第52話 リロード
「くそっ、くそっ、くそっ」
「タナカさん落ち着いて」
「何でこんなに追われてるんだよ、数多すぎないか」
近付かれ銃を撃ち続けているのだが、数か減ったようすはない、と言うか増えているような気がしてくる。
「タナカ向こうに魔術師だ」
「っ、了解」
そして敵の中にも遠距離攻撃ができる魔術師がいる。もう騎士団並みの戦力のようだ。だが魔術師をほおっておくわけにはいかない、魔術を使われ馬車が壊れれば終わりだ。
「メリベル実は騎士団だったりは」
「………しない、騎士団なら初めに警告ぐらいする」
近付かれるまでは余裕があったのだが、近付かれてからは余裕がなく、命中する弾も減り、連射しているためか、弾の減りも早くなると言う悪循環だ。
「リロード」
マガジンも残りわずかになってしまっている。
「これ本当に山賊かよ」
「冒険者をやめたのも混ざってるんじゃない」
「けどそれでも多すぎる、リロード」
「………これだけ騒いでるから近くの別の山賊が気づいたとか」
「こんなに山賊とか残ってるもんなの」
「騎士団は報告を受けてからしか行動できませんから、リロードします」
「巡回とかしろよ、リロード」
「この辺りは町から外れた場所なんだろ、なら巡回してないさ。警戒ぐらいはしてるだろうが」
「なら、こんだけ騒いでたら来てもいいだろう」
山賊は今も増え続ける、まるでこの辺り一帯すべての山賊が集まっているようだった。しかもその山賊たちは一心不乱にこちらを狙ってくる、騎士が来るかもしれないのに警戒してる様子はない。
「タナカ剣借りるぞ」
「使わないから構わない」
「助かる、多少は手伝えるぜ」
「そうか、リローあれ」
何もつかめない。銃を敵に向けたまま手だけで探すが何も見当たらない。急いでいるため下を向く。
「…ない」
鞄の中にはもうマガジンは入っていない、それに気づくとS2を離し、ソードオフショットガンを抜く。
「タナカさん」
「………これは」
「でき、マジかよ」
「タナカ前、えっ」
馬に乗っているほぼすべての山賊か杖を抜き、こちらに向けていた。抜いたソードオフショットガンを取り落とす。音が消え、ゆっくりと時が流れる。死ぬ直前と言うものはこう言うものかと実感したくないことを実感する。恐怖はなく、むしろ何も考えられない。ただ口から声のようなものが出る。
「あ」
そしてその光景は何かに遮られた。音がまた聞こえる。
「よっしゃ間に合った、本当にギリギリだ」
「あなたがもう少し、急いでくれればよかったんですよ」
「いやぁ仕方ないだろこいつ引っ張り出すのだって久々だし」
「それはそうなんですが」
「それにさぁ、お前だって孫に久々に会えるって時間かけて料理してたじゃないか」
「あなただって一緒でしょ、ササキさん」
そんな声が轟音の中聞こえていた。




