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01 始まり

何番煎じか分かりませんが、ステータス特化のキャラが主人公のVRMMOものです

※デスゲームものではありません

 この世にはこんな言葉がある。

 『発展した科学は魔法と見分けがつかない』と。

 今この景色を見てる彼も、心の底からそう思っているだろう。


「……まるで現実世界と同じだな。魔法みたいだ」


 頬に当たる風。

 足をくすぐる草。

 空には太陽が昇り、VR世界とは思えないような暑さを感じる。

 周囲は見渡す限りの草原で、風が吹くたびに草原が波を打つ。


「っと、感傷に浸ってる場合じゃないな。さっさとモンスターを探して倒さないと」


 一人つぶやくと、青年は辺りを注意深く見渡しながら前進を始めた。



 これはほんの数十分前。


 VRが珍しいなんて言われたのは過去の話。

 科学は戦争と娯楽によって発展すると言われるが、VR装置もまず導入されたのはゲームだった。

 ゴーグルタイプの機械を頭にセットする事により360度の全方位が見渡せる新システム。

 そのゴーグルタイプがヘルメットタイプになり、そして視覚どころか五感全てを感じられるようになるのも、あくまで年単位であるが時間はかからなかった。

 今ではVRシステムのゲームがあるのは当たり前、他にも色々な分野にVRシステムは展開を見せた。


 影浦(かげうら)時矢(ときや)も友人にすすめられてとあるVR型のゲームを買ったところだった。

 そのゲームは自由性が売りらしく、色々な行動が取れる、様々な職業が取れる、そしてプレイヤーの要望が多ければその多い職業も実装してくれるというものらしかった。

 ゲームを行う間は現実の体は放置になるためベッドに横たわりながら時矢はヘルメットを被った。

 そしてゲームを行う前にヘルメットから流れる音声に従い前準備をし終えると、ゲームの世界にログインした。


『初めまして。私はあなたのキャラメイクのサポートをさせてもらいますサポートシステムです』


 何も無い闇空間のような場所で宙に浮いたような感覚になった後、その声は聞こえた。

 友人から聞いた通り、宇宙空間のような場所で自分のキャラを作るらしい。


『まず初めにあなたの名前と性別を教えてください』


 こう問われ、時矢はどんな名前にしようかと考えた。

 小さい頃にパソコンでオンラインゲームをやった事はあるが、無論リアルネームを使うのは本人次第だがネット上のゲームではご法度、ネットリテラシーに反する。

 数分考えたが、時矢は自分の苗字と名前を略して使う事にした。


「じゃあ、カゲトキで。俺の名前はカゲトキにする。そして性別は男」


『カゲトキ様、ですね。分かりました。次にステータスを振ってください』


 このゲームは基本ステータスが存在するらしい。

 STR:攻撃力等に影響する。

 AGI:相手からの攻撃を回避する時等に影響する。

 VIT:自身のHPヒットポイントに影響する。

 DEX:作業を行う場合の成功率等に影響する。

 INT:MPマジックパワーや魔法の威力に影響する。

 LUK:ランダム要素のある物事に影響する。

 というものらしい。

 時矢はこの時はあまり考えてなかったので、簡単にステータスを振る事にした。


(やっぱりMMRPGと言えばPTプレイ。PTプレイと言えば特化型だろ!)


