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07 砂漠での実験

 時矢、レイナ、葵。

 この三人で行動するようになってからあちこちのフィールドに出張するようになった。

 それから分かった事がいくつか。


 お互いに気の合ったプレイヤーは、PTとは別にクランというグループを結成できるらしい。

 クランを結成するのに必要な条件はただ一つ。

 『結成人数が4人以上』。

 時矢もクランには興味があったが、今PTをよく組むほどにまで仲のいいのはレイナと葵のみなのであと一人足りない。

 まあ先の話だな、と時矢はこの件を先延ばしにする事にした。


 そして町。

 時矢達がいつも利用している町、初心者が最初にログインするため地道に賑わっているのだが、この町以外にも色々な町が存在するらしい。

 魔法使いだけで結成されたクランが多く住んでいるらしい町や、鍛冶屋を生業にしている町等。

 他の町に行くにはそれなりに遠い距離を行動しないといけないらしいのだが、いつかは行ってみたいとは三人での雑談より。


 最後に、このゲームのクリア目標。

 時矢達がまだ知らないダンジョン、洞窟がこの世界にはあるらしいが、明確なクリア目標は提示されていないらしい。

 大抵のゲームには明確なクリア目標が提示されていないか、あるいはそのクリア目標……例えばどこそこに存在する強敵を倒せば達成するといったものがあるがそれは何回でも挑戦可能という二種類がある。

 このゲームのプレイヤー達にとっては色々諸説あるが、今のところクリア目標が分からないので前者だという説が多い。

 ただ、分からないだけで隠されているクリア目標があるという説も存在するらしい。



 そんな話を、町にある酒場の一つのテーブルで三人は話していた。

 三人ともまだレベルはそれほど高くはないが、それぞれがそれぞれの役割に特化しているので想定以上の戦力になっている。

 例えば時矢。

 カゲトキのキャラはSTR特化のキャラであり、その攻撃力においては同レベル帯においては他の追随を許さない。

 欠点と言えば、その攻撃の命中率が低い……支援や補助等が何もなければ通常の攻撃命中率は10%ほどしかない、そして耐久も非常に低い……スライムに五回触られただけで死ぬという事だ。

 しかしその両方の欠点は後述する二人によって補われている。

 例えばレイナ。

 レイナのキャラはVIT特化のキャラであり、装備も含めた耐久に関しては滅多な事が無い限りHPの半分すらきらないだろうし事実今まできった事が無い。

 欠点はSTRとDEXを全然上げていないため火力としては全然使えないところではあるが、その分タンクとしての能力は申し分ない。

 少し前にヘイトを稼ぐスキル『プロボス』を覚えたので、それで周囲のモンスターを引き付けるのが役割となっている。

 例えば葵。

 葵のキャラはDEX特化のキャラであり、罠の設置が主な仕事でその罠の発動率はDEXに依存するらしいので現状はほぼ100%成功する。

 その罠も対象を足止めしたり動けなくしたり、あるいは状態異常を引き起こすものだったりでレイナの引き受けるMOBの数を減らしたり時矢の攻撃を当たりやすくしたりと補助に一役買っている。

 また弓矢での攻撃もDEXの数値が多少働いているので、雑魚MOBを掃討するのにも役立っている。


「というのが現状っすね」


 お互いの長所と短所を、それぞれの主張によりハッキリさせていく。

 お互いの欠点を補い、長所を補助する事でこの三人のPTは同じレベル帯のPTが狩れる難易度より上の難易度のフィールドで狩れている。

 しかし時矢には少しばかりの不満があった。

 今時矢の基本攻撃は手裏剣による投擲だが、ゲームを始めた当初は剣による攻撃でMOBをバッタバッタと切り倒したかったのだ。

 今でも普通に狩れているから問題無いとはいえ、そこが時矢にとっては不満だった。

 しかし時矢の弱点の一つが耐久性であり、それこそ前途した通りスライムに喧嘩を売るだけでも命がけだ。

 葵の罠で動けないようにしたら問題無いのだが、それはどうなのだろうか。

 それを時矢が葵に聞くと。


「まあ、乱戦とかどれが一番強いかが分からないとかの場合だと無理っすけど、明らかに強いと分かってる奴や相手が単体ならそれに目掛けてそういった罠を張ればいいから大丈夫っすよ。その場合はアタシが口頭で言うんでお願いします」


