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白銀の流星  作者: 世捨人
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64話

ルイスの目覚めを知り、続々と見舞い客が訪れていた。


「ルイス、リンダ達を守ってくれたこと感謝するぞ」


「ビクター兄さん、当たり前じゃないか。お礼を言われるようなことじゃないよ」


「ルイス、身体は大丈夫なのか?」


「兄さん、少しダルイけど問題ないよ。怪我もしてないしね」


「それは良かった。無理はするなよ」


ビクターとハンスは柔らかい笑みを浮かべルイスを見た。


「ルイス様、この度は大変なご活躍でございましたな。今後の賠償請求等は我々にお任せいただいて、ごゆっくりお休みください」


「賠償?皆が無事なんだから必要ないよ」


「しかし、国家間でこういう問題は軽く扱ってはいけません。外交とはそういうものなのです」


「僕は友人のマリアさんのお宅に遊びに来ている私人だよ。外交云々言うならマリア殿下がおられる前でこういう話をする貴方は国際問題を起こしたいのですか?」


「しかし……」


なおも食い下がろうとする役人を前に、ルイスはベッドの横にあった剣をとり構えた。


「澱に取り付かれそうな人がいるから、もう一度浄化を……」


役人は慌ててルイスに謝罪して部屋を飛び出していった。


「マリアさん、見苦しいとこを見せちゃったね。彼らも悪気があったわけじゃないから許してやってね」


「わたくし達は何を要求されても問題ないと考えておりますから気にしないでください」


「そういえば怪我をした兵士さん達は大丈夫なの?」


「はい、救護兵が来る前にリンダちゃんが治癒してくれましたので全員無事です」


「流石リンダちゃんだね~」


「えへへへ、ルーちゃんが頑張ったのに死傷者がでたら嫌だもんね。でも、怪我は治ったけど流した血は戻らないから少し心配ですわ」


「兄さん、今回の納品分に疲労回復のお茶ってあったっけ?」


「ああ、2樽はあると思うぞ」


「マリアさん、そのお茶を1日1回で良いから飲ませてあげて欲しいんだ。身体を活性化させる効果があるから血を増やすのも早くなると思うよ。あとは栄養をしっかり取るようにすれば大丈夫」


