第34話 皆さん本当にありがとうございます
荷物を宿に置き、起きていたアルフ達を連れて病院へと戻る。
「そういや、マイケル来てたんだよな」
「ああ、来てたけど」
「ならここで引き渡して依頼完了だな」
「けど自分達が連れてきた5人はどうする」
「町までの護衛だからここでいいんじゃないか」
「まあそれでいいか」
「それで彼女らにあって、買い出しして、寝て、明日出発だな」
「そう言えば、メリベルここからだとどれくらいかかるんだ」
「………転送陣使ったからわかんないけど、国境越えないといけないから時間かかる」
「国境って、何か必要な物ある」
「………これがあるから大丈夫」
そういって指輪を見せる。この指輪は冒険者ギルドによって出される品で身分証明書となってくれる優れものだ。その代わりなくしたらかなりの額を請求されるが。
「へぇこれ便利なんだな」
「タナカさんの元いた世界には無かったんですか」
「あるにはあるけど指輪とかじゃなくてカードだったし、いつでも身に付けていられるものじゃないから、必要なときに忘れちゃって」
「そうなんですか」
「そうなんだよね、しかもこれみたく1つで何でもできないから複数持つ必要あるし。そう言えばギルドに入ってないのに国境越えるのはどうするんだ」
「………どこでもいいからギルドに行って一時的な証明書をもらえばよかったはず」
「へえ」
「他にも密入国って手段もあるぞ」
「それ犯罪だろアルフ」
「まあそれはそうだが、お尋ね者やらはそんな手段しか使えないからそれら捕まえて金得ようとする冒険者もちらほらいるぞ」
「そうか」
そんなことを話していると病院へとたどり着いた。
病院の病室へと戻ると、8人とも起きていたがマイケルさんが寝ており、膝枕されていた。
「おかえり、タナカ」
「ただいまイリア、エレナも」
「あ、あのタナカさん」
「はい、なんですか」
捕まっていた5人の内のリーダー的な人が話しかけてくる。
「2度も命を救っていただき、感謝をしているんですが」
「はぁ」
「払える物がないんでその代わりといってはなんですが」
「はぁ」
「このから」
「タナカは耳塞いでて」
イリアはそう言うと飛びかかってくる。
「うわっ」
「………そう言うのは大丈夫だから」
メリベルが引き継いだようだ、こっちはイリアに耳を塞がれ、アルフに「面白そうだから」と体を押さえつけられている。剣を持ちモンスターと切り合いをしているアルフに力で敵うわけもなく、動けない。そうしている内に話はメリベルによってどんどんと進んでいく。そうしている内に話はまとまったようだった。
「………タナカ、彼女達は1年後お金払うって」
「いてて、まあ仕方ないよね」
「別に構わないが住む所の宛はあるのか」
「いえ、それが全く」
「ならスラムだが俺たちの家を一時的に貸して仕事もやるよ」
「本当ですか」
「っアルフ」
「いやマリアに人手がほしいって頼まれてて」
「マリアってあの領主様の部下の」
「いやスラムの方にも同じ名前がいるんだよ、だから頼まれたこと思い出しんだが」
「是非お願いします」
「わかった、なら乗り合いの馬車で向かってくれ、それなら安全だろ」
「はい、はい、本当にありがとうございます。お仕事に家まで貸していただいて」
「そう言えばアルフ仕事内容は話さなくていいのか」
「いえどんな仕事でもやります」
「ああ、忘れてた、タナカの持ってるような鞄作りだ。今それなりに使いやすいって人気で物が足りないらしいそのための人手だな。まあ手紙でも書いておくから渡しておいてくれ」
「はい、わかりました、皆さん本当にありがとうございます」
彼女は涙ながらにそう言った。
「それでマイケルさんはなんでこんな状態に」
「疲れてたのかタナカが出てったらすぐに寝てたわよ」
「そうか」
「あの私たちも助けてくれてありがとうございます」
「いやいいよ依頼だったから」
「そうですか」
「なら彼が起きたら色々と町中うろついてるって伝えてくれない」
「わかりました」
「頼みました、じゃあ買い物とか行こうか」




