第100話 大切な人だったのに
「………………………………………」
意識が戻る、体に冷たいものが流されている感じがする。体は。動く。少しずつだが、動く。視界は赤い。体は揺れる。だが1歩1歩確実に前に進む。なにかを忘れている気がする。体中違和感しか感じない。だが前に進む。いや進まなくてはならない。そんな気持ちに支配される。気持ち悪く蠢く赤い物の中を進む。一瞬赤い物の先に光が見える、だからそこを目指し進む。そして赤い物を切り抜けた。
「……………………」
「……………………………………」
何かの音を拾った様な気がする。だが気にせず外の様子を眺める。外は明るく日が出ている用だった。よく見るためにさらに進む。段差がある。乗り越える。体は痛んだがまた冷たいものが流れる。そして奴を見る。奴をみた瞬間記憶が戻る。そして叫ぶ。
「ここにいるぞーーーーーーーーーーーーーーーーー」
龍は帰ろうとしていたのか空を飛んでいた。だが振り返る。
「どうした、まだ生きてるぞ」
龍の表情はわからないが驚いているのだろうか、動く気配がない、だから叫ぶ。
「チートも持たないただの転送者を殺せないなんてなぁ」
嘲笑うかのように叫ぶ。
「イリアは、彼女は殺せたのに」
目から何かが流れる。
「彼女は、彼女らは大切な人だったのに」
声がかすれる、だが叫び続ける。
「どうした、さっさと殺せよ、早く殺せよ」
その言葉と共に龍がこちらに向かい始める。
「ただじゃ殺させないけどな」
武器を想像する、12本の銃身、あるだけの弾丸、それだけで十分だ。体がふらつく、何かに支えられる。両肩に6本ずつの銃身を束ねたものが現れる。ガトリングガンと呼ばれているものだ。これならば龍を殺せる。束ねられた銃身が回り始める。龍の口が開く、また炎をはくのか食い殺すつもりなのかはわからないが都合がいい。
「これでも、食ってろ」
スライムが取り込んでいた弾丸をすべて吐き出す。どれだけ取り込んでいたのか、いやそもそも取り込んでいたのかはわからないが全てだ。
「死ね」
だが空を切る、弾が切れたらしい。龍は血まみれだがまだ突っ込んでくる。だから武器を変える。龍を貫ける武器が必要だ。右腕にデカイ武器が現れる。かなり重い。先端が黒いパイルバンカーだ。龍はもう目の前だ。だから下から上をぶん殴る。アッパーを放つ。衝撃。爆発音。体が空に投げ出され、白い光包まれた。




