第45話 土下座かな
待つと言ってもすることがない、せっかく安全なところにいるのだから寝てればいいのかもしれないがいつ戻ってくるか分からないし、かと言ってイリア達と話すのも喧嘩中だから無理だ。だから自信はないが銃の整備を行う。と言っても詳しくないので使うのは細い棒と布切れだけだ。まず布切れで銃全体を拭く、可動部は集中的にする。油なんかを挿せばいいのかもしれないが、持ってないしどこら辺に挿すのがいいかわからないので行えない。次に細い棒に布を巻き、それを銃口から突っ込む。銃身の中を掃除するためだ。何回か行うだけで布切れは真っ黒になっていた。最後に鞄から空になっているマガジンをとりだし、弾を1発1発込めていけばいいだろう。だがもう1丁銃があるから、これでひとまず完了だ、と言うかこれ以上はどこをどうすればいいか分からないし、道具もない。次にソートオブショットガンの方も同じことをする。これで弾詰まりなんかが起こらなければいいのだが。
「タナカさん何をやっているんですか」
「銃の整備、まあ見よう見まねだし本格的なのは武器屋でやるのがいいんだろうけど」
「手伝いましょうか」
「ならマガジンに弾込めるの手伝ってくれ」
「わかりました」
マガジンは取り出してあるので、鞄から弾を取り出しながら込めていく。意外と力がいる作業だ。
「タナカさん弾は何発ずつ込めればいいですか」
「30発ずつ入るはずだから30発ずつで」
「わかりました」
「たださ、プロとかになると弾が詰まらないようにするために20発くらいで入れるのやめる人がいるみたいなんだよね、どっちがいいと思う」
「何でかお聞きしても」
「30発全部入れるとバネが弱くなってしっかり弾が込められなくなるらしいんだよね」
「ですが弾がちゃんと込められていた方が撃ち続けられていいのでは」
「そうなんだよな、まあいいか30発込めておいてくれない」
「わかりましたタナカさん」
そこからは無言の作業だ、鞄から弾をとりだしマガジンに込める、取り出す、込める、取り出す、込めるを繰り返す。単純作業は嫌になる人と余裕でこなせる人がいるが、自分もリズ後者だった。むしろ気分が落ち着く位だ。それが終わりに近づいた頃、アルフが来る。
「タナカ、そろそろ謝らないか。空気が重くて」
「……っ、ああ、そうしようか」
集中しすぎて聞き逃しかけた。
「でタナカの世界ではこう言うとき、どうやって謝るんだ」
「こう言うときは、土下座かな」
「土下座なんだそれ」
「まあ、なんと言うか、アルフは真似してくれ」
「……わかった」
真剣な表情でエレナの様子を見ているイリアに近づく。
「イリア、少しいい」
「何」
声に怒りが込められており、大分怖い。だがそれに負けじと床に正座し、手をつき、頭で床を撃ち抜く勢いで頭を下げる。
「すいませんでした」
「タナカも、アルフも急に」
「どうしてもエレナに馬車を操ってほしくてあんな言い方になってしまって申し訳ございません」
「俺もタナカと同じで申し訳ない」
「タナカそんなことを考えて」
「アルフが考え付いて、自分が乗ったんだけど、アルフがやらなくてもやらなくちゃいけないとは思ってたんだ」
「あそこに置いてくわけにはいかなかったから仕方なかったんだよ」
「そうなの、それは許すしこっちも空気悪くしててごめんなさい」
「いやイリアは悪くないよ」
「いえでも、ならこの話はこれでおしまい、いいわね」
許してもらえた。
「けどその謝りかたって何」
「いや自分の世界の謝り方で土下座って言うんだけど」
「へぇそんな謝りかたがあるんだ」
「タナカさんそんな体制で何を」
「いやイリアに謝ってる」
「そうなんですか」
「タナカもう普通に戻ってもいいわよ」
「わかった」
頭を上げ立ち上がる。
「あぎゃ」
「アルフさん」
「タナカ、足が変な感じがして立てないんだが」
「足がしびれてるから、少しすればよくなるよ」
「そうなのか」
「タナカ足しびれるって」
「さっきの謝りかたするときに正座って言う座りかたをするんだけど、それをするとアルフみたいな状態になるのを足がしびれるって言うんだ」
「そうなんだ」
「アルフさん足マッサージしましょうか」
「いやリズやめといた方がいいよ、触ると」
アルフの足にさわる。触った為に足がしびれる。
「あ、つぅぅぅ」
「そんなにですか」
「アルフ、少しずつでも足を曲げ伸ばしするんだそれで楽になる」
「あ、ああ」
「けどタナカはどうして平気なの」
「慣れかな、よくする座り方だし」
「そうなんだ」
そこでドアが開く。
「………ただいま」
「おかえりメリベル」




