第57話 だから、シネ
やっと食事をとれる、もうお腹は空きすぎているので、冷えていても、多少不味くてもガツガツ行けそうだった。
「大丈夫ですか、タナカさん」
「大丈夫大丈夫」
「そう言えばイリアちゃんも下に行ったみたいなんだけど」
「多分戻ってくるまで時間かかると思いますよ」
「そうなの、なら先に食べてていいわよ」
「ええ、いただきます」
食事に手をつける、何を使っているかも、どんな料理かもよくわからないがとても美味しく食べれる。
「おいタナカ」
「なんだよ、食うのに忙しいんだが」
「背中についてるのなんだ」
「……本気でつけてたのかよ」
「あらあらあの人ったら、大分本気でやってたのね。タナカさんはずしてあげるから少し動かないでね」
「あっはい」
イリアのおばあさんが背中に回る。
「でタナカなんなんだこれ」
「爆弾、なんと言うか高威力の魔術が込められてるものって言えばわかるか」
「うおぃ」
「………タナカ平気なの」
「爆発しなきゃ大丈夫だろう、でおかわりがいただきたいのですが」
「私忙しいから後にしてね」
「なら」
「タナカさん私が持ってきます」
「ありがとうリズ」
命の危機なのに落ち着いて食事できる自分自身に驚いてはいるがそれほどお腹が空いているのだろう、食事が物足りなく感じる。
「タナカよく落ち着いて食えるな」
「そう簡単に爆発しないから大丈夫でしょ」
「それでもすげえよ」
「そう言えばアルフ達は」
「まだ食ってないけど、急いでないし命がけで食わなくてもいいかなって」
「………私も同じ」
「私も同じですしタナカさんより先に食べるのは……おかわりお持ちしました」
「そうか、あっリズありがとう」
「どういたしまして、タナカさん」
「よし、とれましたよ」
「ありがとうございます」
「タナカさんも外し方覚えます」
「いえいいです」
「そう、分かったわ」
「よしじゃあ俺たちも食うか」
食事をイリアとササキを除いて食べ始める。
「うまいなぁこれ」
「………おいしい」
「おいしいです」
エレナも美味しそうに食べている。
「あら、それはよかったわ」
そのあとはみんなでわいわいと食べる。食べ終わりそうになった頃、玄関の方の扉がノックされる。
「珍しいわ、この家に誰か来たのかしら」
「そんなになんですか」
「ええ、ここは近くになにもないところにあるから」
人が出てこないのにイラついたのか扉を蹴破る音がする。
「えっ」
それにも驚いたのだが、さらに驚いたのがイリアのおばあさんが食事が乗っていた机を横に蹴り倒し、盾とし、そのまま台所へ向かう。自分も驚いている暇ではないと思いその机に隠れる。
「タナカ武器は」
「自分はこれだけだ」
ソートオブショットガンを取り出す。
「それがあれば」
「けど弾2発」
「おい」
「………私はなにもない」
「私はナイフだけです」
「俺も剣だけだ、これでなんとか」
「みんな武器はある、なかったらこれ使ってね」
イリアのおばあさんが戻ってくるのだが手には銃と弾が多数。
「何でこんなに」
「襲われたときに備えてかしら、来るわよ」
「ここにいたのか、タナカ」
「何で、何で領主のあんたがここにいるんだ」
「俺はな、最後の仕上げは自分でしないと気がすまないんだ」
威圧がすごい。体が勝手に横に動く。
「だから、シネ」
横に飛ぶ。そしてそのまま転がる。机が真っ二つになっている。
「俺のためにシネーーー」




