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白銀の流星  作者: 世捨人
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44話

「あ~こんな所に入れらちまってどうなるんだろうな」


「俺達を捕まえた奴らって何者だ?」


「貴族の護衛だったら俺達、不敬罪で死罪かもな」


「金貨1枚の仕事で死罪なんて割りにあわねえや」


王城の牢屋の中でイシュアを誘拐しようとした男達は憔悴していた。




男達は牢番に少し大きな部屋に連れて行かれ、そこには胸に炎のエンブレムを付けた騎士が待っていた。


「そこに座れ」


男達は大人しく指示された椅子に腰掛けた。


「俺の顔を覚えているか?」


男達はじっと騎士の顔を見つめ徐々に顔が強張っていった。


「俺達を捕まえた……炎王近衛騎士団……え~~~~」


「状況を把握したようだな」


「ということは俺達は死罪……」


「お前達が絡んだ相手はとても高貴な家の方々だ」


「じゃあ、もしあの小僧を俺達が叩きのめしてたら大変なことになってたんだ」


「あはははは、お前たちがあの少年を叩きのめす?こりゃ大笑いだ」


「何がそんなに可笑しいんだ。俺達は武闘派で有名なんだぞ」


「くくくくく、あの少年は騎士団対抗戦個人戦の優勝者だぞ?俺達騎士団でも勝てるかどうかわからん」


「ええ!?決勝で『炎の貴公子』を破った『白銀の流星』?」


「凄い二つ名だな」


「旦那知らないんですかい?庶民の間では有名ですぜ」


「他にもあるのか?」


「他には『褐色の旋風』『火炎の鬼姫』『風の戦乙女』『癒しの女神』」


「最後のは誰かわからんな」


「選手じゃなくって傍に控えてた治癒師の美少女ですよ」


「へぇ~色んな名前をつけるもんだ。その美少女達が絡んだ相手にいたことにも気付かなかったのか?」


「ええ~~~~惜しいことをした。せめて握手でもしてもらえばよかった」


「それは惜しいことをしたな。最後の思い出になっただろうに」


その言葉に現状を思い出し男達はがっくりと項垂れた。


「まあ人間いつかは死ぬんだから、それが早いか遅いかの違いだけだ」


「……」


「そんなお前達に朗報だ。実は先方より申し出があってな、不敬罪には問わないでやって欲しいとのことだ」


男達はがばっと顔を上げ、すがるような目付きで騎士を見た。


「ただし、今後悪事を働くと今回の刑も合わせて裁くことになるぞ」


「二度と悪事は働きません。今度から仕事は選びます!」


「だが誘拐未遂は免れん。鞭打ちは覚悟しろよ」


「はい。死罪に比べたらなんてことないです」


「それからアリシア商会に言っておけ、ルイスブレンドのオーナーは公爵家だ。

新しい建物『交流館』の発案者は王妃様だとな。

アリシア商会ごときが相手にされるわけは無いとな」


「公爵家……王妃様……敵うはずない」






鞭打ちの刑を受けた男達は痛む身体を引きずりながらアリシア商会へ立ち寄った。


「お前らの依頼のせいで酷い目にあったぜ」


「ふん、誘拐まがいのことをしろ等とは言ってなかったからな」


「そう言うと思ってたよ。さっさと依頼料払ってくれ」


「失敗したくせに金を要求するのか?」


「失敗だと?ちゃぁ~んとルイスブレンドのオーナーと交流館って建物の発案者の情報は入手してきたぜ」


「たしか金貨1枚だったな」


「馬鹿かお前、こんな目にあってそれで済むわきゃねえだろ」


「いくらだ」


「金貨10枚」


「まあいいだろう。確かな情報なんだろうな」


「ああ、近衛の騎士から聞きだしたからな」


「さっさと教えろ」


「金が先だ」


アリシア商会のレイモンドは渋々財布から金貨をとりだし男達に放り投げた。


「毎度、ルイスブレンドのオーナーは公爵家だとよ」


「公爵家?どこの公爵家だ」


「それは騎士も言わなかった」


「まあ良い、4家しかないから直ぐにわかるだろう」


「交流館の発案者は王妃様だとよ」


「なに!?」


「どっちにしてもアリシア商会で手に負える相手じゃねえってことさ、そんじゃあな、あばよ」


レイモンドは男達が出て行った扉を睨みつけ怒りに身体を震わせていた。


「王妃……公爵……おのれ、今に俺の力で捻じ伏せてやる」






同じ頃、学院では全学年の試験成績が職員室前に張り出されていた。


「おお~凄い人だかりだなぁ」


「新入生にとっては初めてだからな」


ハンスとビクターは少し離れた場所から新入生の成績を眺めていた。


「やっぱり主席はルイスだな」


「当たり前だ。僕の弟だぞ」


「それにしても得点合計が満点より上ってなんなんだ?」


「どうせ出題ミスを指摘したり授業より詳しい解答を書いたりしたんじゃないか?」


「ルイスらしいな」


「リンダちゃんも学科は満点じゃないか」


「当たり前だ、俺の妹だぞ。まあ体術や武術の実技は仕方ないがな」


「他にもマリアさんやランちゃん、フランちゃんも満点だぞ」


「さすがだな。伊達に家庭教師に扱かれてないってことか」


「でも次からは難しいだろうな」


「なんでだ?」


「次からは彼女達の最大の試練『調理の実技』があるからな」


「あはははは、そりゃ満点どころか赤点かもしれんな。この前もリンダの奴、城の厨房から追い出されてたからな」


     ドカッ


ハンスはいきなり後ろから蹴りをくらった。


「ハンスさん、酷い言い様ね」


「お兄様、酷いですわ。そんな話をハンスさんにするなんて」


「あはははは、ランちゃん。でも事実だろ?」


「試験までには調理できるようになるわよ」


「消し炭料理か?」


「ひどっ!ちゃんとした料理を作ってみせるわ」


「僕達に試食はさせないでくれよ」


「大丈夫よ。ルイスを実験だ……いや試食させるから」


「ランちゃん、今実験台って言いそうにならなかった?」


「なんのことかしら?」



ルイスは少し離れた場所で胃腸薬の調合を考えていた。

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