第28話 ………タナカは私が守る
中に案内されるとそこはキレイな建物であった、それこそ領主の屋敷と同じくらいに。
「ではお背中の武器をお預かりいたします」
背中に背負っているS2を渡す。後ナイフを渡そうとして。
「いえ、背中の物だけで結構です。後腰にあるのは」
銃や弾丸が入っている鞄を見ながら言われる。
「いえこれはお金なので」
「失礼いたしました」
調べられずにすんだ。しかしメリベルの方は腰の剣に盾の裏に仕込んである杖を持っていかれてしまった。
「それでは奥にどうぞ、武器の方はお帰りの際にお返しいたします」
3階にある、商談室へと案内される。
「それで本日のご用は」
「奴隷の購入に」
「どのような奴隷が必要で」
「えっと、その、ねえ、うんうん」
「ああ、なるほどなるほど」
隣にいるメリベルからはにらまれている気がしてくる。だけどまあ仕方ない、奴隷となってしまっている女性を見せてもらうためにはこれが一番いいだろう。
「そのような奴隷はギルドでは手に入りませんからね」
「まあそうですね」
奴隷には2種類あり、1つは奴隷ギルド所属で罪人やら普通に借りた借金が返せなくなった人やらが入っている。一応国などに認められており、人権などもしっかりとあり、まともな奴隷である。だが今回来ている奴隷商館の奴隷は正式なものではなく、ヤミ金から借りた者や誘拐され売り飛ばされた者である。簡単に言うと前者は派遣社員であり、後者はよく知られている奴隷である。さらに言うとリズも奴隷ギルドの奴隷である。
「分かりましたご案内します、あのあなたは」
メリベルを見て言う。
「………一緒に行く、彼を守る為に来たから」
「分かりました、ご案内します」
商談室の隣の部屋に案内される。そこにはかなり美人な女性やら小さい子やらが多数、檻の中に入れられていた。
「こちらは最低でも1万Gからする高級奴隷です、欲しいものがあれば私に声をかけてください」
「分かりました」
内心吐き気がしてきた、見ていていい気分のするものではない。だがこらえて、探す。だが見つからない。
「少し予算が」
「分かりました、次の部屋に案内します」
階段を降り、2階の1室に案内される。
「こちらは5000Gから9000G程の中級奴隷でございます」
高級奴隷と同じような状態であるが服等は少し汚い服を着ていた。その中に1人見たことがある人物が。あの奴隷商人から助けた5人のうちの1人だ。檻の中に入れられ、こちらを見て目に涙を浮かべている。それを確認しつつ、周囲を見て回る。他の4人はいないようだ。そしてその1人に近づく。
「大丈夫、なわけないですよね」
「タナカさん、ですよね。助けに来てくれたんですか」
「そうだけどひとまず落ち着いて」
「は、はい分かりました」
メリベルを見る、トランシーバーで連絡を取ろうとしているのだが、案内している男が邪魔で使えそうにない。
「あのすいません」
「はいなんでしょうか」
「彼女が気になるんですけど」
「ええっと彼女ですか、彼女は売られたばかりでして少々お高くなっているのですが」
「えっといくらですかね」
「初物と言うことで9500Gになってます」
顔見知りのそんな情報は聞きたくなかったが耐える。彼女も顔を赤らめている。
「どうでしょう」
「支払いは金貨でいいですかね」
「ええなんでもよろしいですよ、すぐにお支払しますか」
「ええ少し待ってくださいね」
鞄に手を入れる。一撃で仕留めなければならいと言うことが重くのし掛かる。今回は即戦闘も考えられたので弾も込めてあるから撃てるのだが、失敗したら。だが覚悟を決めて抜く。
「えっ」
撃つ。銃声が響く。
「メリベル、扉を開けられないように」
言わなくても気づくだろうが叫ぶ、だが。
「………ごめん、置けそうなもの、ない」
「えっ」
思い返してみる、この部屋には檻と奴隷しかおらず、他に何もない。そして叫び声が聞こえる。
「また、襲撃者だ。全員2階だ、2階に迎え」
こういった商売をしているからだろう、警備体制はしっかりしているようだ。
「メリベル連絡は」
「………すぐ済むけど、敵が来る方が早そう」
足音が聞こえる、しかも複数。
「………タナカは私の後ろにいて」
メリベルは盾を構える。
「………タナカは私が守る」




