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第21話 狩人

 マレルドから誘いを受けた3日後。


 カイルとアイーナの姿は東の門の外にあった。

 2人は【亜人騎】の乗騎用のサポーターを巻いて、辺りを見回している。


 アイーナの耳がピクピクと動いた。


「あっちから大勢の人の声が聞こえます」


 行ってみると、そこに武装した男や【亜人騎】がたくさん集まっていた。

 騎士団とはまた違う。

 見た目からいえば、盗賊団に近い。


 武装に一貫性はなく、お世辞にも規律は感じられない。

 いいとこ――荒くれ者の集団といったところだろう。


 恐る恐る近づいていくと男がこっちに近づいてきた。


「あんたらがマレルド隊長が言ってた魔法学院(ノヴァク)の学生か」

「あ。はい」

「オレの名前はバダイ。下の名前は覚えなくていい。バダイって呼んでくれ」


 禿頭のバダイは、歯茎を見せニッと笑う。

 無数の傷が付いた手を差し出した。


「カイルです」

「アイーナです」


 それぞれ握手を交わす。

 カイルが後ろに控える男たちを見つめた。


「魔獣狩りは初めてか?」

「ええ。ここにいると人たちはみんな狩人(バンサー)なんですね」

「おおよ。魔獣を狩ることに関しては、騎士団より上だぜ。ああ。ただマレルド隊長のとこは別格だけどよ」


 バダイは口元に指を当てる。

 お茶目な笑みを浮かべた。


「ところで、あんたらの騎体はもう届いているぜ」


 と教えてくれた。

 カイルが駆けつけると、スキルイーターが大きな荷台に横たわっていた。


「乗っていいですか?」

「おうよ」


 開口部を開けて、中に滑り込む。

 2人は前部と後部に別れ、着座した。


『カイルか。どうした?』

「お目覚めかい? ミリオ」


 カイルは操縦桿のグリップを確かめる。

 ミリオはアイーナの唇を動かした。


『スキルイーターを動かすとは、何かあったんだな』

「ああ。ちょっと説明すると長くなるけど」

『構わん。話せ』


 カイルはシート位置を調整しながら、3日前の話を始めた。



 ★



「魔獣狩りですか?」


 カイルはマレルドの話を聞いて、ポカンと口を開けた。

 横にいるアイーナも似たような反応を示す。


 マレルドは2人の前を往復しながら、熱弁する。

 免許を取る時の座学の講義を思い出させた。


「そうだ。さっきもいったが、スキルというヤツは人種や亜種などの専売特許というわけではない。生きとし生けるもの等しく与えられるものだ。故に、魔獣にもスキルは存在する」

「はい。しかも、とっても強力だと聞いたことがあります」

「その通り」


 パチンと指を鳴らし、マレルドはアイーナを指さした。


「魔獣にとってスキルは生きる術だ。それがなければ獲物を捕ることは出来ない。厳しい自然の中で磨き上げられたスキルレベルは、我々よりも遙かに高い」

「それを俺の【暴食】で食っていくというわけですか?」

「その通りだ。人種のスキルを奪うよりはいいだろ」


 確かに……。

 カイルは頷く。それなら問題ないかもしれない。


「君に1人、狩人(バンサー)を紹介しよう。大丈夫。私の元部下で優秀な男だ」

狩人(バンサー)?」

「魔獣を専門に狩って、賞金を稼いでる人のことをそういうんです、カイルさん」

「へぇ……」

「ただし、1つお願い。――というか、まあ保険なのだが」

「なんでしょうか?」

「スキルイーターに乗っていってほしい」

「スキルイーターを?」


 カイルは思わず声を上げた。


「気が進まないのはわかる。だが、魔獣を狩るというのは命がけの仕事だ。生身で君に当たらせるわけにはいかない」

「なるほど。そのためのスキルイーター(保険)ですか」


 最悪、何かあってもスキルイーターの中なら、生存率は高くなる。

 マレルドはそう言いたいのだ。


 今度はカイルは即答しなかった。

 スキルイーターに乗ると言うことは必然的にアイーナにも同行してもらうことになる。


 だが――。


「カイルさん、やりましょう!」

「でも、アイーナ……」

「あら。弱気なんですね。……私を守ってくれるんじゃないですか?」

「う……」

「カイルくん、一本取られたな」


 マレルドは、カイルの広い背中をバンと叩いた。



 ★



 説明を聞き終え、ミリオはアイーナの唇を動かした。


『なるほど。了解した。私の方は異論はない。ともかくカイルもスキルイーターも実力が不足していることは確かだ。攻撃や防御に様々なバリエーションを持たせるのは悪くない』


