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第90話 当たり前だろう

 いつもより体が軽く、速く走れている気がする。リヒターに近付くと当たるように剣を乱雑に振る。

「うおーーーー」

 縦に横にできる限り素早く振り続ける。だがそのどれもが避けられ、ハンマーで受け止められる。だがそれでも振り続ける、押し続けてれば、いや押し続けていなければならいないと気持ちが支配している。

「なんだ、その程度か」

 リヒターの動きが少しずつだがよくなり、避けられることが多くなる。だがそれでも剣を。

「これはどうだ」

 振った剣をハンマーで受け止められ、押し返され態勢を崩しかける。

「ほらよ」

 そこにハンマーが迫る。だが踏みとどまり、ギリギリのところで避ける。避けられたが態勢を建て直すために少し離れる。リヒターも同じようだ。

「「「「うおーーーーーーー」」」」

「おおっとタナカあれを避けた」

 少しまわりの声を聞く余裕ができるが、大半が歓声のみで意味のある言葉は魔術を使って声を拡大してる男の声しか聞こえない。

「少しはやるじゃん」

「まだ終わってない」

 再度リヒターに突っ込む、疲れは一切感じていない、動きも少しも鈍ってない。マイヤーが作ってくれた薬のお陰かもしれない、終わったらマイヤーにお礼を直接言おうと思う。

「だからこんなところで死ねないんだよ」

 剣を振る。

「お前が死ねばみんな助かるんだよ」

 避けられる、だからまた剣を振る。

「みんなって誰だよ」

「ここにいる全員だよ」

 今度はハンマーで受け止められる、金属音が鳴り響く。

「全員じゃない」

「あぁ」

 何度も何度も鳴り響く。その度に歓声が上がっている。

「自分と何よりメリベルが居ない」

「それだけの犠牲だけですむんだ、ほぼ全員だろう。それともなんだお前にとってはお前の仲間の方が大事なのか」

「当たり前だろう」

「なら俺だって同じだよ、俺にとってはここにいる全員が大事だ。お前らよりもな、だからさっさと、死ね」

「やなこった」

「ふっ、だがこれで終わりだ」

 リヒターがハンマーを横に振る。だからそれを受け止めようと剣を動かす。金属音。歓声。そして何かが飛んでいく。笑い声。飛んでいった何かを目で追う。銀色の何かが。顔を向けてよく見る。剣だ。それを拾うために手を何かから離す。足に何かが触れる。見る。布に巻かれた何かが。

「やっぱり折れたか」

「タナカの剣が折れたーーーーーー」

 そのあとは笑い声しか聞こえない。顔を上げようとする。

「死ね」

「いやーーーー」

 顔を上げきると目の前にハンマーが迫っていた。

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