 だとしたら時矢にとっては願ったり叶ったりだ。

 そして時矢にとって、試してみたい事があった。

 それは自分の攻撃力がどこまで通用するか、だ。


「ネット上の攻略掲示板を見てみたら、砂漠フィールドに防御、defと略されてるけどその数値の高いモンスターが出没するらしい。一度そいつらに俺の攻撃力が通用するかどうか試してみたいんだ。いいかな」


「はい、分かりました」


「アタシもいいっすよ。掲示板を見る限りそこは初心者にとって結構キツい場所らしいっすからね。そこでも狩れるとしたら、アタシ達は三人でなら初心者レベルの戦力を超えてるって事っすから、試してはみたいっすね」


 二人の同意を貰ったので、早速時矢達は裁くフィールドに向かう事にした。

 町で回復アイテム等をある程度簡単に揃え、そして出発。

 途中のフィールドはすでに三人にとっては難所でも何でもなく普通に通過する事ができた。

 そしていよいよ砂漠フィールド。


「私が先頭を歩きますので、二人はいつものようについてきてくださいね」


 それに頷く時矢と葵。

 しばらく歩くと、赤い色をしたカニのようなMOBが現れた。

 名前を見ると『砂漠ガニ』となっていた。

 砂漠に現れるから砂漠ガニだろうか。

 単純な名前の付け方だなと思ったのは時矢だけではないはず。

 それはともかく、狩りが始まった。

 いつものようにレイナがスキルでヘイトを稼いで、砂漠ガニがレイナの方に向かったのを見計らって葵が罠を設置する。

 AIは複雑に見えて単純で、進行方向に障害物があればそれを避ける事はあっても罠などの設置物は無視して直進する。

 要するに自分がターゲットとする対象に向けて一直線にしか進まないのだ。

 結果は見るまでもなく、砂漠ガニは罠にかかりその動きは鈍くなった。

 今なら時矢の攻撃でも当たる確率の方が高いだろう。


「じゃ、試しにアタシが撃ってみますね」


 そう言って葵が弓矢で攻撃を仕掛けてみたが、砂漠ガニのHPバーはそれほど減らない。


「さすが砂漠フィールドのモンスターといったところっすね。DEX特化とはいえ多少は攻撃力が依存しているのにあまりダメージは与えられないっすか」


 じゃあ次は俺だとばかりに、今度は時矢が手裏剣を投擲してみた。

 投擲された手裏剣は砂漠ガニに当たり、HITの文字と共に大きな数値が浮かぶ。

 同時に砂漠ガニが消滅した。


「うはー……。STR特化ってここまで凄いっすか。もう並の初心者の攻撃力を余裕で超えてますね」


 葵は呟くが、無理も無い。

 葵の攻撃も決して弱くは無いのだ。

 比較的他のプレイヤーの攻撃力より低いだけで、初心者が普通に狩れるところなら通用するレベルだ。

 時矢のキャラクターの攻撃力が、STR特化故に高いだけなのだ。


「この調子なら大丈夫そうですね。もう少しやってみましょうか」


レイナの提案を二人は否定しなかった。



 しばらく砂漠で狩っていたが、特に問題は無かった。

 大ムカデ、人食いサソリ、そういったモンスターはどれもこれも表面が硬い殻で覆われている見た目で防御力も高かったが、時矢の手裏剣の敵ではなかった。

 ある程度狩ったところで酒場の件、時矢の剣での攻撃も試してみる事にした。

 対象は人食いサソリ。

 人食いサソリを罠にかけ、動けないようにした。

 こういった罠は通常は数秒しか保たないが、どうやらその辺りもDEX依存らしく罠にかかった人食いサソリはそう簡単に罠から脱出できそうになかった。

 動けないのを確認した時矢は腰にぶら下げたままだった剣を鞘から抜き、そして人食いサソリを一閃する。

 罠の重複置きは可能だが重複して罠にかけるのは無理なので動きを止めるものしか使えないが、それでも十分だった。

 動けない人食いサソリを相手に何度も剣を振るう時矢。

 何回か剣を振るったところでやっとHITの文字が出て、その途端人食いサソリは消滅した。


「剣でも普通に倒せるな。砂漠フィールドのモンスターは他のフィールドモンスターと比べて防御が高いらしいから、ここで大丈夫なら他でも大丈夫そうだな」


「みたいっすね。まあ、ちょっと面倒っすけどアタシを仲間に入れてくれた恩もありますし、これからは使えそうな時には動きを止める罠を使いますよ。倒すのに時間がかかりましたからもちろん時と場合によりますがね」


 投擲武器だけではなく最初に買った剣でも通用すると分かった時矢はどこか満足げだった。

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