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でんでん太鼓(2)


"でんでん太鼓"はもう子供たちには遊ばれなくなりましたが、古くからの玩具のひとつとして今も作られています。

B君はこの"でんでん太鼓"を明治の頃から作っている会社に高校を卒業して就職しました。そして"でんでん太鼓"の音や太鼓の横に二本付けられている玉がついた赤い紐が好きでした。


B君は工場では赤い紐と玉を太鼓に取り付ける作業をしており、いつかは"でんでん太鼓"すべてを作りたいと胸を踊らせていました。出来上がりを見た大将からもよく出来たよと誉められることもしょっちゅうです。


B君は久しぶりの休みで町に一人で遊びに出かけました。これという目的もなく歩いていると、高校の時の同級生にばったりと出会いました。同級生は懐かしそうに、B君に近寄って来ました。そして、B君に「君は、今どんな仕事をしているんだい」と聞きました。B君は「今、明治から続いている会社で"でんでん太鼓"を作っているんだ。でも、今はまだ、"でんでん太鼓"の太鼓の横に二本の玉がついた赤い紐を付けるだけなんだけどね。」B君は胸を張って同級生に答えました。同級生は「そうかい、頑張っているんだね」と言って向こうに行きました。B君は同級生と別れたあと、賑やかな色とりどりの町を気持ちはよく歩いていました。


気持ちよく歩いていると向こうから3才位の子供を連れたおばあさんが歩いて来ました。ちょうどB君の前に来たところで、今までおとなしく歩いていた子供が「もう歩きたくない」とぐずりだしました。ぐずりだした子供に困り果てたおばあさんは、B君の横で立ち止まり、おもわぬ物を自分のカバンの中から取り出しました。それは、赤い紐に玉がついた"でんでん太鼓"でした。間違いなくB君が取り付けた"でんでん太鼓"でした。


おばあさんは"でんでん太鼓"をぐずっている子供の顔に近づけて

"でんでん太鼓鼓"を上手に振りました。"でんでん太鼓"はとてもいい音で鳴りました。


今までぐずっていた子供は"でんでん太鼓"を手に取りしばらくじっと見ていました。でもすぐに飽きてしまったのかポイと横に捨ててしまいました。おばあさんは慌てて"でんでん太鼓"を拾い上げ、土で汚れた太鼓の皮を丁寧に拭きました。


「こんな玩具、おもしろくないよ、ゲームはないの、太鼓が鳴るだけなんて楽しくもなんともないや」子供はおばあさんに向かって言い放ちました。おばあさんは悲しそうな顔をして"でんでん太鼓"を元のカバンに戻してしまいました。


おばあさんは横で見ていたB君に気づき、「最近の子供は、昔の玩具には見向きもしないんですよ、ゲーム、ゲームなんです」と言って向こうに行ってしまいました。


B君は今まで気持ち良かった気分が落ち込んでいくのを感じました。そして「"でんでん太鼓"はもう子供たちを楽しませることはできないのか、ぼくの"でんでん太鼓"はなくなっちゃうのかな」と淋しくなってしまいました。


もう、違う物を作ったほうがいいのかも知れないな。B君はとぼとぼと歩き出しました。今まで色とりどりだった町がどんよりとした色にB君には見えるのでした。


遠くから、ピコピコ、バキューン、バババババというゲームの音が聞こえてきました。その音は、B君の心をいっそう傷つけるのでした。


空の上、そのまた上の天空に、"でんでん太鼓"を作るA君とB君を見つめる二人の神様がいました。一人はまだ経験が浅い若い神様、もう一人は若い神様の先生でした。

「先生、どうしてこの二人に正反対の出来事を与えるのですか?」若い神様は不満げに先生の神様に聞きました。


「さあ、どうしてだろうね、君には正反対の別々の出来事に見えるんだね」先生神様は不思議そうに若い神様に言いました。


「そうだと思います、違うのですか?」


「そうだな、やる気を出したA君にもこのB君のような出来事が、起こるかも知れないね、B君だってやる気を起こすA君のような出来事か起こるかもしれないよ」


「先生は、彼らにそれを与えるのですか?」若い神様は問いかけました。


「いずれ与えることになるだろうね。この、二つの出来事を受けることが、人間を成長させるには必要なんだよ。人間というのは面白いね」先生の神様はそう答えました。


二人の神様はずっとずっと下にある地球をながめました。そこには人間が住む地球が"青いきれいな輝き"を放ち続けていました。


終わり





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