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真霊写心  作者: PN
2/7

「人が沢山いるね」

サオリが八重歯を覗かせて、満面の笑みで言う。

私たちは休日を利用して、遊びに来ていた。

「オイオイ、あんまりはしゃぐなよ。ガキだと思われるだろ」

ユウキがいかにもやれやれといった感じで言う。

「別にいいじゃん」

タツヒコが水を差す。

「んだと〜。マキもガキだと思われたくないよな?」

ユウキの問いに対して私は

「まぁいいじゃん」と、素っ気なく返した。

一見、男女2人ずつでダブルデートの様に見えるが、そうではない。

只の仲良しのクラスメートなのだ。

次の日曜日にどこか遊びに行こうよと最初に言ったのはサオリだった。

流行に興味があるらしく、サオリはいつもファッション雑誌を見ていた。

一方私は、今時の女子高生らしくはなく、そういったものには大して興味はなかった。

しかし、親友であるサオリの誘いを断る理由もなく、私たちは今渋谷に来ていた。


サオリは美人だ。

私とは違い、友達も多い。

しかし、近寄りがたいオーラがあるようで、あまり男子が話しかけに行くことはない。

ユウキとタツヒコは中学時代からの友達で、休憩時間はいつも話しあっていた。

ユウキ達とサオリが仲良くなった訳は、彼らがペットの話題をしていた時だ。

以前、サオリが私に教えてくれた。

サオリは欲しいものは必ず手に入れる主義のようで、テレビで紹介されていた犬を気に入り、翌日に買いに行ったこともあるそうだ。

その為、ユウキ達がペットの話題をしている時に、輪に入っていき、仲がよくなったのだ。

それ以来、3人で話をすることは増えたが、サオリが彼女の女友達と話している時は、ユウキ達はその輪には入らず、2人で話をする。

だから、3人で話をする時は、それ以上にはならなかった。


私とサオリが仲良くなったのは、ある日の休み時間だった。

私が文庫本を読んでいる時にサオリが話しかけに来た。

ユウキとタツヒコはテレビゲームの話をしていたようで、話が分からずそれとなく輪から抜けたそうだ。

「それ、どんな本?」

「…恋愛小説」

恋愛小説などではなかった。

本当のことを言ってしまうと、会話が続かないと思ったからだ。

「ねぇ、あなたのことマキちゃんって呼んでもいい?」

突然だったので、驚いた。

私は高校生活で友達が出来るとは思っていなかったからだ。

もっとも、そう言われただけで友達扱いするのは図々しい話だが、私の中ではもはやサオリは友達となった。

「…うん」

私は恥ずかしさを悟られないように答えた。

「私はサオリ。いつか本貸してね」

そう言われるとチャイムが鳴り、返事が出来ないままサオリは自分の席に戻って行った。


私達は渋谷の109に来ていた。サオリは楽しそうに服を見ている。

私はあまり興味がなかったので、適当に服と値札を見ていた。

もちろん、買うつもりなど毛頭ない。

「これとこれ、どっちがいいかな?」

サオリが私達に聞く。

「そっちのピンクの方かな?」

109に用があるのはサオリだけのようで、さっさと別の所に行きたいのか、ユウキが即答する。

「マキちゃんはどう思う?」

私に聞いても何の参考にもならないのにと思いつつ

「私もピンクの方が可愛いと思うよ」と言った。

ふと気づくとタツヒコが私達を見ていた。

私達の考えを見透かしていたようで、疲れた顔で微笑んだ。


サオリはピンクのTシャツを買った。

私にはそのシャツにそれだけのお金を出す勇気はないと思った。

私たちは109を出て喋りながらブラブラしていた。

夏の日差しがいやに眩しく、それでいて暑い。

私は鞄から小さいペットボトルのお茶を出して飲む。

気付けばハチ公前まで来ていた。

「そうだ。写真撮ろうよ。私デジカメ持って来たんだ」

サオリが嬉しそうに言う。

私をハチ公の丁度正面に立たせ、右にはユウキ、左にタツヒコを並ばせ、写真を撮るために下がった。

私はペットボトルのお茶をどうしようか少し考え、とりあえずハチ公の前足の間に置いた。

ピピッと電子音が鳴る。

いいのが撮れたよとサオリが言って、ユウキとタツヒコがダルそうに見に行く。

私もハチ公の前に置いていたペットボトルを取り、鞄に入れながらサオリ達に駆け寄る。

「明日プリントして持って行くよ」

そう言うとデジカメを黄色い鞄に入れ、ユウキとタツヒコは待てをされた犬の様にしぶしぶ納得した。


次の日の休み時間、ユウキは昨日のハチ公前で撮った写真の件をサオリに聞いていた。

「変なのが撮れてたの。撮った時は何ともないと思ったんだけど…だから見ない方がいいわ」

サオリは浮かない顔で言った。

私は恐怖よりも興味の方が勝った。

「もしかして心霊写真?」

ユウキが半笑いでサオリに聞く。

サオリは静かに頷いた。

「そんなの大したことないよ。写真持って来てるんでしょ?見せてよ」

タツヒコがそう言うと、断り続けても無駄だと悟ったのか、サオリは1枚の写真をポケットから出した。

私達は息を飲んだ。

最初に目に入ったのは、中央にいた私だ。

首から上がなく、ハチ公の全身が写っている。

私の顔が写っていたなら、全身は写ることはなく、足の部分は隠れるだろう。

私の向かって左側に写っているユウキは、肘から先が消えていた。

そして、向かって右側に写っているタツヒコの膝から下が消えていた。

「デジカメの調子が悪かったんだろ」

そんな訳がないと自分でも分かっていたようだが、ユウキはそう言うしかなかった。

タツヒコの顔は少しひきつっている。

この程度の画像加工なら、知識があれば出来そうだが、サオリがそんなことをする人間じゃないと思ったのか、ユウキとタツヒコはサオリを咎めたりはしなかった。


2人の想像を遥かに越えていたようで、ユウキとタツヒコの口数は明らかに減った。

「やっぱり、見せない方がよかったね」

サオリが泣きそうな顔で言った。

「大したことないって。なぁタツヒコ」ユウキがタツヒコに半ば助けを求める様に言った。

タツヒコは

「うん…」とだけ言って、自分の席に戻って行った。

チャイムはまだ鳴っていなかったが、誰もタツヒコを止めたりはしなかった。

「お祓いとかした方がいいよね?」

サオリが再び泣きそうな顔で言う。

「何?ビビってんの?何もないから心配すんなって」

そう言ったユウキ方がビビっているようだった。

なにせ、自分は被害者なのだ。

写真を撮らなかったサオリを羨ましく思っていただろう。

しかし、私は何も言わなかった。

私はむしろ、これから何が起こるのか少し楽しみでもあった。

その部分では、私は他人と比べて異常だった。

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