表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真霊写心  作者: PN
3/7

私はいつも通り、朝ごはんを食べながらニュース番組を見ていた。

正面には父親がタバコを吸いながら新聞を読んでいる。

殺人事件があったらしい。

被害者はなんと私の通っている高校の生徒だった。

「ユウキくん…!」

私の思っていたことが声になって現れた。

「どうしたんだ?」

父親がそう言うと私の方をチラッと見て、それから目線をテレビの方に向けた。

「お前の高校の生徒か。もしかして友達か?」

私は首を縦に振った。

その時、涙がテーブルに落ちて、初めて自分が泣いていることを知った。

遺体が発見されたのは高校の近くの公園で、そこにある大きな木に足を伸ばして座り、もたれかかって死んでいた。

心臓を包丁の様なもので数回刺された跡があり、両腕の肘から先は切断され、まだ見つかっていないそうだ。

腕の切断部分は斧で切り落とした様な跡ではなく、刃物で肉の部分を切り、骨は糸ノコギリで切断された様な跡だったので、犯人は女性の可能性もあると報道された。

「猟奇殺人事件か…犯人はまだ捕まっていないから、学校が終わったらすぐに友達と一緒に帰りなさい」

父親が言った。

所詮他人事なようで、学校を休めと言われると思ったが、杞憂だった。


私が教室に着くと、教室は不穏な空気で包まれていた。

「ニュース…見た?」

タツヒコがギリギリ聞こえるくらいの乏しい声で聞いてきた。

「うん…ユウキくん…」

それだけで十分会話は成立したようで、タツヒコはまるで足に重りのようなものがついているかのように、引きずりながら席に戻って行った。

何処からか視線を感じたので探した。

マキだった。

じっと私とタツヒコのやりとりを見ていたらしい。

「マキちゃんもニュース見た?」

私は近づいて聞いてみた。

「見たよ。ユウキくん、写真の通りになったね」

マキの眼は輝きを失った漆黒のガラス玉の様な眼をしていた。

「やっぱりあの写真、お祓いした方がいいよね?」

私の問いには答えず、マキは眼の色を変えず、じっと私の方を見つめていた。

「あの写真を撮らなかったら、ユウキくんは殺されなかったのかな?」

突然、マキは言った。

「きっと幽霊か何かの仕業だよ。だって、腕が切られるなんておかしいよ」

私は非現実的なことだと分かっていながら、マキにそう説明した。

マキはまた無言になった。


ユウキが殺されてから2日が経った。

犯人はまだ逮捕されていない。

タツヒコはどうにか登校してきてはいるが、精神的にかなり追い詰められていた。

写真の話は私達3人以外誰も知らないし、お祓いもしていない。

事件以来私達は口数が減った。

このまま高校を卒業するのだろうかと考えたが、そんなことはもうどうでもよかった。

ハチ公前で撮影した写真を見る。

タツヒコは笑っている。

もうこの笑顔を見ることは出来ないのかと考えた。

次の日、事件は起きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