episode 2 来海結衣とおまじない
2018.04.04 プロローグの中身を一部変更。
市立六合高等学校ーー僕の通う学校だ。二年も通っていれば愛着だって湧くし数少ない自分の場所だと言う認識だってあるが、月に一回土曜日の大掃除だけは面倒くさいことこの上ない。
当番制で回っているため三月に一回ほどだが誰もサボらずに休日返上で登校しているのは真面目な校風が生徒にも浸透している証拠だろうか。
「また来週と言ったのに会っちゃったわね」
登校して最初に見た顔は来海さんだった。
「来海さんは当番じゃないのにどうしたの?」
「生徒会の仕事よ。二ヶ月後には体育会でしょ。その会議よ」
六合高校では七月に体育会がある。他校と日程が被らないようにという配慮らしいが一学期のしかもテストの直前にやるのはどうかと思う。
「そういえばあのおまじない試した?」
「おまじない?」
「そう、今流行っているおまじない。」
神様・幽霊・怪物・UFO、前世、占いも信じていない自分がおまじないを試すわけがないが、学校でそんなものが流行っているとは初耳だ。
「初耳だしそう言うの信じてないって知っているだろ?」
「魔法みたいな目を持っているくせによく言うわね。もしかして、と思っただけよ」
ムッとして来海さんを見るがそんな視線には気づかず話を続ける。
「髪の毛を五本使うんだけど、願い事を呟きながら一本づつ土に埋める、風に流す、川に流す、火で燃やす、最後に飲みこむと願いが叶うんだって」
「最後は飲むんだ」
「うん、そう。噂は知ってたけど昨日友達から願いが叶ったってメールが来たから藍里くんも知ってるかなと思って」
「残念だけど初耳だよ。来海さん試したの?」
「試してない。自分の願いは自分の力で叶える主義だから」
オカルトを信じない実践しないの2人では不毛すぎる話題だ。
なぜ来海さんがこの話をし出したのか分からない。
「ただ、おまじないを試したその友達の様子がね昨日からおかしくて、興味というか疑問があって」
「おかしい?」
「メールで様子がおかしいって感じただけだから気のせいかもしれないけど、すごく積極的になったというか、元々控えめな性格だったのに考えられないくらいその……」
「明るくなった?」
「そう! それも元が暗いってわけじゃないんだけど」
「願いが叶って舞い上がってるとかじゃなの? その子のお願いはなんだったの?」
「それが教えてくれなくて、月曜日に教えてくれたら良いんだけど……」
世話好きな彼女らしく、引っ掛かることがあると他人のことでも思い悩んでしまう。
「じゃあ僕の方でも調べておくよ」
「本当に? ありがとう! じゃあ月曜日にお互いの調査報告ということで!」
「了解」
協力を申し出ると彼女の顔がパッと明るくなった。
いつも声をかけてくれる来海さんには感謝もしてる。これくらいの安請け合いしても問題ない。
「じゃあ、またね私は生徒会室に行くから。本当にありがとう」
相当面倒なことを請け負ってしまったが笑顔で去って行く彼女を見ているとネガティブな気には全くならない。むしろ大掃除の方が面倒と言う気すらある。
そろそろ当番の生徒が登校して来たのかザワザワと話し声が聞こえてきた。
はあ、と一息ため息をつく。
担当の場所に向かい今後のことを考えることにしよう。
2018.04.04 プロローグの中身を一部変更。