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掌編小説集9 (401話~450話)

傘の進化

作者: 蹴沢缶九郎

人間が鉄の塊に乗って宇宙に行く時代、傘の姿や性能は大して昔と変わらずに現在に至る。いい加減大きな変化を遂げても良いのではと感じた私は、傘の改良に取り掛かった。

私はまず、片手が塞がれるという欠点を改良した。取っ手と軸の骨を取っ払い、代わりとなる、密かに開発を進めていた伸縮性の楕円(だえん)形反重力装置を傘の内側に取り付けた。これによって、傘を持つ手間が省け、両手が自由になるのだ。

次に私は、傘に雨雲感知センサーを付け、雨を感知した傘が、人がいる時にだけ自動で開くようにし、最後に、誰にでも扱いやすいよう音声認識装置を取り付けたのだった。

これで、従来の傘からはだいぶ進化した最新の傘が完成したと言えよう。


それから数日後、テレビの天気予報は雨を伝え、私はまだ雨が降る前の、どんよりとした雨雲が支配する空を確認すると、進化させた最新の傘を持ち、近所のコンビニへと出掛けた。

買い物を済ませ、外に出る頃にはポツリポツリと丁度小雨が降り始めた。この日の為に開発した傘を差そうと、楽しみと期待の心持ちで傘立てを見た私は、思わず独り言を口にした。


「…そうか、傘が盗まれる事を考えていなかった」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 傘を題材にしているところ。 素晴らしい傘ですがぁぁ(笑) [一言] さらっと読んでしまい、最後が見えてしまった状態で読んでしまいましたが、それでも見事な落ちでした。 面白かったです。
[良い点] むずかしい事は出来ても、簡単な事に対応し忘れる。ありがちですよね。 [一言] 本州の雨の様子をTVで見てると、雨合羽に長靴がいいのではと、思うこの頃の雨ですね。この小節の傘は、強風に対処で…
[一言] 面白かったです。 ネタバレを避けながら感想を書くの難しいのですけれど・・・。 納得いかない!ってなりがちなのがこのタイプの落ちですけれど、おおっそうきたかあ、となる良い落ちだと思います。
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