神の愛し子の死~その召喚に正義はなかった 編~
続きません。
それぞれの世界に、その世界の管理者などいない。
あるのは、それぞれの神が持っている祝福を必要に応じて分け与えるだけだ。
神は人の世界に干渉しない代わりに、人々を愛し見守る。
人々の暮らす世界が、平和であれと。
神は、万能ではない。
時に、間違いを起こす。
神の中に、大惨事を引き起こしかねない間違いを犯した者がいたのだ。
その神は、『魅了の祝福を持つ神』。
奴が起こした惨事は、やがて神界や人間界に影響を及ぼす。
いや、すでに冥府の世界に被害が出ている。
冥府の神は、寝る間も惜しんで事態の収拾をしているらしい。
そして、神界やとある人間界に冥府の世界からの大惨事の影響が出てきた時。
この大惨事は、神力の影響の及ばぬものとなった。
神の力では、どうにもできない。
神々が絶望した時に、一人の少女が現れた。
その少女は、とある人間界の教会に勤めるシスター。
私たちを敬い、愛し、祈りを捧げる敬虔な少女。
その少女は言った。
私が原因の地に向かい祈りを捧げると。
少女は、祈りで災厄を浄化できる能力の持主。
少女はその地に向かい、祈りで大惨事の元の浄化した。
全力を出し切った少女は、亡くなった。
私を含めた神々は少女の死を悲しみ、今度こそ幸せな人生をと転生させ、その少女の魂を持つ少女は、『神の愛し子』としてとある人間界に生まれた。
この時に最悪なのは、魅了の祝福を持つ神だけは、少女に対して早く終わらせないかと愚痴を言い、欠伸をしてつまらなそうに見ていた。
他の神々は、少女に対して申し訳なさいっぱいであるというのに!
アイツは私の手で100万回、殺したい!
異世界から勇者を召喚して、魔王を打ち倒すというものがあるだろう。
とある人間界も、そうして平和を保っている。
『勇者召喚』と言えば聞こえもいいが、実際やっていることは異世界の無知な少女の拉致である。
異世界から召喚される少女は、総じてその世界にとって都合のいい頭の緩い少女ばかりである。
自分を誘拐した誘拐犯の都合のいい、言い分だけを信じ魔王を打ち倒そうとする。
普通なら、『なぜ、この世界の人間は魔王を倒せないのか?』と疑問に思うだろう。
そもそも、とある人間界の『魔王』とは、とある人間界の人間だからこそその世界の人間が躊躇って殺すことができない。
だから、異世界から少女を拉致して殺させようというものだ。
すべての理由さえ疑問に思わず、知ろうとさえしなければ、この世界の人間である魔王を悪者として殺せる。
そう言ったところだろう。
とある人間界での『魔王』の作り方は、その世界の人間を寄り代にする。
そして、寄り代とされた人間にその世界が創り出して溜まった悪い瘴気を無理やり吸い込ませる。
そして出来上がったものを、『魔王』と呼ぶ。
とある人間界は、一人の罪なき人間を犠牲にして平和を保っているというわけだ。
その行為に非難をしたいが、神である私がどうこうできるものではない。
神の愛し子が転生した、とある人間界。
その娘が、美しく成長した日にそのとある人間界は『異世界召喚』を行った。
やはりというかなんというか、異世界から拉致された少女は無知で何も知ろうとしなかった。
ただ、その拉致された少女は魅了の祝福を持つ神が、その拉致少女のためだけに強力な加護を与えた。
それこそが、すべての間違いだった。
この時に、魅了の祝福を持つ神の力をすべて取りあげていれば!
