表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

episode 1 藍里祐一と幼馴染み

2018.04.04 プロローグの中身を一部変更。

 「ねえねえ藍里(あいさと)くん起きてる? 下校の時間だよ!起きないと!」


 ぐらぐらゆさゆさと揺さぶられなが自分を起こす声が聞こえる。

 「藍里くん!学校閉まっちゃうよ!」

 これ以上揺さぶられると気分が悪くなりそうなので、返事をしながら体を起こす。

 「ん、おはよう来海(くるみ)さん」

 長い黒髪を揺らしながら目の前にいたのは生徒会副会長でクラスメイトの来海結衣くるみゆいだ。

 「『ん、おはよう』じゃないよ。生徒会の仕事が終わってから戻ってみればまだ寝てるんだもん。びっくりだよ」

 ぷんすか起こってはいるが世話焼きな来海さんは「仕方がないなあ」という感じで会話を続ける。

 「教室の鍵閉めちゃうから早く出てよね」

 「そんな時間か……ごめんね、すぐ出るよ」


 立ち上がって押されるように教室から出ると来海さんはガチャガチャと鍵を閉める。教室の施錠は生徒の仕事なのだろうかと考えていると再び来海さんから声が掛かる。


 「藍里くんもう帰るでしょ? 良ければ一緒に帰らない?」

 「良いよ。この後何もないし」


 お互い歩いて二十分ばかりのところに家がある。一緒に帰るのも初めてではない。むしろ近所に住んでいることもあってか頻繁に一緒に帰っている。

 

 十年前に起こった集団消失事件に巻き込まれ、自分一人を残して家族全員が消えてしまった。当時7歳だった藍里祐一(あいさとゆういち)はすぐに親戚に引き取られ育てられたので生活面で苦労することは少なかったが、すぐに転校した学校での生活に馴染めたのは世話焼きな来海が近所に住んでいてくれたおかげだろう。


 かれこれ十年の付き合いと考えると幼馴染と言っても過言ではないだろう。

 

 帰り道の途中、もう昔の思い出になりつつある家族のことや今までのことを考えていると、来海からふと思い出したように話を始めた。


 「そういえば藍里くん、この前中井くんに見せてたマジック私に見せてよ」

ちなみに中井というのは友人の一人のことで、高校に入ってからの付き合いだ。

 「いいけど別にトリックがある訳じゃないよ。目が良いだけのどうしようも無い特技だから」

 「良いの良いの目の前で見たいだけだから」 

 

 本当に何でもない特技。相手が投げたコインが表か裏か当てるだけ。


 ただ、それがコイントスの要領で人間の動体視力では絶対(・・)に追えない速度でコインが回転してたとしても当てられるというもの。


 「じゃあコインを投げてよ。あ、キャッチの瞬間までは隠さずに投げてよ」

 「はいはい、じゃあいくよ!」

 来海さんの右の親指から真上にクルクルとコインが回転しながら上がる。

 「裏」

 「すごい! 正解! もう一回いくよ」

 先ほどと同じように綺麗に真上に上がったコインはスッと左手の甲の上でキャッチされる。

 「表」

 「正解! 本当にトリックじゃないなら相当目が良いのね。この前の視力検査どうだったの?」

 視力検査の視力と動体視力は違うような気もするが何も言わずに答える。

 「2.0以外は取ったことない。それ以上は学校では測れないし」

 視力だけは良い。昔テレビで見たマサイ族の視力12.0で驚かなかったくらいだし動体視力は言わずもがな。

 人に言うのも面倒なので誰にも話していないが。

 「テレビにだって出られるんじゃない」

 「面倒だから誰にも言わないでね」

 本当に。


 その後は視力についての質問が続いたくらいで、何事もなくいつも通り先に来海の家に着いた。

 「じゃあ、藍里くんまた来週学校でね」

 「ん、また来週」


 名残惜しさもなく何事もないままいつも通り。

 一人いそいそと足早に帰宅するのだった。


2018.04.04 プロローグの中身を一部変更。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