第22話 今更か
奴隷商人達から奪った馬車を中心に食料や行商人から買って貰った武器や弾を依頼料として貰い受ける。そして行くのは自分達5人とエレナ、ついでに行商人である。
「あれ彼女達は」
「タナカはいなかったから知らないか、彼女達はあいつらに連れてかれたよ」
「………他にも村人も連れてかれてる」
「そうなのか、後リズ怪我は」
「大丈夫ですよタナカさん、問題ないです」
「ならいいんだが」
「そんなことより一番不安なのはあなたよタナカ」
かなり顔色が悪いらしいためか、ずっと心配されているが問題ないとしか言いようがない。
「いい薬があるから買いますか」
「いや大丈夫だから、それはそうとどうしてあなたまで」
「いやはや騎士団がまともに動けるようになりましたら、危険な道が少なくなり行商人の価値が落ちてきまして。なので懇意にしてくれる顧客を増やすために色々と、ね」
「行商人の価値が落ちるってどうして」
「簡単に言うと行商人が必要なのは回りが危険で物が買えない人な訳です。それが何かの要因で安全になってしまったら取り扱うものが少ない行商人より町まで出て買い物した方がいい買い物が出来ると思うようになってしまうのです。なのでそうなっても利用していただける懇意のお客様が必要なんです」
行商人も冒険者と同じように生き残りに必死なようであった。
「あなた方冒険者だって同じなのでは」
「まあそうだね」
「と言うわけで一緒にいかせて貰います、旅の最中なにか入り用なら私に」
と言うわけでこの7人でいくことになった。
色々と準備していたためか夜が明け朝になってしまっていた。なので奴隷商人達とは1晩時間が空いてしまったが仕方ない、村人達に見送られて出発した。行商人から聞いた話だとここから3日程のところに聡明な貴族が切り盛りして大きくなりつつある町があるらしい。馬車には操作するエレナとイリア、荷台の方には自分とアルフ、リズ、メリベルの4人が乗っている。そして謎なのだが自分は寝かしつけられていた。
「いやなんで」
「………体調が悪そう」
「いやいや」
「タナカそんな顔で言われても説得力ないぞ」
「そうですよ、ゆっくり休んでいてください」
「特にタナカはポーションとか使えないわけだし」
そうなのだ、この体は元の世界の物を使っているため魔力が全くなく魔術はもちろんのこと、魔力に働きかけて回復力を高めるポーションすらただの液体でしかない。しかも魔術を使い起こされた魔力弾も防いだりすることはできないので不利である。一応数少ない利点として鑑定のスキルに引っ掛からないや魔力に働きかけて体を制御を奪うなどは無視できるのだが、そんな物を使える人とは関わりは基本的にはないので意味はない。
「分かったよ休んでる、あっ後聞きたいんだがこれ何」
袋にしまってある、グレネードのようなものを見せる。
「元の世界で見たことがあるんだけど」
「………さあ、けどこういうのならイリアの方が得意」
「なら後で聞くか」
「じゃあ後は寝てろよ」
グレネードのようなものを預け、目をつぶった。
手にいやな感触がして、手を見る。そこには血まみれのナイフが。そして死体、それは。
「っ」
「タナカ汗出てるぞ、大丈夫か」
「大丈夫、大丈夫」
「タナカ、お前、ナイフとか人殺したのは始めてか」
「あるわけないだろ」
「だよな」
「アルフは」
「ん、なんだ」
「アルフが始めて殺したのは」
「忘れた、けど大切な人を守るためだ、てそういう話じゃないか。まあでもなれたな殺らなきゃ殺られるわけだし、割りきるしかない」
「だよな、そうだよな、今更だよな」
これまでも銃を使い人を殺してきたのだ、はっきりいって今更である。
「それでも駄目ならこれだな」
瓶に入った液体を渡される。
「酒だ、あいつらの持ち物。これでも飲んで忘れるんだな」
「ありがと、でここは」
「暗くなったから夜営準備中、それで暇だから起こしに来たわけだ。そんじゃ早く来いよ」
アルフが馬車から降りる。
「今更か、今更だよな」
そう思うと少しずつだが手のいやな感覚が消える。それにともない空腹を感じ出す。なので馬車から出て火のそばによる。
「タナカさん大丈夫なんですか」
「今度こそ大丈夫、後お腹空いたから食べ物くれない」