拉致少女は、都合がいいとしか言いようのないくらい頭が緩かった。
隣に、見目麗しい男たちを置いておけば、面白いように魔王を殺す旅を早く進める。
見目麗しい男たちにいいところを見せたいからだろう。
そして、歴代の拉致少女の誰よりも早く魔王を殺した。
『魔王』の真実を知らないままに。
頭が緩すぎる拉致少女は、魔王を殺した褒美に元の世界に戻るのではなく、一緒に旅をした見目麗しい男たちを自分の物にすることでこのとある人間界に留まることを選んだ。
彼らにとっては、本当に都合のいい展開だ。
拉致少女と一緒に旅した見目麗しい男たちは、彼女の魅了の祝福に魅了されていから、お互いに得られるものがあるということでこれはこれでいいのだろう。
私には理解できないし、理解しようと思わないが。
そんなある日、事件が起こった。
頭の緩い拉致少女は見目麗しい男たちを侍らせてから、神の愛し子である少女が自分以上に美少女だと知ったらしく、いつか殺してやろうと思ったらしい。
その日はちょうど、魅了の祝福を持つ神が大問題を起こし、神の愛し子を神々は見守れなかった。
それを狙ったかのように、拉致少女は魅了の祝福を最大限に発揮し、神の愛し子を謂われなき罪で処刑した。
魅了の祝福を持つ神は自分の加護を与えた少女が幸せになって上機嫌だが、それ以外の神々は嘆き悲しんだ。
神々のために犠牲になった少女だからこそ、今度こそ幸せになって欲しいと望んだはずなのに。
魅了の祝福を持つ神は、勘違いをしている。
神々(魅了の祝福を持つ神以外)の力を使って転生させた少女だから、自分が殺生与奪権を持つと。
人間の命はそんな小さな価値のものではない!
神だからと言って、人間の命を粗末にしてはいけないのだ!
拉致少女が魅了の祝福を使って、神の愛し子を殺したことに冥府の世界の神は人間の住む世界すべてに影響が出るくらい激怒した。
冥府の世界の神の怒りが頂点になる前に手を打つべく、魅了の祝福を持つ神を絶対に破ることのできない強固な牢に閉じ込め、魅了の祝福を体の隅々からすべて絞り上げた。
そしてその日のうちに、神々は神の愛し子を殺したとある人間界を神々からの祝福をしなくなった。
近いうちに、とある人間界は滅びるだろう。
贖えない罪を犯したのだから、当然の報いだ。
神々の祝福を無くしたとある人間界に、神々は呼び出された。
私は、この地に祝福をしなかった経緯、その原因は拉致少女と取巻きとなった見目麗しい男たち、そしてそれに賛同した者たちの犯した過ちだと伝えた。
そして、拉致少女と見目麗しい男たちを殺すことを禁ずることを命じた。
神の愛し子は最期に、神々に願った。
「あの者たちを簡単な生温い死で終わらせないで」と。
怒り狂っていた冥府の世界の神も、神の愛し子の願いなら仕方ないと聞き入れた。
拉致少女と見目麗しい男たちが犯した罪が、このとある人間界からウワサとして薄まった時に、拉致少女を元魅了の祝福を持つ神の前で処刑した。
元魅了の祝福を持つ神は、拉致少女が処刑される時になぜ悪いのかと喚き散らした。
それを見ていた神々は、不快そうに眉根を寄せた。
元魅了の祝福を持つ神は、自分の犯した罪を自覚ぜずに反省もしない。
この時に、強力な魅了の祝福を持つ拉致少女の処遇が決定した。
拉致少女は、魅了の祝福が強力すぎて何度でも転生するのだ。
その度に、何度でも処刑しよう。
神々は人間と違って、悠久の時を生きる。
その分、神々の気は長いのだ。
例え、魅了の祝福がどんなに強力でも私たちと根競べしようものなら愚かなことだ。
やがて、拉致少女は次の世界に転生した。
拉致少女はスクスクと問題なく成長する。
その様子を見る元魅了の祝福を持つ神は、他の神々が拉致少女が転生したことに気付いてないと思い込み、ほくそ笑んだ。
だが、甘い。
神々が、忌々しい強力な魅了の祝福を持つ拉致少女の転生体に気付かぬはずがない。
どんな些細な予兆であろうと見逃すはずがない。
拉致少女が程よく成長した頃に神々の住む世界に連れ去り、贖いきれぬ罪を犯した前世を思い出させ、元魅了の祝福を持つ神の目の前で再び処刑した。
元魅了の祝福を持つ神は、何か喚き叫ぶがそれで神の愛し子を殺した罪が軽くなるわけでも無くなるわけでもない。
これは、何度となく来り返される。
神であろうと、贖いきれぬ罪を犯したなら許されるはずはないし、ましてや簡単に死を選べるわけではないのだ。
読んでくださって、ありがとうございました。




