第99話 終わったみたいだね
イリアが手招きした先は塹壕の外であった。
「外か」
「目を撃って見えてないならどこにいたって一緒よ」
「なるほどなら」
効果がないと思われるS2を投げ捨て背負っているS3を抜く、弾は通常弾と当たると爆発する爆裂弾を交互にいれてある。それを撃つ、撃ち続ける。爆裂弾の方は微かではあるが効果がありそうだ。装填した弾を撃ち尽くした頃にまたドワーフ達が群がり斬りつけたり叩きつけたりしだす、その間にS3に弾を込め始める。今度は爆裂弾のみだ。
「そう言えばイリア魔術は」
「何度か撃ってはいるのだけど」
そう言ってイリアは杖を構え、杖の先から光の弾を飛ばす。だがそれは龍に当たることもなく途中で消えた。
「消えた」
「最大級の威力でこれよ」
「つまりイリアには」
「あれに攻撃できないわ、ごめんタナカ」
「いや別に仕方ないよ」
「ありがとう、だからタナカ手伝えることない」
「なら爆裂弾もらってきてくれない、そっちの方が効果ありそう」
「わかったわ、ならこの辺りにいなさいね」
「大丈夫、わかってるよ、けど危なくなったら逃げるけど」
「当たり前よ」
そう言ってイリアはどこかに向かって走っていく。その為に顔を知ってる相手がいなくなり、少し不安にはなってるのだが、気にしている余裕はない弾を込め直したS3をまた龍に向ける。龍はまるで陸にあげられた魚のように大暴れだ。
「狙いにくいな」
そうは呟いてみるが何も変わらない。だが少しずつではあるが龍の動きが鈍くなっていく、もしかしたら弱ってきているのかもしれない。
「弱ってきているぞ後少しだ」
何処かからそんな声が聞こえる。その声が聞こえるとそれに負けじと様々なところから応答の声が聞こえてくる。龍に群がる人が多くなっていく。
「タナカ取ってきたけど」
「ありがとう」
「要らなかったみたいね」
「かもね」
イリアが来て弾を受けとる。だがもう龍は瀕死のようで動きがもうわずかしかない。そしてだれかが叫ぶ。
「とどめを刺したのは俺だ」
その声に反論するかのように誰がとどめを刺したのかと叫び合い始める。だがそこには怒りは特になく喜びだけのようだ。
「終わったみたいだね」
「そうみたい、ね」
「ちょっと銃拾ってくる。」
そう言って気を抜くS3をしまう、そして投げ捨てたS2を拾うために龍の亡骸に背を向けて移動し、S2を拾おうかと手をのば。押される。倒れる。風を切る音がする、何かを叩き付けたような音も。体を起こす。イリアが、いない。さっきまでそこにいたはずなのに。
「イリア」
そんな声が聞こえる、いや自分の声だ。頭が何かを理解したくないためにおかしくなってるのかもしれない。
「イリア、イリア」
何度も、何度も名前を呼ぶ。
「イリ」
衝撃。視界が横に流れていく。そして痛み。横に飛ばされているようだ。まるで高速で走っているトラックにぶつけられたかのように。その時やっと脳が理解する。自分は龍に吹き飛ばされたのだ。だが気づいてもどうしようもない。どうこうする前に地面にぶつかる。痛み、そしてまた横に移動。体が跳ねたようだ。そして何かに体を打ち付け止まる。
「う"っ」
そしてすぐそばに龍の顔がよる。まるで本人かどうかを確認するように。そして顔が離れ、口が開かれる。食われて死ぬのだろうが。せめてもの抵抗と思い体を動かそうとする、だがピクリとも動こうとはしない。まるで体がすべてを諦めたかのように。だが無理矢理にでも動かそうとすると、わずかにだが動く。
「あ"、あ"あ"っ」
動け、動けと思いながら背中にしょっているはずの銃に手を伸ばすために少しずつ動かす、だが龍は近づくことなく口の奥から炎を。