 そしてどんな特化型にするかはすでに決めていた。

 攻撃は最大の防御。

 という事でステータスポイントを全部STRに振る事にした。


『ステータスポイントの消失を確認しました。これでいいですか?』


「はい」


 最初から決めていた事なので、問答無用で肯定を取った。

 この後も色々細かい事をナビの音声に従って決めて、そして最後。


『カゲトキ様。いよいよこれからあなたもこの世界の住人です。ゆっくりとお楽しみくださいませ』


 この音声が終わると同時に、時矢の目の前が光に溢れ……。



 光が眩しくて顔を腕で隠していたが、それも収まったようなので腕をどけてみると、そこは別世界だった。

 空を飛ぶ竜。

 古めかしい建築物でできた町並み。

 漫画やアニメの中でしか見た事の無いような服や鎧を着て歩く人達。


「うお、スッゲー!」


 時矢は思わず声を上げたが、その声に周囲にいた人々が何事かと振り向いた。

 が、すぐにそれらの視線は時矢から離れた。


「あー……やっちまった。はずかしー……」


 現実世界のように顔が熱くなるような感覚を覚えたのは気のせいか、それともそこまで現実世界との繋がりを共有しているのか。

 ともかく、時矢はこの瞬間このゲームの住人の一人となった。


 ゲームの世界にログインした時矢。

 彼がまず求めたのは武器だった。

 攻撃特化のキャラメイクにした以上、何より優先されるのは攻撃力。

 そして攻撃力を確かなものにするのに必要なのは強力な武器。

 チュートリアルで受けた説明通りに視界の左端を指でなぞると、ステータスの下に色々な項目が出た。

 基本となる現在の所持金、そして所持品を見る項目、スキルを見る項目、他にも色々な項目があった。

 その中で装備の欄を見ると……。


体:冒険者の服


 これだけだった。

 装備品について詳しい説明を見てみると、『冒険者となった者の初期装備。最低限の防御力を備えている』

 という事らしい。


「……まあ、始めたてならこんなもんか」


 次に所持金を見ると、多いのか少ないのか分からない桁の数字が並んでいた。

 ちなみにこの世界での通貨の単位はG、おそらくゴールドの事だろう、その一文字が数字の羅列の後についていた。


「所持金はこれだけか。とりあえずこれで武器を買うか」


 そうと決めた時矢は、武器屋らしい場所を目指して歩く事にした。



 しばらく歩くと、町の特徴がだんだん分かってきた。

 途中にあった町の説明が書いてある看板を読んでみると、ここは始まりの町というらしい。

 書いてある事を要約すると、ゲームを始めたプレイヤーが最初にログインする場所で、初心者に必要だと思えるものが大体は置いてあるらしい。

 そして町の様子。

 歩いているキャラはもちろん、道具や食べ物を売っている店のキャラですらもNPCとは思えない会話をしていた。

 時矢が武器屋を探している事を雑貨屋らしい店の店員に聞いたところ、「お、新人プレイヤーか。武器屋はあっちだよ。初心者用の手ごろな武器を色々置いてるから見てみるといいさ。まあ、がんばりな」という人間らしい応援すらされた。

 もちろんNPCらしいキャラもいたが、それらは基本的に同じ会話しか繰り返さなかった。

 まあ当たり前ではあるが。


 案内された武器屋を目指して歩いていくと、目的の武器屋らしい店についた。

 屋根には剣のマークを木のような材料で形作っている目印もあった。


(ここかな……)


 と心の中でつぶやきながら、時矢は店の中に入った。

 すると彼の姿を見た店員が声をかけてきた。


「いらっしゃい! その格好を見るとログインしたばかりのプレイヤーかな? 色々置いてるから見てみるといいよ。もし良ければ要望に合った武器を見繕うけど、どうする?」


 そう言われ、時矢は悩んだ。

 攻撃特化というのは最初から決めていた。

 しかし、どんな武器を扱うかはまだ決めていない。

 少し悩んだが、結果時矢は剣にする事にした。

 一番扱いやすく、そしてスタンダードな武器だと思ったからだ。


「じゃあ、剣で一番攻撃力の高いのを。予算はこれくらいかな」


 所持しているGを述べると、店員は剣を並べている辺りに視線を移す。


「そうだな……。この中で一番攻撃力が高い奴だと……これだな」


 と、一本の剣を壁から外した。

 どれも似たような形だが、店員がそう言うのならそうなのだろう、そう時矢は思う事にした。


「これだと町の周辺にいる奴なら2、3発程度でやっつけられるはずだ。頑張って稼ぎなよ!」


「どうも、ありがと」


 Gと剣のやり取りを行い、時矢は念願の剣を手に入れた。

 すぐに装備をすると、装備欄の表示が切り替わった。


両手:剣


 説明を見てみると『普通の剣。並のモンスターならこれで戦う事ができる』

 と表示が出た。


「両手剣か……」


 できれば片手剣にしてもう片方にも何かを持てるようにしたかった時矢だったが、相手に何かをされる前に倒せばいいと判断した。


 武器屋を出た時矢は早速町の外の草原フィールドに向かう事にした。

 できれば防具等も揃えたかったが、剣に今の全財産をつぎ込んでしまった。

 しかし時矢の頭にはこの考えしか無かった。

 『攻撃を受ける前に倒せばいいだろ』と。

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