 理解してくれた。


 準備が終わると、ちょうど外から声が聞こえた。


「カイル! もう大丈夫か?」

『行けます! いつでも』

「よおし! 上げろ!」


 スキルイーターを起動し、上半身を起こす。

 荷台を軋ませながら、立ち上がった。


「ひゅー! 格好いいじゃねぇか、お前の騎体」

『ありがとうございます』

『なかなか見る目があるな、あのハゲ』


 満足そうにミリオは頷いた。


「あん? なんか言ったか?」


 耳に手を当て、聞いてくる。

 カイルはぞっとしながら『なんでもありません』と答えた。


「あの隊長が認める腕だから心配してねぇけど、無理はするなよ」

『はい。ありがとうございます!』

「よし。出発だ」


 バダイが声を張り上げる。

 次々と【亜人騎】が起動し、東の方へと向かっていく。

 歩兵もその後に付き従っていった。


 カイルはその最後尾に位置し、狩人(バンサー)たちについていった。




 到着したのは広い樹海だった。


「何か……。私が住んでいた森とは別な感じがします」


 アイーナは精晶窓(グリッド)に目をやりながら、しきりに耳を動かす。

 彼女ほどはっきりしないが、カイルもまた同じ感想を持っていた。


 アイーナたちが住む森には、自然の中にありながら安心感があった。

 だが、今いる樹海にそれがない。

 歴戦の騎操者(ベンター)の勘か。

 危険な匂いがプンプンするのだ。


 カンカンという金属を叩く音が聞こえる。

 足元を見ると、武装したバダイが立っていた。


「カイル、ここからは外部音声での通話は禁じる」


 カイルは黙って開口部を開けた。

 音量を絞って、バダイに話しかける。


「近くに魔獣がいるんですか?」

「いや。単純に【亜人騎(ヽヽヽ)】の音声は響きやすいからな」

「わかりました」

「お前、いい腕だな」


 いきなり褒められた。


「足音が小さい。相当、無免で乗り回してただろう」

「え、ええ……。実は……」


 これには苦笑いを浮かべるしかなかった。


 しばらく進み、開けた場所にやって来る。

 やたらとここだけ、草木がなく、土色の地面がむき出しになっていた。


 狩人(バンサー)たちの顔色が変わる。

 おもむろに、装備の確認を始めた。


「カイル。開口部を閉めろ。戦闘が始まる」


 バダイが教えてくれた。

 カイルは黙って頷き、言うとおりにした。


「魔獣がいるんでしょうか?」


 騎手室(ヤード)の中でアイーナが震える。

 耳をくるくると動かした。


 カイルは精晶窓(グリッド)を注視する。

 甲斐はあった。

 変化の兆しを見つける。

 目の前の土がボコボコと膨れあがったのだ。


「【亜人騎】は前に出ろ!」


 バダイが声を張り上げる。

 数騎の【亜人騎】が命令に応え、盾を構えた。


「来るぞ! 土蛇(グリーム)だ!!」


 瞬間、土が爆発した。

 土砂が森の木々を越えてしまいそうになるほど舞い上がる。


 大量の土煙の中から、体長10マル(1マル=1メートル)もありそうな巨大な蛇が姿を現した。

 それが約10体。


「ギシャシャシャシャシャシャ!」


 奇声を上げて、樹海に入ってきた狩人(バンサー)たちを威嚇する。

 すると、悲鳴が聞こえた。


「うああああああああ!!」


 一時撤退に遅れたのか。

 功を焦って、突出したのか。


 歩兵の狩人(バンサー)が1人孤立していた。

 2体の土蛇(グリーム)に囲まれている。

 持っていた槍を振るい、威嚇しているが、このままでは危ない。


「誰か! 援護に言ってやれ」

「俺が行きます!」


 バダイが言う前に、カイルは飛び出していた。


 腰に携えた大剣を抜く。

 肩に担ぐように持ち接敵した。

 距離を詰めると、一閃する。


「ヒュー!」


 バダイは剣閃の鋭さに思わず口笛を吹いた。


