第72話 兄は
ユキはすぐに見つかった、半分以上はスライムのお陰だが。
『タナカ』
『逃げなくてもいいだろよ』
『ごめん、だけど、どうして死ぬ覚悟までした私にそんな嘘をつくの』
『それは』
『私はもういつ死んでも構わないのよ、その覚悟もした、今死んでも構わない、なのに、なのにどうして決意を揺るがすことをするの』
泣いている。何かを言い返したいがなにも出てこない。
『お前が大切だからだ』
大声がし振り返るとそこにはマイヤーがいた。
『あなたに何がわかるのよ』
『分かるさ、お前を救うためだけにすべてを投げ出してきた、もとの世界でもこの世界でも』
『あなたは』
『この世界をすべて破壊してもお前を救ってやるって思ってたんだ』
『あなたはどうしてそこまで』
『アニキだからだよ』
『兄は、兄は』
『トラックに轢かれて死んだんだよな、確か宅配便だったはずだ』
『そ、そうよ』
『あの日はお前の誕生日でプレゼントが傍らにあったはずだ』
『え、ええ』
『そして中身は』
『『本』』
2人の言葉がかぶる。
『あの本読んでくれたか、なかなか見つからなくてやっと見つけたんだ』
『………ごめん、なさい、あの本は私の手元に届いたときにはもうボロボロで』
『そっか、ならかなり遅くなったけど、誕生日おめでとう、プレゼントはそのなんだ』
『ありがとう、ありがとうお兄ちゃん』
すごく居場所がない。
「タナカ見つかったの」
「見つかったけど」
2人は抱き合って泣いている。
「あーなるほどね、タナカ食事にしない」
「そうだね」
2人を後に残し、食事をしに行くことにした。
「それで、あの2人はどうなったの」
「まあ、分かりあえたんじゃない」
「そうなんだ、そう言えばタナカってそう言う妹とかいないの」
「弟がいるよ、ただまあアイツなら今の状況羨むんじゃないかな」
「会いたいとかないの」
「いや特には会いたいとは思わないな、最近はあってないし」
「そうなの」
「そう言えば食事って」
「リズが作ってるわよ」
「なんかリズの食事食べるの久々なような、まあいいや早く食べたいよお腹空いててさ」




