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白銀の流星  作者: 世捨人
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62話

事件後、王城内の王室専用の応接室に皇帝夫妻、ラクウェル、マリア、ビクター、ハンス、リンダが集まっていた。


「ビクター殿、この度はこのような事件にリンダ殿を巻き込んでしまい心よりお詫びいたします。ハンス殿、ルイス殿のお力で事件をできたこと心より感謝いたします」


皇帝パウロ自ら深々と頭を下げ、皇妃アリスやラクウェル、マリアも同様に頭を下げた。


「陛下、もう済んだことですし、リンダやラクウェルにも怪我が無かったのですから頭をお上げください」


「そうですよ、ルイスも疲れて眠っているだけですし、偶々早く気付いたルイスが勝手に動いただけのことです」


「そう言っていただけると少しは気が楽になります。……さてラクウェルよ、あの時何があったのか詳しく話してくれぬか」






ラクウェルが話し終えた後でマリアがラクウェルを睨みつけた。


「兄上はリンダちゃんに守ってもらってたの?」


「我ながら情けないとは思う……」


「リンダ殿下、事件に巻き込んだだけでなく愚息をお守りいただいたこと誠にありがとうございます。なんとお礼を言っていいやら」


「いえいえ、守ったのはわたくしではなくって、精霊のミストちゃんですし……最後にはラクウェル様が身を挺して庇ってくださいました。わたくしのほうこそお礼申し上げます」


頭を下げあってる皇帝一家とリンダを横目にハンスが口を開いた。


「お礼の言い合いは後にして、とりあえず一つ一つ確認していこう。まず犯人のことですが、昨日ロバート様の屋敷でルイスに軽くあしらわれた者で間違いないのですね」


ラクウェルは頷いてハンスに答えた。


「それは間違えない。ナルディ・バグズ・ウェイン、ウェイン侯爵家の長男だ。以前からしつこくマリアとの縁組を持ちかけていたが、昨年マリアに叩きのめされて諦めたと思ってた」


「武術の腕は昨日見たから分かってるんだが、問題は魔術だな、昨日見た限りでは精霊を吹き飛ばす程の魔力をもっていたようには感じられなかったんだが」


「それは俺も不思議だったんだ。ウェイン家からは過去に魔術士を輩出したことなどないんだ……そういえば、リンダ殿の精霊が何か言ってたけど……状況を確認してたんであまり聞いてなかったな」


全員の視線がリンダに集まった。


「えっと、ミストちゃんの話では、あの人は『澱』に魂を侵食されてて、その気配で精霊王様達が来てくれて、ルーちゃんの綺麗な剣がパアァって光って『神気』の光で浄化したって……」


「リンダちゃん、精霊は確かに『澱』って言ったんだな?」


「ええ、ランちゃんも一緒に聞いてたから間違えないですわ」


「ということは、あの光で覆われた範囲は浄化されたと考えて良いから、一応これ以上の被害は無いと考えて良さそうだな」


ハンスの言葉に一同は安心した顔をしたが、皇帝が疑問を投げかけた。


「『澱』に侵食されたのは犯人だけなのだろうか?」


「『澱』に侵食されていた者が他にもいたとすると、今は犯人と同じように昏睡状態かな?なにせ『澱』に侵食された魂の一部が無くなったわけだから無事ではすまないでしょうね」


「そうか」と皇帝は何かを考えるように目を閉じ、ふたたび口を開いた。


「それならば、『澱』のことは伏せて王都内を調査してみよう。特に、貴族と官僚をな。『澱』は人の欲望に引き寄せられると聞いておるから、あの光にあたり昏睡状態になったり体調を崩した者を調べれば不正が発覚するかもしれん」


「父上、それは俺が近衛兵を使って直ぐに調べてみるよ」


ラクウェルは急いで部屋を後にした。




犯人が昏睡状態である為取調べも出来ず、これ以上はラクウェルの調査待ちということで解散し、マリア達はルイスの部屋に向かった。


「ランちゃ~ん、ルイス君の具合は……ってあなた達何やってんの?」


部屋の中では、ランとフランソワがルイスの剣の柄と鞘を持って二人で引っ張っていた。


「何って……ルイスが起きないから、剣を見ようと思ったんだけど抜けないのよね~」


「ランちゃんがルイス君を心配して泣いてるんじゃないと心配して来てみれば……」


ランはキョトンとした顔でマリアを見返した。


「なんで私が泣くの?精霊王様が疲れてるだけだって言ってくれたから心配なんかしてないわよ?」


マリア達は呆れ顔で溜息をついた。


「それで何をしてるの?」


「見たことない剣だから、よく見たいなぁ~って」


ハンスが苦笑しながらランに告げた。


「ランちゃん、その剣はルイス以外には抜けないから無理だよ」


「あれ~ハンスさんは知ってるの?」


「ああ、その剣はルイスが学院に入学した時にルーベシア商会から入学祝として貰ったもんなんだ。その時はボロボロだったんだけどね。誰にも抜けなくって放置されてたらしいんだけど、ルイスには抜くことができたんだ。それで調べてみたら精霊神殿から100年前に盗まれたアーサー様の奉納した剣だとわかったんだ。その後、地の精霊が修理してくれて今のように綺麗な剣になったらしい」


「「「アーサー様の剣!?」」」


「精霊神殿の話では、200年前の戦いの後で万一のためにと預けられたそうだ」


「でも、その剣がどうして此処に?ルイスは持ってきてなかったわよ?」


「その剣はルイスが呼ぶと何処に居ても召喚できるそうだ。それはエルザリアの剣やレジアスの剣でも同じだそうなんだ」


「剣が召喚できるなんて聞いたことないわよ。ハンスさんは知ってたの?」


「いや、僕もルイスから聞いてはじめて知ったんだ。長い間使われることがなかったから、そういった剣の力も忘れられたんだろうってことだ」


「どちらにしても、まだ剣を継承していない私達には使えない力ね」


「そうだね。ルイスが起きたら、もう少し詳しいことが分かるかもしれないから、それまでは待つしかないね」


「それまで私達に何か手伝えることはないかしら」


「と言われてもな~……よその国だから、かえって邪魔になっちゃうと思うよ」


「やっぱりね~」


リンダが少し考えながら呟いた。


「あのぉ~マリアちゃんとフランちゃんの精霊さんに情報収集ってお願いできないかしら?」


「どういうことだ?」


「風の精霊さんって情報集めるの得意じゃなかったかしら……確か200年前も協力してもらったって書物で読んだような気がするんだけど……」


早速マリアは精霊ジンを呼び出し確認したところ、快く引き受けてもらえることになった。

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