第97話 タナカ俺たちも戦った方がよくないか
「…………………………」
「………………………………………」
「…………」
「い、生きてる」
龍が落ちた為に、かなり大きな音がして、その上土埃がひどいことになっている。1M先も見えないほどだ。マイヤーに言われ塹壕を飛び出し少しは離れたはずだったのだが、そんなことは一切関係なしに吹き飛ばされたようだ。
「耳の……調子が」
また大きな音によって、耳鳴りがひどく音が聞こえない。話し声のようなものがしたので近くに人はいるのだろうが何を言っていたのかがわからなかった。だから人の声がする方向に向かって歩き始めた。こんな状況なのに銃は手離さなかったようだ。だから自分にちょっとだけではあるが、成長を感じる。
「だれか、いないかぁ」
声をあげる。少しずつではあるが土埃は収まりつつあるが、早く状態を知りたかった。
「……………………………」
また何かが聞こえる。だからそっちに向かって歩く。
「……………………………」
その声がだんだんと大きくなる。土埃が収まりつつある。
「………………」
かなり大きくなった。つまりかなり近い。
「『……………………………』」
息を飲む、土埃が収まる。
「タナカ」
目の前に龍がいた。龍もこちらに気づきかけたとき。アルフが横から飛び込んでくる。そのまま転がるとわずかに残っていた塹壕に転がり込んだ。囁き声で話しかけられる。
「おいタナカ大丈夫かよ」
「う、うん大丈夫」
「ならなんで龍のそばに」
「いや声がしてさ、人がいるかと思って」
「まあいいか」
「それでアルフいったいぜんたい何が起こってんの」
「俺だってよくわかんねえよ、何かが爆発したみたいだけどよ」
「あの大きな音はそれか」
「と言うかここはあぶねぇ、早く逃げようぜ」
「だな」
ここは龍のそば過ぎてなにもできない、アルフなら切りかかるとかあるかもしれないが、自分には銃を撃つとすぐ殺されそうだ。
「それでどっちに逃げる、ってこっちしかないか」
アルフと共に飛び込んだ方は龍に叩き潰されたのか埋まってしまっている。通れないわけではないだろうが、塹壕の中を進みたい身としては通りたくはない。
「まあ、どこにしてもここよりは安全だろうな」
できる限り小さくなって進み始める。ばれたら一貫の終わりだろう。だが。
「うおーーー」
「いくぞーーー」
その上をだれかが叫びながら飛び越えていく。
「タナカ走るぞ、戦闘が始まってる」
「いやアルフ伏せろ」
アルフに飛び付く。
「何すんだよ」
そう言われるが、答える前に銃声。
「隠れながらいこう」
「……………だな、タナカ助かったよ」
「まあ何度も助けられてるし、たまには助けないと」
そう言いながらこそこそと進む。上では激戦が行われているようだ、顔を出すことすら怖く見れないが声なんかで想像がつく。
「タナカ俺たちも戦った方がよくないか」
「アルフお前武器」
「俺にはこれがある」
腰に下げている剣を見せてくる。
「わかった援護する」
「必要ないくらい多くの武器がここには揃ってるけどな」
「なにもしないよりはいいだろう」
「だな、じゃあ頼んだ」
そう言われ、S2にマガジンを差し込み発射できるようにして、塹壕から顔と銃をだし、撃ち始める。ここからが戦闘の本番かもしれないと思いながら。




