第98話 効いてないか
塹壕から顔をだし狙うのだが、龍は大きく外しようがないと思っていたのだが違っていた。
「狙えないなぁ」
龍に、言い方は悪いが、餌に蟻が群がるように、ドワーフ達っぽいのが群がっている。それによって重機関銃であるS5による射撃もまばらとなってしまっている。
「よく狙えば」
アイアンサイトを覗き込み、狙うのだが、わずかな隙間しかなく、それを狙えるだけの技量はないので諦める。だからと言って何もしないわけにはいかないために龍の様子を見るが、分かるのは群がられていやがるように暴れているくらいだ。そうやって塹壕から顔を出していると横から急に声をかけられる。
「タナカこんなところに」
「イリア」
塹壕に戻るとイリアがいた。
「やっと会えた、どこいってたのよ」
「どこって言われても」
「けどよかった無事で」
急に抱きつかれる。
「いや、あの、その、心配してくれてありがとう」
照れながらもそう答える。
「本当に心配してたんだから」
そう言うと離れる。
「それでタナカ他の人にあった」
「アルフぐらいだな」
「でそのアルフは」
「向こう」
龍の方を指す。
「そう」
「イリアの方は」
「私はエレナとしかあってないわ」
「それでエレナは」
「危ないから逃がしてきたわ」
「そっちの方がいいよな、危ないし」
「私もそう思ったから逃がしてきたわ、それにほらこれ」
そう言っていくらか弾を渡してくる。
「嬉しいけど、減ってないんだよね」
「減ってないの」
「狙えなくて」
「ああなるほどね」
「だからって言っても待ってるだけはダメだろうし、はぁどうしようか」
「待ってていいんじゃないかしら、別にタナカが倒す必要ないわけだし」
「そうかなぁ」
「そうよ」
「けどまあ様子だけ」
塹壕から顔を出す。
「ってこっち来てる」
隠れる。その直後、塹壕の上に龍が横たわる。
「くそっこれでも」
ほぼゼロ距離でS2をフルオートでぶっぱなす。
「効いてないか」
龍に変わった様子はない。
「タナカこっち」
イリアが手招きをしている。だからそちらに向かって走り出した。




