第10話 大切なものを失ったのだが
「エアリアルアシスト・・・どけっ、ブラストウインドっ!」
目の前に現れる魔物を突風で吹き飛ばしながら、入口を目指す。
あいつを追いやった罪悪感なんてない。
人を殺した弊害がいずれ出る可能性もあったが、慎ましく母様と暮らしていければそれでいいんだ、後は何もいらない必要無い。
そう、ここから、母様との新しい生活が始まるんだ。
希望を胸に、俺は迷宮を駆けた。
迷宮から家の裏に出た所で、母様が見えたが、母様は頭を抱えて膝を突いていた。
「お母様っ」
駆け寄ると、母様の顔は苦痛の中で何とか笑顔を作っていた。
「終わった・・・のね」
「どこか痛いのですかっ?何かあったのですかっ?」
そう言うと、母様は昨日のように俺を強く抱きしめたが、・・・余りにも力が無かった。
「死ぬ時が・・・来たのよ」
「何で、何で母様が死なないとならないのですかっ?」
「言って・・・無いもの。奴隷の主人が・・・選べる選択肢・・・死んだ際苦痛を奴隷に与えて・・・殺せる」
「そんなの聞いてないですっ。何で言「貴方に言えば・・・叶わない・・・私の望み」」
「っ!お母様は僕と一緒に居たくなかったのですか?」
「そんな訳ないっ」
「ならっ「私は・・・貴方の未来に・・・居てはならないほど・・・」」
知っている。
母様があいつのお金の為に体を売らされていたことを・・・。
涙が溢れてくる。
どうすればいい?俺は何をすればいい?
「それでも「うぐっ、」母様!?」
「聞いてっ・・・私自身が・・・もう耐えられなかった・・・貴方の成長は・・・楽しみだった・・・けれど・・・決めた・・・貴方が普通の子供・・・じゃないと分かって・・・奴隷は自分から・・・死ねない・・・だから・・・それにもし・・・失敗したら・・・これまで以上に・・・これが昨日・・・貴方の想いに答えられなかった・・・理由・・・本当に昨日は・・・迷ったのよ?」
「母様・・・」
母様は抱きしめていたのを解いて、俺にキスをした。
温かい何かが体に流れ込んでくる、その途端に母様の体から力が抜けて倒れ掛ったのを体で受け止めた。
「母様?」
「ありがとう・・・貴方が私の・・・子供で良かっ・・・た」
母様は俺に抱かれて逝った。
「はは、さま?母様!お母様ーーーーーーーーっ」
夕暮れ時、大きな叫びが静寂を切り裂いた。
閑話ののち学校編に移りたいと思います。ご意見ご感想お待ちしております(忙しいので返信は殆ど出来ないですが)。