6話 ひとまず戻ろう
イリアと一緒に火をつけられそうなものを探す。
「そう言えばさイリアの村ってどれくらい遠いんだ」
「1ヵ月程は馬車に揺られる必要があるわね」
「そうか大分遠いな」
「けど本当にいいの、故郷に一緒にいってくれて」
「いいよ、ちょっと見てみたいし」
「そ、ならよかった」
そんな会話をしつつ、燃えやすいようにできるだけ乾いている小枝等を集める。
「そう言うタナカこそ故郷に帰ったりは」
「自分はもう諦めたし、帰る手段を探すの面倒だし、こっちで生きることにしたよ」
元々自分は異世界人はどこまで戦えるかと言うチェックのためにチート無しで送られた身であり、死ねば帰れたのだが、それを蹴りこちらの世界に帰って来た、その地点でこっちで死ぬことを決めた。
「そうなの」
「けどまあ気にしなくていいよ自分で決めたことだし」
そう自分で決めたのだ、なら辛くてもキツくても間違いであっても、人に決められたわけではないから諦める事はできる。
「なら私の村を第2の故郷にしない」
「えっ、それって」
「前にもいったように結婚しない」
前にも言われた、この世界では結婚は結構気軽に行われているようであるらしいのだが、返事がしづらい。
「メリベルもリズもいるから返事は後でいいわよ」
「そうか」
「早く集めて戻るわよ」
「ああ」
一抱えほど小枝等を集め終える。これだけあれば一晩持つだろう。
「タナカ集めすぎじゃない」
「いや火つけられないからこれくらいはしないと」
火をつけるのは魔術で行うために、魔力が一切ない自分はつけることができない。そんなことで元の場所に戻り始める。
「静かよね」
「静かだね、何かいやなぐらいに」
何となくだが何かがいる気がする。集めていた小枝を捨て、背中の銃を抜き弾を込める、弾を抜いていたのは暴発しないようにするためだ。周囲を警戒する草木が多くて見えにくいが見えないわけではない。イリアも杖を抜いている。声をかける。
「誰かいるなら出てこい」
正面から何かが擦れ合う音がする。銃を構える。
「何者だ、と言うか人か」
モンスターなら早く撃ちたい、なぜなら接近戦は出来ない、と言うか剣とかナイフとか言った武器がない。
「人なら早くなんとか言ってくれ、頼む」
だから近づかれたら殺される方が可能性としては高いだろう。段々と音が大きくなる。そしてかなり近くで音が消える。
「イリア援護頼む」
「ええ」
銃を上に向け、撃つ。音で状況を動かしたいと思っての行動だ。傷だらけの女の子が飛び出してきた。そしてイリアに抱きつく。
「えっ」
その女の子が震えている、何か怖いことがあったかのように。
「イリア頼む」
「ええわかったわ」
弾を再度込め、周囲を警戒。その間にイリアがその女の子を背負う。本当なら自分で背負う方がいいのかもしれないが、男に襲われたとかなら女であるイリアの方がいいだろ。また小枝ならもう1度拾いに来ればいい。
「ひとまず戻ろう、ここにいるより多分みんなと一緒の方が安全だ」