒーラウンジで、幽霊らしきものが出現するという事件が起きた。いつもお祓いを頼む陰陽師が海外旅行中のため、広崎は代役として風太を推薦する。しかし、風太はお祓いを断り、別の方法で解決したいと申し出る。
最初は渋っていたホテルの総支配人も、式神のほむら丸を見て態度を一変し、風太に依頼することになった。
風太はネットで情報を収集しながら、一旦魔界に戻したほむら丸に加え、みずち姫も召喚する。仲の悪い二体の式神を宥めつつ、現場となったコーヒーラウンジの奥側半分に『陰の半結界』を張った。これにより、魔界の存在は、入って来れるが、出ることはできないという。
やがて現れた幽霊は、ドーム球場の近くで水死した高校生であった。一目惚れした相原に会いに来たらしい。
だが、それを裏で操っていたのは、埋め立てられた浜辺に棲む河童たちであった。彼らは新しい住処を求めて来たのである。風太は、みずち姫の所有する魔界の一部に河童を住まわせることで説得し、事件を解決した。
しかし、この河童たちを巡っては、過去に豊臣秀吉や石田三成と関わりがあったらしい。そのため、大阪で芸の修行をするという風太を、広崎は少し心配しつつ見送ったが、逆に、ほむら丸からお守りを渡された。
【『ファーストバイト〜』のあらすじ】
大阪のグループホテルを研修のために訪れた広崎・相原・玄田・畑中の四名は、大阪のスタッフである錦戸の案内で(現在の)大阪城を見学することとなった。だが、途中で広崎が高熱を出し、足の痛みを訴えたため、ホテルに引き返す。
広崎の熱が下がらず困っているところへ風太が現れ、ほむら丸の『陽の半結界』で魔界の影響から隔離する。
このままでは広崎が結界から出られないため、風太が原因を調べるうち、(かつての)大坂城で殺された果心居士が封印した麒麟を、何者かが手に入れようとしていると気づく。
それは果心居士を殺した犯人である弟子の玄嵬であった。玄嵬は錦戸の上司である、接客インストラクターの丹野に憑依していた。危うく玄嵬に斃されそうになった風太を救ったのは、ホテルの医師に憑依していた果心居士であった。
果心居士の与えたヒントで、風太は麒麟の封印を解くための『符』、すなわちパスワードが広崎・相原・玄田・畑中・錦戸の五名の名前に隠されていると推理する。
風太は、念のため陰と陽の半結界で二重に囲み、部屋から出られない広崎の分は髪の毛でダミーを作り、残る四名を東西南北に配置して、封印を解こうとする。だが、風太の詰めが甘く、四人はそれぞれ五感の一つずつしか使えない。そこで、四人は協力し、ついに封印を解くことができた。
解放された麒麟はUFOのような親麒麟の元に帰り、広崎との異常な同調は消え、事件は解決した。
それでは、次回より本編スタートです。