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プルルル…
「もしもし」
無感情な女の声。
「話したいことがあるの。会って…」
私はゆっくり言った。
「いいわ。私の家に来る?」
少し冷徹さを増して女が言う。
「うん」
「えっと…私の家分かる?住所は…」
女言った住所を私はメモした。
ここからなら30分程度だ。
ピンポーン。
私は女の家のチャイムを鳴らす。
「いらっしゃい小西さん」
「あら、どうしてそう呼ぶの?」
私は少し眉をひそめて聞く。
「名前で呼ぶのは人前だけよ」
電話の時にも増して、女は冷酷に言った。
「じゃあ私も藤崎さんと呼ぶわ」
私も同じくらい冷酷に言った。
「そう。とりあえず上がって」
藤崎はそう言うと、おそらく自室があるであろう2階に上がった。
「私の部屋よ」
藤崎は無感情にそう言った。
部屋は割と片付いている。
「ところで話したいことって?」
藤崎はあくまで無感情に話す。
「連続殺人事件の犯人が分かったわ」
私は探偵にでもなったつもりで言う。
「誰?」
藤崎は私をまっすぐ見つめながら言った。
「私よ」
私がそう言い放つと、藤崎の眉が僅かに歪んだ。
私はそれを見逃さなかった。
「どうして…?」
不安じみた声で藤崎は言った。
私は少し口元を綻ばせながら言う。
「私はこれからあなたを殺すわ。これで悪魔の連続猟奇殺人事件は終止符を迎えるわ」
翌日、校庭で藤崎の遺体が発見された。
四肢を切断され、胴体はなかった。
藤崎の右目の下には油性ペンで霊、さらに左目の上には写の文字が書かれていた。
目から血の涙を流している。
両目がえぐられ、左右が入れ替えられていた。
犯人が何故そうしたかは分からなかったが、あるテレビ番組のコメンテーターがそれを推理した。
写と霊の文字からして、心霊写真ではないか、それなら右目が心、左目が真という字に対応する。それを入れ替えていたのなら、左右で真心という字になると。
藤崎の遺体の傍らに落ちていた
「ライ麦畑でつかまえて」という本の最後に角ばった文字で
「あなたに貸すつもりだった」と書かれていた。
犯人は筆跡鑑定で特定されないようにしたのだろう。
そして、指紋も全く残っていなかった。
この事件の犯人は結局分からず、迷宮入りとなった。




