第23話 魔物らしくないのだが
「明日一緒に迷宮に行かない?」
本を読んでたらそうリタさんが言ってきた。
何でも一人だと難しくて手伝ってほしいらしい。
ま、外に出るのも慣れてきたからついて行きますか。
で、手を繋ぎながらとある教室に向かった。
何時の間にか手を握られていた、そして振りほどけない・・・。
教室の中にはスキン男がいたが、スルーしてリタさんに何で教室なのか質問。
何でも教室内の学移陣から迷宮に行くことができるとのこと。
それくらいではもう驚きはしない、と思ったのだが・・・
「学校だけで数百もの迷宮があるんだって」
「数百・・・」
「それで、今回のクエストは魔物のドロップアイテムが必要なんだけど・・・」
「だけど?」
「す、進めばわかるからっ」
学移陣に乗って迷宮に入った。
おおー!
5mほどの幅の道が続いていて、天井を含む周り全てが石!
そして何故か明るくて、曲がり角が直角にあるのが見える。
人工迷宮って名が相応しい気がする。
で、スキン男は何故ついて来る?
「はっはー、リタがガキと迷宮に入ると聞いて、罠に嵌まるところが見られるかもしれないんでな」
何も聞いてないっての。
「リタさーん」
「あはは、教官に相談したら・・・」
まあいいか。
少し進むと複数の魔物の反応が。
そこには、
猫戦士×3
猫騎士×3
猫魔術師×4
猫プリースト×1
二足歩行でスケイルメイルを装備し、勇ましく小さな斧を構え、勇ましく敵を見据えるブチの猫戦士。
二足歩行でプレートメイルを装着し、凛々しく小さな槍を前に突き出し、凛々しく敵を見据える金色の猫騎士。
彼等の後ろで、二足歩行で黒ローブを羽織り、全てを吸い込むような闇を放つダークワンドを携え、全てを吸い込むような暗い目で敵を見据える黒い猫魔術師。
同じく後ろで、二足歩行で白ローブを羽織り、全てを見透かすような光を放つクリスタルロッドを携え、全てを見透かすような目で敵を見据える白い猫プリースト。
可愛いぜ畜生っ!
普通の猫の1.5倍位の大きさで、戦士系は顔以外どこぞのお供にゃんこに似ている。
蹴りたくなってきた。
そしていきなり数が多過ぎ。
「はうっ、やっぱり・・・戦えないっ!」
可愛くて倒せないらしい。
わからないこともないけど、ターゲットなのかな。
よく見たら実は全員震えているので、保護欲がすっごく駆り立てられる。
・・・ペットにできないかな?
「ワーキャッツはその愛くるしさと逃げの速さで「ウッドバインド」・・・」
地面から木の根っこを沢山生やして・・・くそっ、猫だから素早い。
だが鈍臭い白猫一匹の束縛に成功。
他の猫達が必死に仲間を助けようとしている。
「ハク、今助けるぞ」
「くそっ、何で、何でハクがっ」
「わ、私達が囮になるからその間に」
「これ硬いっ」
「私を置いて逃げて!皆殺されちゃう!」
「ばかやろう!んなことできる訳ねーだろ」
「・・・束縛したということは直ぐに皆殺しは無いはず」
「束縛されてるハクも可愛い」
「ちょっ、変なトコ触んないで!」
脳内でそのようなやり取りが続いていた。
どうしよう。
ペットは欲しいけど、引き離すのもどうかと思う。
・・・全部捕まえよう!
「ウッドバ・・・」
ワーキャッツは逃げ出した。
この薄情者ー!
「フルフレイズ」
逃げていくワーキャッツに放ったのは高速火炎連弾、そして任意の場所でエクスプロードを発生させ る広範囲爆撃魔法である。
創作魔法の一つ、在り来りだけどね。
ワーキャッツは避けられなかったようだ。
あれっ?
何もアイテムを落とさなかった。
「・・・ユウアちゃんだから気にしたらダメ、気にしたらダメ・・・うんっ。ワーキャッツ自体は沢山出てくるけど、すぐ逃げるしアイテムは落とさないから無視して進めばいいよ。でも、奥にいる目的のワーキャットキングの周りに大量のワーキャッツがいて、手出しできなかったんだよね」
逃げるって、それでいいのか迷宮の魔物よ。
「おい・・・そいつはどうするんだ?まさか連れて帰るとかか?」
「それ以外に何か?」
「はっはー、無知なる後輩(予定)に教えてやろう。魔物は迷宮の外に連れだそうとすると消滅してしまう。そうだな、倒せないのなら俺がトドメをさしてやろ「カチッ」う?」
意気揚々と白猫に近付こうとしたスキン男だが、トラップを踏んだようだ。
スキン男の足元が見事に凍り付き、固まった。
発動元はリタさん。
リタさんって結構感情的に魔法を発動させるタイプか?
「ユウアちゃんっ、この子何て名前にする?それよりもどうやって連れ出す?」
リタさんの目が尋常でないくらい輝いている。
俺はウッドバインドを操って木の籠(檻とも言う)に白猫を入れた。
白猫は隙間から顔を出してどうにか逃げようともがいている。
「全く、逃げたら爆撃されるだけだってのに」
そう言うと白猫は動きをピタッと止めた。
言ってること分かってる!?
白猫と目を合わせる。
白猫はそっと目を泳がせた。
これは・・・かなり知能がありそうだ。
「入り口から出る、出口から・・・出口って何処に繋がってる?」
「出口は教室に戻れるよ。うーん・・・「「転移魔法?」」
被ったー。
在り来りだけどやってみるだけやってみますか。
「だけど私お金が・・・」
「僕って使えるかな?」
「わからないけど・・・お金、大丈夫なの?えーと、多分3万ノットなんだけど・・・」
「ちょっと待てー、使えないし第一転移魔法でも失敗したって例があるっ!」
「お金は・・・大丈夫。使えなかったらリタさんに支払うよ」
「それは・・・うんっ、やってみて」
二人で戻るため、片手で籠を持ちながらリタさんと手を繋いだ。
「俺の話を聞「リスクール」待てっ!俺を置いてくなーーーーーーー!」
男の叫びが虚しく轟いた。