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白銀の流星  作者: 世捨人
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36話

騎士団対抗戦の最後の試合、個人戦決勝の時間がやってきた。


試合場にあがったルイスとハンスはお互い何も言わず、淡々と身体をほぐし構えをとった。


異様な雰囲気に会場も静まり審判の声が響いた。


「はじめっ」


ハンスは始めから身体強化を行い全力でルイスに突っ込んだが、ルイスも同時に突っ込みまるで鏡に映したような攻防が繰り広げられた。


会場で見ていたラン達も呆気にとられていた。


「なんで……ルイスが火の技?」


「ビクターさんとの試合より激しいですわ」





二人の攻防は益々加速し激しさを増していった。


接近戦にも関わらず、お互いの剣は身体に掠ることもなく、身体を通り抜けているようにしか見えない。


剣同士がぶつかり合うこともなく、会場にはただ剣の風切り音だけが響いていた。


    ガキィィィィン


ルイスの攻撃を受け止めようとしたハンスの剣が弾かれ、大きく体勢を崩したハンスの首にルイスの剣が当てられた。


「ハァハァ……やっぱり勝てなかったな」


ルイスは無言で審判に振り返り判定を促した。


「そ・それまで」


ルイスは剣をおろし、その場にへたりこんだ。


「おわったぁ~」


ハンスはヨロヨロとルイスに近づいて抱き起こしてやった。


会場からは大歓声が沸き起こり、控え席からは全員が試合場に駆け上がって二人を取り囲みランはルイスに抱きついた。


「ランちゃん、やったよ~」


「さすがルイスね」


フランソワは羨ましそうにランとルイスを見て、ハンスの横に寄り添った。


選手全員で観客席に手を振り頭を下げた。





貴賓席で観戦していたハンスとルイスの父であるマックスは立ち上がり、ガッツポーズを決めていた。


「よしっ、わがエルザリア家は安泰だな」


「マックス、ルイスはうちが貰うぞ」


ランの父ヴェルヘルムの言葉に振り返りニヤリと笑った。


「お前が勝手に決めてはいかんだろ、ランの気持ちも考えてやれ」


「馬鹿かお前は、あの様子を見てみろ」


ヴェルヘルムの指差した先には、ルイスに抱きついてるランがいた。


「知らないのはお前だけだ」


マックスはキョロキョロの周りを見回すと、国王以下全員が頷いていた。


「そ・そうだったのか……それにしても才能とは恐ろしいものだな。

大した練習もせずにハンスに勝っちまうんだからな」


   バチィィィィン


マックスの前にルイスの母カレンが憤怒の形相で立っていた。


「な・何をする」


殴られた頬を押さえながらマックスはカレンに抗議した。


「大した練習もしてないですって?あなたの目は節穴ですか」


「どういうことだ」


「ルイスは5歳の時にわたくしと一緒に領地に行ったことは覚えておいでですね」


「それはもちろん覚えているとも」


「あの子は薬草を採る為に毎日魔狼の森に行っていたこともご存知ですね」


「ああ」


「まだ武術もできない子供が魔狼の森に入ることがどんなに危険なことか分かってますの?」


「しかし、森の老人がついていてくれたのではないのか?」


「ご老人がお住まいになられていたのは森の奥ですわ。

そこまでは一人で往復していたんですのよ。

毎日雨の日も風の日も一日もかかさずね。

血まみれで帰ってきたことも1度や2度ではありませんわ。

それでもあの子はニコニコ笑ってお茶を淹れてくれていたんですのよ」


「お前は止めなかったのか?」


「もちろん止めましたわ。

それでもあの子は城を抜け出して続けてくれました。

5年間命懸けで戦い抜いたんですのよ。

今でも夜明け前から朝食まで毎日練習をかかしません。

そんな子供をつかまえて大した練習もしてないとは何事ですか!」


「す・すまん」


「一度あの子の身体をご覧になってみてください。

身体中に獣の爪や噛まれた痕が残ってますわ」


「マックス、今度二人が帰ってきたら、ゆっくり労ってやれ」


「ああ、そうするよ」





国王陛下から直接言葉を賜り表彰式が終了し、選手控え室で帰り仕度をしていた。


個人戦の4名はぐったりと椅子に座り込み動くことができなかった。


「はぁ~つかれたぁ~~~」


「お前は昨日から10試合だもんな」


「ハンス、やっぱりルイスに勝てなかったな」


「ああ、火の技で負けるとは思わんかったがな」


「ルイス、なんで火の技で戦ったのよ」


ルイスの前でランが腕組みをしながら声をかけてきた。


「なんでって言われても……同じ技でやるのも久しぶりだなぁ~って」


「あんな凄いの見せられちゃ自信なくなっちゃうじゃない」


「あははは、ごめぇ~ん」


ハンスはルイスに気になっていたことを聞いた。


「なあルイス、俺の敗因はなんだと思う?」


「身体強化だよ」


「それがいけないのか?」


「兄さんは早い段階で身体強化しただろ?

そうすると僕は兄さんの限界を見極めやすくなったんだ。

兄さんの限界に僕がそのままで対応できると分かっちゃうと心に余裕が生まれるでしょ。

そうすれば冷静に判断できるから余計に技が見切りやすくなるんだ」


「そうか身体強化に頼りすぎてたのかも知れないな」


「身体強化はここ一番って時までとっておいて、地力を上げるほうが良いと思うよ」


「なんで今まで黙ってたんだ?」


「そんなこと教えたら僕が負けちゃうじゃない」


「あははは、まだまだ余裕があるくせによく言うよ」


「とりあえずお腹へったよ~」


「今日は先生の奢りで何か喰って帰ろうぜ」


「お・俺がだすのか?」


「当たり前じゃん。俺達は学生だぜ」





町のレストランで選手達はタラフク食べた後、学院に戻った。

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