第70話 俺が先頭を務めないといけないんだ
バスはすごい速度で遺跡目指して進んでいく。
『そう言えばタナカはどうやってこの世界に』
『女神に召喚されて、そのせいで元の世界では行方不明者になってる』
『へぇそうなんだ、ってタナカ、タナカ、タナカ、あっあの50年前の神隠し事件だ』
自分とユキには50年ほどの時代が離れているらしい。
『本当に神隠しにあってたなんて』
『ははは、そうだね』
そんな話をしているバスが止まる。信号なんかはあるはずがないので、目的地に到着したのだろう。
「よし突っ込むぞ」
フロントガラスにシャッターが降り車内が暗くなる。バレるのを少しでも遅れさせるため車内灯はつけないらしい。
「突入」
洞窟にバスが突入する。真っ暗すぎて何も見えないがバスはかなりの高速で進んでいく。多分だが暗視装置でもつけているのだろう。
「速いな」
「まあこんな速度で進むことは少ないけどね」
当たり前ではあるが馬車よりも速い。すぐに目的地につく。
「なにも出てこないな」
「だがここまでこれたんだ降りるぞ」
マイヤーを先頭にぞろぞろと降りる、ユキはアルフに背負われ、自分は一応S2は持ってはいるが、リズの肩を借りながらだ。
「よしここが入り口だ、ここから先は地獄だぞ」
マイヤーが剣を抜き扉を開くボタンに指を伸ばす。
『待ってくださいマイヤーさん』
その指が止まる。
『なんだい』
『タナカが先頭を務めた方がいいんじゃない』
『いや俺が先頭を務めないといけないんだ』
ボタンが押され扉が開く。開いた先には戦闘体制のスライムが多数いる。
「じゃまだ」
体を無理に動かし、S2をマイヤーに向ける。
「マイヤー止まれ」
「うおおおぉ」
止まる気配がない。ササキは自分に武器を向けているのだがリズが間に入り盾を構えているので大丈夫だろう。
「俺は妹を」
バチンと言うような音が響きマイヤーが動きを止める。
「おかえりなさいタナカさんとその仲間の方々」
「えっタナカお前」
『そしてユキ様こちらへ治療の用意はできております』
『何で私の名前を』
『それは後でご説明させていただきます』
『怖い、せめてタナカとか』
『わかりました、皆さん武器をしまい着いてきてください」
途中から現地語に変わる。
「タナカ大丈夫なのか」
「大丈夫だし、殺されるならもう殺されてるんじゃないか」
「それもそうだな」
スライムの1体がアルフに近寄りユキを支えて移動を開始する。倒れ込んでいるマイヤーもスライムが運んでついてきているようだった。




