第38話 ……なにこれ
「………タナカ起きて早く」
揺すり起こされる。さっき寝たばかりなので意識がはっきりとしない。
「後…少し」
「タナカさん早く起きてください、早くしないと騎士団が来ます」
「……騎士団なんて来るわけ無いしゃん」
意識がぼおっとしている。
「タナカはっきりしないとだめなの」
ほほに衝撃、目が覚める。目の前にはイリア、つまりイリアにビンタされたようだ。
「いてぇ、何だよまだ交代時間じゃないだろ。寝かせてくれよ、歩き通してたんだから」
起きざまに文句を言うが、イリアはためらわず1枚の紙を渡す。
「タナカ、早くこれ見てよ」
その1枚の紙切れを見る。
「……なにこれ」
その紙切れの一番上には手配書の3文字が書かれており下には、エレナを除いた自分達5人の名前があった。報酬は生死は問わず、1人1000Gとその荷物となっており、罪状は強盗殺人となっている。嘘っぽくて当たりを見渡すとエレナ以外起きており、横に首を振っている。
「本当になにこれ、と言うか何時出たの、しかもこれどこに持ってたの」
「私達が町を出た後に町に張り出されたらしいわよ」
「そうです、それで本当にしていないんですよね」
ここにはいなかった人物である行商人がいた。
「えっと、何時ここに」
「先ほど、関所にこれを貴方達が通った後に届けるよう依頼されまして」
「ならここで会うのは不味いんじゃ」
「大丈夫ですよ、誰も見ていませんし、この手配書だって信じてませんよ」
「そうですか」
寝起きだからではないとは思うがさっぱり意味がわからない。一言で言うなら誰かに濡れ衣を被せられたと言うことだろう。
「どうしようか」
「………関所は越えられない」
「いえこれが届く前なら越えられるのでわ」
「………私達が関所を越えた後に届く様にしてるならなにか狙いがある」
「だな」
「あの関所以外のところ進めばいいのではないでしょうか」
「それは無理だな、巡回もしてるかもしれねえし、なおかつ犯罪者狩りがいるから時間がかかるらしい」
「つまり罠にのって関所を通るか関所以外を通って戦闘を切り抜けるか、町に戻って無実を訴えるか」
最後は上げては見たが誰が濡れ衣着せたかわからないので戻りたくはない。それこそ死人に口なしと言う言葉の通り殺されてしまうだろうし、その準備もしているだろう。
「なら逃げ続けるのは」
「………それこそ騎士団に追われる」
「無理だよな」
打つ手なしだ、1番良さそうなのが罠に乗るなのだからやってられない。
「あの皆さん私に提案が」
「なんですか」
「命懸けになるのですが、あの左手に丘があるのですが、あの丘の手前に遺跡への入り口ががあり、反対側の国境を越えた当たりにも同じものがあるみたいなのですが。……無理ですね遺跡を切り抜けられる冒険者、いえ騎士団の集団でも無理なんですから」
全員が止まる。遺跡が国境を越えられるところにあり、かつ誰も通れないと思われているなら罠の恐れも犯罪者狩りがいる恐れもない。
「いえ行商人さんありがとうございます、このまま殺されたり捕まったりするよりは最後に冒険してみようと思います」
「ほ、本当に行くんですか」
「ええ、けど直前で怖くなったらやめますよ。ひとつ頼みたいんですがここからその遺跡入り口まではどれくらいかかりますか」
「徒歩で2、3日ほど」
「ならその手配書4、5日後に届けてもらいたいんですが」
「わかりました、どうにかしてみます」
「よしじゃあ後、寝よ寝よ」
「おいタナカ、もう火の番の交代だぞ」
「分かった、あの行商人さんありがとうございます」
「いえ、ですが気を付けてくださいね」
「分かってますよ」




