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白銀の流星  作者: 世捨人
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65話

ルイスが気付いた2日後、ビクター王太子一行は次の外交先ソヴィエ連邦に旅立ち、ルイス達私用組はシンカ共和国経由でローレンシア神聖王国のスタイン領に向かった。


「あ~久しぶりに姉上にお会いできますわ」


「フラン、5年ぶりだっけ?うちに修行に来てからは会ってなかったもんね」


「そうなの、何度か領地には帰ってみたんだけど、いつも入れ違いで会えなかったのよね」


「もうご結婚されてるんでしたっけ?」


「ええ、丁度わたくしがレジアス家に行く前でしたわ。いまでは2児のママですのよ」


「そっかぁ~フランはもう伯母様なのね」


「ぐっ……なんか嫌な響きね」


「そうなるとハンス伯父様?」


「お・おい、僕達はまだ結婚してないんだから今はハンスお兄さんだろ」


皆のやり取りを聞きながら笑っているルイスにマイクが話しかけた。


「ルイス君、ハンス先輩とフランソワさんがスタイン領に行くのはわかるんだけど、どうしてルイス君達まで?」


「マイク先輩にも関係あるんですけど、スタイン領でもこれから薬草の栽培を始めるんですよ。それでうちの領地から農家の人が指導に行ってるんですけど、僕からもアドバイスできることがあればと思ってね」


「俺は実際にスタイン領を見学して勉強できるってわけだね」


「それもあるんですけど、実際農家の方は違う作物を作ることに不安があると思うんです。それをエルザリア領とスタイン領で実際に目にしたマイク先輩が農家の方に話していただければ取り組む意欲が湧くんじゃないかと……」


「確かにエルザリア領で見た領民の暮らしぶりをみると驚いたもんな。そういう話をするだけで希望がもてるよな」


「うちの領地でも最初は協力が得られなくって、直営の薬草園からはじめましたからね。どうしても作りなれた作物から切り替えるには不安がありますから」


「俺の役目は踏み出す勇気を与えることでいいのかな?」


「そういうことになりますね。実際マイク先輩が畑仕事をする姿は想像できませんしね」


「あはははは、そりゃそうだ。でも、俺達はこんなことしてて良いのか?」


「どういうことでしょう?」


「グランディアで澱が出現したり、その影響でグランディアの制度改革の手助けもするんじゃないのか?」


「澱のことは陛下が他国と協議しておりますから、今は僕達の出番はないですし、制度改革については兄さん達が個人的に協力するだけのことですから問題はないと思いますよ」


「実際、俺が何かできるわけでもないけどなぁ~」


「マイク先輩、先程話したように領民に希望を持たせることがマイク先輩にできることなんです」


「どういうことだ?」


「澱は人の負の感情を餌にします。領民達が希望を持つということは澱に汚染される人々が減るということなんです」


「そう思えば気合が入ってきたぞぉ~」







グランディアを発って無事シンカ共和国を抜け、大陸最南端の街道からフランソワの実家スタイン領に入った。


国境を越えてから半日でスタイン領の城下町スタンに到着した一行は、そのままフランソワの実家スタイン城に入っていった。


城の上層部にあるサロンに案内された一行を妙齢の美女が笑顔で待ち受けていた。


「お姉さま、ただいま戻りました」


「フラン、おかえりなさい。しばらく会わないうちに随分大人になったわね。皆様、わたくしはカトレア・シュベルト・スタインと申します。妹がいつもお世話になっております」


「お姉さま、こちらはレジアス家のランちゃん、エルザリア家のハンスさん、ルイス君、アルカシド家のマイク先輩よ」


「もうすぐ主人もこちらに来ると思いますので、それまでこちらでお寛ぎください」


「お姉さま、おチビちゃん達は?」


「今、お昼寝してるから、あとで紹介するわね」



しばらくサロンでフランソワの修行時のエピソードや学院での様子などを話していると、慌てた様子でひとりの男性が近寄ってきた。


「お客様をお待たせして申し訳ありません。私がレオパード・ベロア・スタインでございます」


深々と頭をさげるレオパードにハンスが立ち上がって声をかけた。


「レオっ、レオじゃないか」


レオパードがハンスの声に驚いて顔をあげると一段と驚いた顔をしてハンスに返事をした。


「ハンスさま?」


「ああ、ハンスだよ。それにランもいるぞ」


「ラン様?」


「兄さん、お知り合いなのですか?」


「ああ、前に炎王近衛騎士団でビクターの護衛を担当してたんだ。丁度ルイスが領地に居る頃だな」


「ああっ、思い出したわ。突然居なくなってクビになったんじゃないかと心配してたのよ」


「ラン様……」


「あなた、団長や貴族に対しても言いたい放題だったから本気で心配したのよ」


「ご心配をおかけしました。その言いたい放題が義父上に認められましてスタイン家に婿入りすることになりました」


「あら、皆様お知り合いだったんですね。とりあえずお座りになってください」


「フランちゃん、レオパードさん達の驚きようからすると僕達が来ること知らせてなかったの?」


「あははは、お客様連れて帰るとしか……ごめんなさい」


一同から呆れた顔で見られたフランソワは、とりあえず謝罪した。


「マイク殿もお久しぶりですね」


レオパードの言葉にマイクも笑顔で返した。


「あれ?マイク先輩もお知り合いなの?」


「ああ、隣の領地だからね。夜会で何度かお会いした程度なんだけど」


「へぇ~皆身近なところで繋がりがあったんだね~」


ルイスの感慨深げな呟きに一同も頷いた。


その後、レオパードが護衛をしていた時代にハンスやラン達が行った悪戯の数々や、フランソワの修行時代の失敗談などで盛り上がり夕食の後までも話が尽きることはなかった。

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