入学偏---------3
イヤァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!!!!
シャベッタアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァl!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「――ああああああああもう!! 気に入らねぇ!!」
源三郎に職員室に来るように呼び出された、昴とヒューズは広い校内を二人で歩いていた。HRが終わった後、ほとんどの生徒は下校したのだが、予め呼び出しを受けていた二人はこうして、帰らずに職員室へと行かなければならないのだった。
ヒューズが未だに怒っているのを見て、昴は苦笑した。恐らく、これ以上は何を言っても無駄だろうと悟ったのだ。
朝のHRの一件は、その場凌ぎに過ぎなかった。それに、無理に説得してヒューズの怒りの矛先が自分に向くのは面倒だった。昴は、特に何かを言わずにさも意味ありげな様に、首肯するだけだった。
「なぁ、昴もそう思うだろう!? ったく、あのモブ爺の奴いきなりチョークなんか投げやがって……。教師が生徒に暴力振るっていいのかよ」
(モブ爺っていう名前はもう固定なんだ……)
「そうだなぁ。暴力を振るうのは確かに良くない事だと思うな」
あくまでも、『自分達が悪い』という事実を除いて肯定した。昴は、その後も適当にヒューズの愚痴を受け流しつつ、先を急いだ。
途中、何人かの上級生に遭遇したが、ヒューズの事で手一杯だった昴は挨拶等の行為を一切せずに素通りしていた。当然、怒っているヒューズはそんな事構うわけも無く、時々ぶつかってはヒヤシヤしたものだが、昴が申し訳なさそうに会釈をすると釈然としない顔をしながらも、その場は治まっていた。
そろそろ、気苦労で精神が擦り切れそうになったところで、やっと二人は職員室の前に着いた。学園内には様々な施設が揃っているので、驚くほどにその中は広い。
教室から教室への移動も一苦労である。
「ほら、ヒューズ。職員室着いたから、そろそろそのスネてる顔を戻しなよ」
「スネてねぇよ!」
「っという冗談は置いて、本当にその不貞腐れたような顔は止めた方が言いと思うよ。ただでさえ、源三郎先生に喧嘩売っちゃったんだし」
「ふんっ。あんなモブ爺なんて臆することねぇよ。次、アイツが何かしてきたら返り討ちにしてやる」
そう意気込むヒューズの隣で、昴は一人溜息を吐いた。
(僕が思うに、多分ヒューズじゃ無理だな……)
昴はそう思いながら、職員室のドアを開いた。ノックを忘れてしまったため、いきなり入ってきたように思えたらしい。中に居る教師達が、驚いてこちらを見ているのが昴には感じ取れた。
しかし、それでもめげずに昴は精一杯の愛想笑いで中に居る教師達に声をかけた。
「すいません、ノックし忘れました。日出源三郎先生はいらっしゃいますか?」
中に居る教師全員に問いかけると、すぐに年配の教師が返事をした。
「中に入って来い。日出先生ならそこにいるぞ」
年配の教師が顎で示した。確かに、その先には源三郎が座っていた。職員室のど真ん中に位置する席に座っているが、どこか様子が変だった。自分から呼んだにも関わらず、入ってきた二人に全く気づいていないようだった。動きがほとんど無い。
「死んでるのか?」
「馬鹿っ」
昴がヒューズの頭を叩いた。
(ったく……。時と場所をわきまえてほしいよ)
「日出先生、一年の黒爪昴と、錦戸ヒューストン拓也です」
昴が源三郎の前に立つと、ゆっくりとその身体が動き出した。昴の横で、ヒューズが「動いたぞ!?」と目を丸くしているが、特に気にしなかった。