断章1
断章一 結霞の日記
『4月4日木曜日晴れ。
今日は大きな出来事が起きたの、とてもいい出来事。
ようやくお兄ちゃん、創一が来たの。
これから仲良くなっていこうと思ったのに、結霞が大変な事をしちゃったの。
創一お兄ちゃんが作ったカレーの隠し味にコーヒーを使っていたみたいで、また変な結霞が目覚めちゃった。
昔から悩んでいるけど、この体質はどうにもなってくれない。
目覚めている時の結霞は余り見られたくない。特に創一お兄ちゃんには。
私だけど、私じゃない結霞、醒めてる間は意識がなくなってくれれば覚えていないだけ救われるけど、はっきりと憶えているし、その時の結霞の意思で動いているからなおの事嫌い。こんな結霞なんかいなくなってくれればいいのに。
でも、嫌いな結霞は、私にできない事をしてくれる。
ご飯の時創一お兄ちゃんを可愛がったのもそう、初めて会った時に結構可愛いかもって思った想いをもう一人の結霞が伝えてくれた。あそこまでしなくてもいいのにって思うけれど、思う存分に可愛がれたことは結霞に感謝したい。
でも、やっぱり、それを含めても嫌い。
たぶん一生好きにはなれない、私が持っていないものを持っている私だけど、それでも嫌い。
もう一人の結霞が持っているものは私もどこかに持っているはず、あの結霞の十分の一でもいいから結霞が積極的になれたら、今の私が変わって、あの結霞がいなくなるかもしれない。
そうするためにも、ちっちゃくてもいから、少しずつ勇気を蓄えていく。
結霞のいいところを使う勇気を得るためにも。
もう一人の結霞の出る幕を全て奪うためにも。
そうしていればいずれいなくなると思うから。
だから私は頑張る。
結霞自身のためにも。
何かを変えるために。
そしたら結霞のことを好きになることができるかもしれない。
お疲れ様、もう出てこなくていいんだよって言うためにも。
創一お兄ちゃんがきた事で変えられそうな気がするから。
だから嫌いな結霞を好きになれるかな、なんて考えたのかな。
そんな日がきたらとても素晴らしいと思う。
それともう一つ、創一お兄ちゃんに私の裸を見られた…かも。
それよりも、てんぱっちゃって創一お兄ちゃんに色々投げちゃったけど、怪我していないといいな。
罪悪感から、お風呂上りでも創一お兄ちゃんのことちゃんと見ることができなかったから、不安が胸の中にいっぱいある。
けど、ちゃんと謝ったら赦してくれるよね、優しそうな人だったから。
明日、ちゃんと謝ろう。
そして距離を縮めよう。
創一お兄ちゃんと仲良くなりたいから。
これが明日の目標!』