入学偏---------2
キィィィィィィェェェァアアァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァアァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッ!!
イイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィヤッタァァァァァァlッァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
シャベッッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「よっ!」
「えっ? あ、よう?」
突然話しかけられたので、昴は驚いて間抜けな返事をしてしまった。振り向くと、そこに居たのは自分と同じ制服を身に纏っている男子生徒。少し細めの狐眼とツンツンと跳ね散らかっている金髪が特徴的な男子だった。その顔には似合わず、人懐っこそうな笑顔を浮かべている。
昴はじっと静かにその男子生徒を見つめていたが、それに戸惑っている男子生徒を見て自分の中で一つの答えを出したのか、ふっと笑顔になる。
「こんにちは。今日から、入学してきた黒爪昴です。よろしく」
「お? おう! 宜しくな。俺は錦戸ヒューストン拓也。イギリス人と日本人のハーフだ。名前は長いから、拓也でもヒューズでもどっちでもいいぜ」
(あぁ、だから金髪なのか。てっきり染めたからだと思っていたけど、ハーフだったのか。言われてみれば、何処と無く顔つきも違うしね)
「そうか。じゃぁ、宜しくヒューズ」
「おう、宜しくな! 昴!」
その後、昴はヒューズと暫く他愛も無い雑談をしていたが、やがて教師が来るとその口の動きも止まった。
教師が教室の前に立ち、頭を下げた。そして、流麗な字で黒板に名前を書き出す。少しくたびれた感じがする、年配の男性で身長は一七〇そこそこぐらいであろうか。やはり、生徒を統率する教師とだけあって老人ではあるが、体格は良かった。目は皮膚が垂れていて隠れている。
「生徒の諸君、入学おめでとう。わしの名は、日出源三郎だ。君達で丁度二〇回目の生徒を受け持つ。担当教科は、《魔法技巧》だ。もし、武器等についての提案や不安、又はメンテナンス等において、質問があれば遠慮なく聞いてくれ」
源三郎はそう言うと、弱弱しそうに咳をする。
すると、後ろからヒューズが昴の肩を叩き、小声で話しかけてきた。昴は振り向かずに、「何?」と聞き返す。端の席なので目立つことは無いだろうが、初日から教師にめを付けられるのは御免なので、昴は声のトーンうぃかなり落していた。
「おい、あの爺さん大丈夫かな? いい身体してるけどさ、目は見えてるのか見えてないのか分からねぇし、何処と無くモブキャラな感じがするし」
「モブキャラってお前なぁ……。一応、教師なんだから大丈夫でしょ」
「いや、でもさぁ――」
そう言い掛けたところで、ヒュンッと鋭い音が昴のすぐ近くから聞こえた。咄嗟に顔の位置を動かし、その飛んできた何かを避ける。
次の瞬間、――カツンッとヒューズのおでこにチョークが当たった。チョークはその衝撃で粉々に砕け散った。
「――いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 何すんだこのモブ爺!!」
(モブ爺ってお前なぁ……)
昴は心の中で溜息を吐きながら、苦笑いした。そして、脆くも昴の『目立たない』という目標は崩れ去っていった。源三郎はその温厚そうな顔は崩していないし、怒った雰囲気も無かった。
ヒューズが源三郎の投げたチョークで怒っているのを、昴が宥める。元々、話をしていた自分達が悪かったのだ。
「ほら、ヒューズ。止めておけ。これから教師に目を付けられたくないだろう? ただでさえ、僕達は《ウィード》なんだ。評価が悪くなったら、何をされるか分からない。な、ヒューズ? 今は取りあえず我慢しよう。それに、今回は僕達が悪いんだ」
小声でヒューズにそう耳打ちをする。すると、ヒューズは若干冷静になったらしく昴の言葉を素直に受け止めて、ゆっくりと座った。
「わかったよ。昴がそこまで言うなら、俺は何も言わない」
「あぁ、それでいいんだ」
(ヒューズはキレやすいっと。よし、覚えておこう。ついでに、宥めるのも簡単だと)
「ふむぅ」
源三郎は愉快そうに昴たちのやり取りを見ていたが、やがて出席簿に目を移すともう一度昴たちの方を見やる。
「錦戸ヒューストン拓也、黒爪昴。君達二人は後で、わしのところに来なさい。個人的に話がある」
そういうと、源三郎はクラスのほうに視線を向けた。
「それでは、HRを始める」
そして、昴たちはその時間中、クラスの生徒からの微妙な視線に苛まれるのだった――。