第4-2章
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うぅ、何だか頭の中に重たい物が横たわっている感じがするな。また、あのよくわからない夢は見るし、目覚めとしては最悪の方の部類に入るな、これは。
そんな頭を振りながら、ぼさぼさの髪と、寝起きの不細工な顔で、目覚まし時計を確かめてみる。
現在時刻――1時半手頃。
おぉ、休日らしい自堕落な時間に起きれたものだな。我ながらよくやった。これでこそ学生の休日と言うものだ。いやぁ~高校生生活を大満喫じゃないか。
これでもう、高校生マスターと名乗っても何の問題もないだろうな。よし、じゃあ今から俺の事をそう呼んでくれ。
……、などと本当にくだらないことを寝起きからのたまった所で、何か大切なことを忘れているような気がするんだよな。
なんだったっけ?
昨日起きた出来事に関係していたって事は覚えているんだけれど、三途の川を渡りかけた時に頭の中から抜け落ちたか? ……あっ、思い出したわ。
なんで彩音さんに彼氏がいないかってことか。
あの人、普通に立っているだけなら綺麗で大人っぽい人なんだけど、何かと荒々しい所があるみたいだから、そこがネックになっているのかなぁ。なら、ドMの人を見つけてあげれば円満な関係を作ることができそうだな。そうなってくれれば、昨日みたいに黄泉の国観光ツアー的な事が急遽開催されても、案内される相手がその人になってくれるだろうし、俺にも被害が無くなるな。
おぉ、いいとこ尽くめじゃないか、是非そうしてもらいたいな。
……ん? あれ、いや、思い出さなきゃいけない事はこんなな毒にも薬にもならないような事じゃなくて、もっと大切なことだったと思うんだが、何だったか。……あっ、今度こそ本当に思い出した。
結霞ちゃんの事だ。
なんでこんな大切なことを忘れていて、彩音さんのあんなどうでもいい事を覚えていたんだろうか? ん? なんか、今、背中に冷たい物を感じた気が……気のせいだよな。そういう事にしておこう。
振り向いたらすぐそこに彩音さんがいました。なんて事は止めてくれよ。
そんなホラー映画よりもホラーな出来事が起きたら、再び夢の国にお出かけすることになるので。
ちらりと後ろを覗いて、誰も居ない事が確認できたので、続きを思い出す。
昨日は一日、結霞ちゃんのデートの予行演習に付き合って、それで帰って来たんだよな。
で、本来のデートの相手、確か吉田君とか言ってたっけ? その人と今日の2時に俺と待ち合わせをした、あの噴水のある公園で待ち合わせをしているらしいな。
そうか、2時に待ち合わせをしているのか。
……。
あれ、なんだろう、なんか急に汗を掻き始めてきた気がするんだけど。
ちょっともう一回時計を見てみようか。
今の時間は、1時38分、2時まで残り22分。
あの公園で、待ち合わせの時間に間に合うように家を出るなら、もうそろそろ出た方がいいわけであって、そんな時間になっているのに今だに俺は寝間着姿になっているわけであって、これは一体どうしたらいいでしょうか?
おせっかいかもしれないけれど、デートの予行演習までしたのだから、結霞ちゃんには絶対上手くっていって貰いたいわけで、その様子を窺って見たいと思っていたので、こっそり後をつけるつもりだったんだけど、この時間って、ヤバくね?
軽いパニックになり焦っていた時に、外の方から結霞ちゃんの元気な「いってきまーす」が聴こえて、焦りに拍車をかける。
あらまぁ、一体どうしましょう。無限の彼方にでも羽ばたきましょうか?
ひとまずやる事は決まっているから、全力でそれを遂行しよう。
と言う事で、即行で着替えて、寝起きの身体に鞭を打って全速力でバス停に向かうのだった。
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