4話
お茶会の翌朝ロンウッドは良い匂いで目が覚めた。
「ん?なんだ?」
「ロン、おはよ~」
ルイスはティーカップを用意しロンウッドに手渡した。
「朝のお茶だよ~。頭がすっきりするよ」
「おお、あんがと」
「今日から授業だね」
「ああ、午前中は数学と世界の理、午後は武術と魔術だったっけ」
「そうだね。どんな授業か楽しみだよ」
ルイスとロンウッドは寮の食堂で朝食をとってから、教室に向かった。
「おはよ~」
お茶会で打ち解けたクラスメイト達と挨拶を交わし、ルイスは自分の席についた。
ガラガラガラ
「みんな、おはよう。今日から授業するぞ」
「「「おはようございます」」」
全員、真新しい教科書とノートを机の上にだした。
ガーランドの授業は教科書を読むだけでなく、実社会で数学がどのように利用されているかを織り交ぜた分かりやすく興味をひく内容だった。
続く世界の理の授業は、教師が淡々と教科書を読む退屈な授業で生徒達は睡魔と闘うのに苦労していた。
午前中の授業が終わり、ルイスはラン達に引っ張られ昨日と同じオープンテラスで食事をしていた。
「数学が面白いなんて初めて思ったわ」
「ランちゃんは勉強嫌いだもんなぁ~」
「確かに数学は面白かったですわね」
「ねっ、マリアもそう思ったわよね」
「ルーちゃんは、どっちも寝てたよね」
「あはははは、朝早く起きちゃったから眠かったんだもん」
「ルイス、そんなんで落第なんてしたら笑い者になるわよ」
「落第しないようにがんばるよ」
「みんな、早く食べて着替えなきゃ武術の授業におくれちゃうわよ」
「「「はい、フランソワ班長殿」」」
ルイス達は着替えた後、運動場に集合したが、リンダだけは制服のまま見学席に座っていた。
「今日から武術を教えるギャランだ」
「「「よろしくおねがいします」」」
ギャランは厳しい顔をしてリンダを睨み声をかけた。
「お前はなんで着替えないんだ?」
「わたくしは身体が弱いので医師から激しい運動を止められています。
学院には診断書を提出して学院長の許可もとってあります」
「ん?そういえば……おお、悪かったな。名はリンダだったな」
「はい、そうです」
「次からは一応着替えてきてくれ。軽い運動くらいはできるだろう?」
リンダはにっこりと微笑み頷いた。
「それでは、今日はみんなの体力を見せてもらう。
まず、この運動場を10周走ってこい」
その後、腕立て伏せや柔軟体操をさせられ授業が終わる頃には殆どの者が座り込んでいた。
「次の授業からは剣も使うから、用意しておくように。
剣を持ってない者は、他のクラスや先輩から借りてきてもかまわないぞ。
それでは、今日はここまで、解散」
続くアネットの魔術の授業も魔力のテストだけで終わり、そのまま終わりのホームルームとなった。
「みなさ~ん、初めての授業はいかがでしたぁ~?
明日と明後日はお休みなので、王都に慣れない人は迷子になったりしないように気をつけてねぇ~
休み明けからは本格的に授業が始まるからがんばってね~」
「「「はぁ~い」」」
「なにか連絡事項はあるかしら?」
ロビンが手を挙げ
「今日の掃除当番は2班の方達です。よろしくお願いします」
と連絡事項を伝え、解散となった。
生徒達が帰り仕度を整え、談笑しながら席を立ったところでキャメルが横柄な口調で声をかけた。
「誰か俺達の変わりに掃除しとけ」
生徒達は顔を見合わせ、無視することにした。
「お前ら聞こえんのか。俺達の変わりに掃除しろと言ってるんだ。
ただとは言わん。掃除1回につき銀貨1枚だしてやる」
生徒達は無視を決め込み談笑を続け、帰りはじめた。
「わたくしからも銀貨1枚だしますわ」
なおも無視され怒った顔をしたキャメルがルイスに近づき
「お前達、昨日掃除したんだろ。銀貨やるから今日も掃除しろよ」
とルイスの肩に手を置いた。
ルイスは軽く手でキャメルの手を払いのけ
「今日は君達の班でしょ?」
と軽く返事をした。
「その辺の草でお茶を淹れるような貧乏人が生意気なことを言うんじゃねえ!
黙って掃除しろよ、銀貨くれてやるから」
「そうですわ。それとも銀貨2枚では不服かしら?」
ドロシーというお嬢様風の女子が追い討ちをかけてきた。
「あの~ 掃除当番は学院の方針で全員がすることになってんだよ。しらないの?」
「そんなことは知ってるさ。
報酬を払って変わることは禁止されてないはずだぞ。先輩方もそうしてきたって言ってたぞ」
「へえ~、でも僕には関係ないよ。掃除がんばってね~」
ルイスはさっさと席を立ち教室の出口に向かったが、肩を後ろから掴まれ立ち止まった。
「待て、まだ話は終わっておらん」
様子を見ていた男子生徒達がルイスの加勢に入ろうとしたのをランが手で制した。
「まだ何かあるの?」
ルイスは特に怒った様子もなく振り返った。
「いくらなら掃除をする?」
「残念だね~金貨貰ってもできないよ。僕は用事があるから」
「なんと生意気な態度だ。もうお前には頼まんっ!」
ルイスはさっさと教室を後にし、残っていた生徒達もそれに続いた。
キャメルは忌々しそうに後姿を見つめ捨て台詞をはいた。
「このままで済むと思うなよ。王都に居られなくしてやるからな」
キャメルと同じように苦虫を噛み潰したような顔をしてドロシーも吐き捨てた。
「わたくし達に恥をかかすなんて、許せませんわ」
「今度、貴族の恐ろしさを味あわせてやろうぜ」
「まったくですわ。学院を一歩でれば学院のルールなぞ関係ないですものね」
「まったくだ。なんでこのクラスだけ貴族が少ないんだ。
他のクラスは半々だというのに!
他のクラスの奴らと共同で奴らを学院から追い出してやる」
結局2班のメンバーは掃除もせずに帰ってしまった。