表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

つよがりとクッキー


「よく我慢したね」


 そう言って、彼女は僕にクッキーを一枚くれた。

 そのクッキーは最近流行りの、美味しいクッキーだった。流行りものに疎い僕でも知っているぐらい有名だった。


「私は、君が我慢してくれることが一番嬉しいから」


 そればっかり、彼女は言う。

 クラスで、「綺麗で、気に食わないから」なんていうとある女子の嫉妬から始まった苛めは、なかなかに酷い物で、僕は毎日怒りを必死に抑え込んでいた。

 少しでも気を緩めてしまえば、すぐさまにでも苛めっ子を殴りにかかるだろう。もう、ボコボコにしてやる。


「それじゃあ、駄目だよ」


 お見通しなのか、クスクス笑う。


「大丈夫、大丈夫だから」


 言葉を彼女は繰り返した。

 その様子を見て、「強がっているのは君じゃないか」と当然のように思う。

 落ちているイチョウの葉っぱを眺めていた。



 無言だった。

 お互い、どこかで相手の言い分は理解しているのだ。だから、無言でも居心地の悪い空気は無かった。それでも、やっぱり無言というのよりは、会話があった方が良い。


 そう思っていた時だった。無言を打ち破るように、いや、解くように彼女は優しい声で言う。


「それじゃあ、もう遅くなるし、帰ろうか」


 伸ばした彼女の手には、あざがあった。それが、悔しかった。


「……ああ」


 恥ずかしかったけれど、手を握る。

 風が冷たくなったせいか、冷えてしまった彼女の手を、やさしく温めてあげたかった。

 そして手のように、いつか、彼女のつよがりを解いてあげたいと思った。


「今度は一緒に、クッキーを買いに行こう」


 どちらともなく、口に出た約束。

 それがただ、楽しみだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