第24話 ご都合主義なのだが
結論!
転移魔法でお金は減らなかった、そして、白猫はカード化した。
セラミックっぽいカードの中で小さな白猫が動いている。
出し入れはどうやるんだろう。
「全く、とんだ激レアアイテム持ってるとは。しかもワーキャットなんかに使いやがって」
スキン男も転移魔法で帰ってきたようだ。
「それとリタっ、おいリタっ、聞いてねえ・・・」
リタさんさっきからカードの中をひたすら覗いている。
「リタさん・・・いる?」
「えっ?いいの?だけどその、うーん、ほ、本当にいいの?」
「たまに遊ばせてね」
「う、うんっ、ありがとっ」
すっごくはしゃいでいる。
まあ、猫は残念だが嬉しそうなリタさんを見てると俺も嬉しいし。
それと、聞くだけ聞いとかないとね、教えてくれるといいのだけれど。
「で、転移魔法使えないのだっけ?他にもいろいろ聞きたいのだけど」
「わ、分かったから。ただし、二つだけ約束してくれ。転移魔法は使・・・極力使うな、そして俺を魔法で固定して迷宮に置いてくな!頼むっ!」
命令系だが、何やらイニシアチブを取れそうな予感。
「説明求めます」
「ぐっ、・・・お前の転移魔法代、お前の場合は来賓で10万ノットで、使ったら俺が払うってことでどうにか来賓証を発行して貰ったんだよ。それと、俺は魔法を殆ど使えないから迷宮で固定されると転移魔法しか手段がなくなるんだよ。教官の代金は50万ノットだっての。ただでさえ嫁より稼ぎが少ないってのに・・・だからっ、頼むっ!」
先程の転移魔法代、合わせて600万円!?
それを即出せるってことはかなり高収入?
まあ、人を貶める趣味なんてないから自重しますか、変なことしなければだけど。
「変なことしないのなら構わないけど、他に質問いい?」
俺は早速質問を・・・
「この子出せないのっ?」
リタさんから質問が飛んできた。
話だけはしっかりと・・・ちゃっかりと?聞いていたようだ。
「リタっ、お前まで!」
スキン男をじっと見つめる俺。
ええ、リタさんの味方です。
「ちょっと待て!・・・まずは名前を付けろ。それでカードの持ち主となるはずだ」
「えっ?あー、うー、ユウアちゃんお願いっ!」
「パス」
メンドイ。
シロとかハクとか在り来りなのしか付けれないし。
「うー、それじゃあ候補挙げるからそこから選んで!・・・、うーん・・・」
待つ間に他の質問していようかな?
「ユリ、ユーリ、ユリィ。うんっ、どれがいい?」
速っ!
しかもユリって・・・花の方じゃないこと希望。
名前の由来はユウア、リタの頭文字から、らしい。
親が自分達の名前をもじって安直に子供に付けるような名前・・・恥ずかしい。
天然だよね?
百合はパス、ユーリはゲームの某剣士とか某船長とか強めのイメージがあるから却下、よって消去法で決定。
・・・ゲームやりたくなった。
「ユリィかな」
「分かった、ユリィ!」
名前を呼んだら名がカードの下あたりに刻まれた。
「次は、『出でよユリィ』『戻れユリィ』で「いでよユリィ!」・・・出し入れできる」
リタさんが即呼び出すと、スッとカードからユリィが出てきた。
ユリィにほお擦りしているリタさん。
・・・べ、別に嫉妬とかしてないし、取られた、とか思ってないし。
それにしても、白っぽいリタさんが白いユリィを抱いているのは絵になる。
「あのカードは?」
「あれはマスターカードと言って、魔物を捕獲できる激レアアイテムだ。滅多に手に入らん。買おうとしても一枚1000万ノット以上。弱い魔物一匹なんて大抵釣り合わん。基本はもっと強い魔物を入れる。もっとも、魔物を生け捕りにして迷宮外に運び出すのが最も大変なのだが」
マスターなボールみたいな物のように簡単にはいかないってことか。
「中の魔物は倒されたら死ぬ?餌とかは?」
「倒されても魔物の力に応じて数日間使えなくなるだけだし、餌も不要だ」
「強くなったりとか進化したりとかは?」
「一緒に迷宮で戦えば強くなるし、上位種への進化もある」
「カード以外でもある?」
サリアさんにあげた銀毛入りクリスタルはどうかな?
・・・あれ?
アナライズで鑑定しておけばよかっただけじゃね?
「カード以外は聞いたこと無いな」
「そう・・・次は転移魔法について。料金とか」
「転移魔法は、学生は入学一年目1万ノット、二年目は2万ノットと増えていき、進みが遅いと最大10万ノットとなる。進学は個人の知識・技術の習得具合によるが、お前なら・・・最短三年で卒業できるかもしれん。まあ、教官は50万ノットで破格だが、教官なのだから仕方がない。来賓は10万ノットで基本個人持ちだ。それと、転移魔法で複数人同時に利用しようとすると、一番上の人の料金となる。俺を含んで連発なんてされたら・・・だから、頼む、頼むからあまり使わないでくれ!」
なるー、新入生を後ろに配置して転移魔法安いうまー、なんて考えたができないってことか。
でも誰が使うか揉めそうな魔法だ。
「ハゲと魔法が使えないのは関係ある?顎鬚は黒っぽいのに」
そう、改めて見たら顎鬚、髭、眉毛が黒っぽいのだ。
初めて見た黒い毛だが、全く違和感がなかった。
ハゲで強調されているはずなのに。
そして、ハゲたせいで魔法が使えなくなったとかだと将来が心配だ!
「・・・・・・」
長い沈黙。
流石に不躾だったかな?
おもむろにスキン男が動いた。
顎髭を摘んで、ペリッと・・・。
付け顎髭っ!?勿論髭も眉毛も。
「笑いたきゃあ笑うがいいさ。どうせ俺は昔から毛が生えたことがないっての・・・」
何と言うか悲壮感?
もうあまりからかわないであげよう、苦労してそうだから。
「今後気をつけます」
「ごめんなさい、教官・・・ユウアちゃん、今日は一旦ここまでにして、部屋に戻ろうか」
「お、お前ら~」
スキン男男泣き。
一人にしておくか。
部屋に戻って俺もユリィと戯れたいし。
教室を出ようとして思い出した。
「あっ、リタさん、クエストは?」
「あっ・・・」
再び迷宮に向かった。