 次の瞬間、土蛇(グリーム)の首が落ちる。

 生命力が強いのか。

 それでも土蛇(グリーム)は、その場でジタバタともがいた。


「にゃあ……。気持ち悪いですぅ」


 精晶窓(グリッド)を見ながら、顔をしかめたのはアイーナだ。


 カイルはさらに頭に剣を突き立てる。

 トドメをさした。


『一旦後退を!』

「す、すまねぇ!」


 狩人(バンサー)が後退していく。

 カイルは残った1体を見つめた。


 その間も各所で戦端が開かれた。

 【亜人騎】が激しく動き回り、土蛇(グリーム)に向かっていく。

 それを援護するように、歩兵の狩人(バンサー)たちが矢を放った。


『カイル、集中しろ』

「わかってる。早速試すよ、ミリオ!」


 カイルの言葉に、相棒の精霊はすぐに応えた。


「【鑑定眼】起動」


 精晶窓(グリッド)土蛇(グリーム)のステータスが表示される。


 土蛇(グリーム)

 Lv 224

 DP 2800

 MP 310

 保有スキル

 【溶解液】   Lv110

 【穴掘り】   Lv220

 【土属耐性】  Lv189

 【嗅覚鋭敏】  Lv345

 弱点属性    光 炎


「【溶解液】ってこれもスキルなのかな」


 カイルはステータスを見ながら、口端をヒクヒクとさせた。


「唾液の溶解力が上がるとかでしょうか?」


 アイーナが真面目に考える。


「そんなの嫌だよ。自分の口が溶けちゃいそうだ」

『冗談を言ってる場合ではないぞ。他のスキルはなかなか使えそうだ』

「そうだね」


 土蛇(グリーム)に近づく。

 すると、噂の【溶解液】を放ってきた。


 カイルは操縦桿を小刻みに動かす。

 スキルイーターはクイックターンをして、【溶解液】を回避した。


 距離が一気に縮まる。

 カイルは土蛇(グリーム)の巨木のような胴体を掴んだ。


「よし!」

『【暴食】を起動する』


 スキルイーターの手が光り輝いた。

 突然の強い光に、土蛇(グリーム)は驚く。


  スキルイーター

 Lv 999

 DP 7899

 MP 5980

 保有スキル

 【鑑定眼】    Lv999

 【暴食】     Lv∞

 【炎魔法】    Lv999

 【器用補正】   Lv10

 【炎耐性】    Lv999

 【炎属性付与】  Lv999

 【魔力消費減】  Lv500

 【炎吸収】    Lv800

 【剣技】     Lv230

 【槍術】     Lv88

 【弓術】     Lv102

 【移動速度増幅】 Lv120

 【状態耐性】   Lv50

 【ウォークライ】 Lv30

 【穴掘り】    Lv220

 【土属耐性】   Lv189

 【嗅覚鋭敏】   Lv345


「あとは倒すだけだ!」


 カイルは大剣を斜に構える。

 力を込めると一気に薙ぎ払った。

 土蛇(グリーム)の胴体が、ボールのように弾む。


 精晶窓(グリッド)で辺りを確認した。

 狩人(バンサー)たちは戦闘を継続中だ。


「援護しよう。ミリオ! 【ウォークライ】」

『了解! 【ウォークライ】起動!』


 すると、スキルイーターはのけ反る。

 大きく遠吠えのような声を発した。


 それを聞いた狩人(バンサー)たちに力が宿る。

 逆に、土蛇(グリーム)たちの動きが止まった。


「最近の子供はやるねぇ! 負けてられねぇなあ!」


 バダイは鼻の下を掻く。

 持っていた弓を掲げた。


「お前ら、子供に後れをとるんじゃねぇぞ!!」

「おおおおおおおおおおお!!」


 怒号が返ってくる。


 狩人(バンサー)たちは一気呵成に畳みかけた。


明日もよろしくお願いします。

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