第84話 ………タナカ私が行く
「タナカ龍ってなんだ」
「なんと言うかそのドラゴン的な生き物と言うか」
「伝説上の生き物だ」
「そうか」
「『我の望みはタナカの死のみだ』」
自分の死を望んでいるらしい。
「タナカが何したって言うのよ」
「そうですよ、タナカさんはなにもしていません」
イリアとリズが叫ぶ。
「『そやつが生きていることが我には迷惑なのだよ』」
「………タナカ」
「なにも悪いこととかしてないんだけど」
「………分かってる」
そこにマリアさんが駆け寄ってくる。
「領主様あれは」
「分からん、ただまだ手を出すな」
「はっ」
「ただし武器のようは」
「分かっております」
「『タナカさえ差し出せば、この場にいる全ての身の安全は保証しよう。ああ、タナカの生死は問わない』」
「身の安全って何よ」
「それにタナカさんの生死って」
「『覚悟する時間が必要だろう、だから3日は待ってやる』」
その言葉と共にこちらをにらんで来る。つい目をそらす。
「『ああ、我の名前を教えておこう、我の名前は魔王******だ』」
名前部分は理解できない言葉だ、だがその前の魔王と言うのが気になる。
「魔王か」
「『そうだ、我こそが魔王だ』」
その言葉と共に雨雲が広がり龍の姿を隠していった、残ったのは雨に打たれる多くの者達だけだ。
「なんだよ魔王って」
「どうしてタナカさんなんでしょうか」
「………分からない」
「くそっ、やつも鑑定できない」
「タナカなんか心当たりは」
「あるわけない」
「だよな」
「領主様兵達は」
「現状維持だ撤退作業中止」
「はっ」
「それとタナカに手出しはするなよ」
「分かっております」
回りがざわついている感じがする。
「ひとまず今後についての話を」
「領主様」
「どうした」
「向こうから伝令が」
「内容は」
「領主様とタナカを出せ、護衛として1人のみ付き添いを認めるとのこと」
「私とタナカ」
「ええ、そう言っています」
「それは」
「行こうか」
「タナカ罠じゃ」
「待ってたって襲ってくるだろうし、行った方がいいよ」
「そう、だな。マリアを呼んできてくれ」
「はっ」
「なら、アル」
「………タナカ私が行く」
メリベルが護衛に立候補する。
「…分かった」
「今来ました」
「よしじゃあ使者に会おうか」
「はっこちらです」
「それと案内し終わってからでいいがこちらからの手出しは不要だ、何が起こっても手出しはするな」
「それは、分かりました」
「よしじゃあ行くか」
自分とメリベル、マイヤー、マリアの4人で使者のもとへと向かう。