「兵士のことまで気遣ってくれて、皆様本当にお優しいですわね。早速手配しておきますわ」




     コンコン


「はぁ~い」


「ルイス殿が目覚められたと聞いてきたのだが……」


部屋に入って来た人物を見て、ルイスは急いでベッドから降り頭を下げた。


「陛下、態々のお越し痛み入ります」


「ルイス殿、楽にしてくだされ。国を預かる者としてもラクウェルの父としても心より感謝いたします」


「いえいえ感謝される程のことはしておりません。僕の未熟さ故に倒れてしまうという失態をおかし、かえって皆様に心配をかけてしまいました」


ペコペコと頭を下げあってるルイスと皇帝に呆れ顔でマリアが声をかけた。


「父上、ルイス君からは要望を聞いてますので、後でお伝えしますわ」


「わかった。儂に出来ることなら何でも言ってくれ」


「兄上や母上も呼んでおいてくださいね。それからビクターさんにも関わることなので同席願えますか?」


「俺もか?ハンスは良いのか?」


「ビクターさんだけで結構です。これは国対国ではなくって家族の話ですから」


「よくわからんが了解した」


それではと退室しかけたマリアにルイスが声をかけた。


「あっマリアさん、さっき話してたラクウェル殿下の悩みはビクター兄さんや兄さんが手助けできると思うよ。二人はそういうの得意だから」


「ルイス、何の話だ?」


「ラクウェル殿下がね、貴族や官僚の制度改革に乗り出すらしいんだ。今回の件で大量に体調を崩した人がでたらしくって……」


「そういうことなら俺もハンスも協力させてもらうよ。下手に貴族や官僚が口を出すと保身や既得権益を守ろうとするだろうしな。ハンスも問題ないよな」


「僕だって次期貴族の当主だぞ?」


ハンスは笑いながらビクターを見た。


「ここに居る者で自分の利益を優先させるような考えは誰も持たないじゃないか。そういう細々したことはハンスのほうが良く知ってるしな」


「あはははは、できる限りの協力はさせてもらうよ」


「皆様、本当にありがとうございます」


再度マリアは頭を下げ、ビクターを伴ってルイスの部屋を後にした。





「さてルイス、いろいろ聞きたいことがあるのだが?」


「そうだろうね」


「まず、あれは本当に澱だったのか?」


「間違えないよ、兄さん。精霊王達もそう言ってたからね」


「澱は200年前にアーサー様達が殲滅したのではなかったのか?」


「殲滅したのは大神殿に関わった分だけだったらしいね。当時の大神殿には個人の欲望が渦巻いていたらしいから澱も成長しやすかったみたいだね。今回のは個々の欲望を集約したものじゃなくって、個人の欲望を餌に成長したものらしいんだ」


「つまり何処に潜んでいるのか分からないってことだな」


「そうだね。数少ない強大な敵ではなくって多数の敵……」


「ずいぶんと性質が悪い相手だな」


「とりあえず今回光で覆われた場所は暫く大丈夫だと思うけど、残った場所をどうするかだね」


ハンスとルイスが難しい顔をして考え込んでいるとランが不機嫌な顔でルイスに話しかけた。


「ルイス、ハンスさんと考え込むのもいいけど私達にもわかるように全部話しなさい。剣のこととか精霊王様のこととか知ってる事全部よ」


ルイスはそれもそうだとラン達に話し始めた。


「この剣はアーサー様が精霊神殿に預けてた物なんだ。エルザリアやレジアスの剣はその血をひく当主にしか使えないから、使い方を間違えない者のしか抜けないようにしてね」


「使い方を間違えない者って?」


「具体的には精霊や神の加護を受けた者。精霊や神は魂の穢れを見抜いてしまうからね」


「私も精霊の加護を受けてるけど抜けなかったわよ?」


「それは既に僕が剣に認められてしまってるからだよ」


「な~んだ。それでその剣はレジアスやエルザリアの剣と同じ力をもってるの?」


「エルザリアとレジアスの剣は『知の神』と『生命の女神』の加護を受けてるのは知ってるだろう?この剣はそれに加えて『道徳の神』と『愛の女神』の加護も受けてるんだ」


「まあ、とりあえず凄い剣だってことはわかったわ。でもルイスは精霊と契約してないのに何で使えたの?」


「僕は精霊と契約してないというより契約できないんだ」


「契約できない?」


「皆は僕が領地で暮らしてた時に森に住む老夫婦から武術や魔術を習ったことは知ってるだろ?」


「それは何回も聞いてるから知ってるわよ」


「その老夫婦は神の加護を受けていたんだ。それで僕が領地から王都に戻る時に老夫婦から神々に加護をお願いしてくれたんだ。それで僕は神々からの加護を賜ったんだ。それも4神全部からね」


「4神全部の加護!?」


「神の加護は精霊より上位になるから精霊の加護は得られないんだ。でも無条件で精霊は力を貸してくれるんだけどね」


「神々の加護があるから武術も魔術も凄いなんてずるいわ!」


「あはははは、加護があるからって武術や魔術が上達するわけじゃないよ。ランちゃんだって精霊と契約したからって強くなったりしてないでしょ?」


「じゃあ精霊の加護とか神の加護って何なのよ」


「精霊の加護は、契約した精霊がいつも傍にいて手助けしてくれるってことだね。精霊の知ってることを教えてくれたりすることだね。それが武術や魔術であっても同じことさ。神の加護はそれが神に変わるだけで、実際は属性に関係なく精霊が教えてくれることになるんだけどね。結局、武術にしても魔術にしても自分自身が頑張るしかないんだよ。ただ、身に危険が迫った時なんかは精霊が守ってくれたりするけどね」


「それでリンダちゃんが危なかった時ミストちゃんが守ってくれたんだね」


「そうそう」


「でもフレアちゃんはそういうこと何も教えてくれなかったわよ」


「それはランちゃんが聞かなかっただけじゃないの?聞けば教えてくれるはずだよ。精霊神殿の神官達も精霊から教えられたことを広く伝えてるだけなんだよ」


「わかったわ」



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